一人親方の時代

 つーても労働基準法がどうしたこうしたという話ではなく、単なる"第14回CGアニメコンテスト"のレポートでしかないわけだが。

 さて今年もグランプリ作品はなし。かまたゆたか氏本人が、「今年の選考は失敗だった」と述べているが、これはつまり先品の完成度が上がりすぎたために、もはや勝敗を分けるものが審査員の好みでしかなくなってしまい、しかもそこから発生する差も誤差の範囲内になってしまった、って感じなんだろうね。実際このコンテストが始まった当時の作品集とかを眺めてみると、わずか14年でアマチュアCGムービーのクオリティがここまで上がるものかと驚かされる。X68000+DoGA CGAシステムで始まったアマチュアCGの流れが、"Project Wivern"におけるLightWaveショックで一気にツールのアップグレードが進み、さらに"DoGA CGAコンテスト"が"CGアニメコンテスト"と改題され、同時に学生さんが学校の機材を使って作品を作っても良い、というルール改正がされたことで、高機能ツールを使ったハイクオリティCG作品が比較的低コストで作れるようになったこと、「彼女と彼女の猫」の完成度の高さが、何も3DCGツールに習熟しなくても優れたCGムービーが作れる、ということを証明した結果、理系→情報系→美大・芸大系へとこのコンテストの主役たちの層の様変わりを生んできた、てな流れかな。

 ということで今年のコンテストの主役は、美大、芸大の学生さんたちの作品。ただ、このコンテストの中盤で見られたような、芸大系イコールビデオドラッグ系、みたいな短絡はさすがになりを潜めてて、それなりに作品としてちゃんと鑑賞に堪えるものばかりが選に残ったというのは大変にいい傾向なんだろうと思う。アート系のコンテストは他にもあるんだし、DoGA系ってのはさんざんかまた氏も言ってるとおり「映画」を作って欲しいコンテストな訳で、そういう、コンテストが本来目指している線に沿った作品が増えてきているのはいいことなんだろう。その上で、しかし。

 「今年の選考は失敗」というかまた氏のコメントはなかなか意味深であると思う。それは、作品の質が上がりすぎて今の選考委員ではまともに賞を決められない、ともとれる(審査員、一回目からほとんど変わってないよな)し、これだけ作品の質が上がってきているのに、DoGAサイドの立ち位置がどこなのか、もう一つ明確にならない、というかまた氏の悩みのようにも取れたがどうなんだろう。

 DoGAがCGアニメで何をしたいかで、話は変わってくるのだと思うのだね。たとえば今年、かまた氏は新海誠という、オベリスクの巨神兵並みに強力なカードを一枚手に入れた訳で、彼としてはここから、ごくごく少数のマンパワーで、本当に作りたいものを作って発表する場が出来、しかもそういう場所で作品を発表し、評価を得ることがそのまま、その作家にとって充分な収入を得るもとになるような世界、映像インディーズがビジネスモデルとして成り立つような世界を目標においているのだと思うのだ。だとしたらCGアニメコンテストがやるべき事はただ一つ、有望なインディーズ作家の発掘しかないと思うのだけど、今のコンテストはそこまで割り切った選考基準が徹底していないようにも思える。一人でプロダクションシステムに比肩できる作品を作りうる才能(一人親方、てのはその辺に引っかけてるって事で、はい)をいくつ見つけられるか、ってことだな。

 これ、結構微妙な問題で、このコンテストってのは昔なつかし伊丹グリーンの特撮映画大会みたいなノリも片方であって、その楽しさを求めて会場に足を運ぶ層ってのも確かに存在するわけだ。いわゆるダークサイドで遊ぶ楽しさだね。この楽しさを削ることになっても、インディーズの才能発掘に力を入れる方向にシフトしていくのか、今まで通りのCGアニメのお祭りとしてのコンテストの位置づけのまま、第二の新海誠を待ち続けるのか、そこらへん、かまたさんとDoGAはどう考えているのだろう。CGアニメコンテストも次で満15周年です。

 【おまけ・コンテスト会場でゲットしたもの】

2002/04/29

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