酒の夜語り

異形コレクションⅩⅩⅣ

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井上雅彦 監修
カバーアート 山本ゆり子
カバーデザイン 奥沢潔(パークデザイン)
光文社文庫
ISBN4-334-73424-3 \857(税別)

読むなら呑め、呑むなら読め(無茶)

 「異形コレクション」24冊目のテーマは「酒」。まるで私のために編まれたような本…かどうか、さて。収録されてるのは以下の23作品。今回から気に入ったヤツに○つけてみる。

 うーん、こんな感じかな。基本的にカクテルとかワインとか、ああいうおしゃれっぽいお酒は苦手なんで、読む方もやっぱりそういう小じゃれてて怖い系みたいなのはも一つかな。森奈津子氏のはカクテルなんだけど、そのカクテルのチョイスとそこにプラスされたアイデアがよいですな。あと気に入ったヤツは、焼酎だの密造酒だのばっかりだなあ。いや、飲む方じゃなくお話の方なんだけど。そういえばバーボンネタってのがないな。ホラーにしにくいんだろうか、バーボンは。

 私が酒飲みなせいか、酒にまつわるお話はそれなりに楽しめるんで、○つけてないヤツでもそんなにつまらないってわけじゃないんで、今回はお買い得っすね。純粋にホラーを楽しみつつ、途中でらもさんの実体験に基づいた依存症の恐ろしげな話、続く飯野文彦氏の話もやはりアルコール依存にまつわる話で、この辺でお話として酒に浸るのと、ほんとに酒に浸ってしまうことの破壊的な怖さみたいなモンがちらっと伝わってくるような構成になってるのは、編者、井上氏からの「ほどほどにしとけよ」ってメッセージだったりするんだろうか。らもさんの話にも出てきたし、他のお話(どれだったかちょっと忘れた)でも同じ描写があったんだけど、アルコール依存症が末期的なとこまで行くと、自分の脳みそを地面にぶちまける幻覚を見て、それを必死で拾い集めるような奇行にでてしまうんだそうな。うん、オレはまだそこまで行ってないから大丈夫だ(w。

 最高だったのは草上さんの「秘伝」。ホラー、ちうかいつもの草上さんらしいSFテイストのユーモア編なんだけど、いい。倉阪鬼一郎氏のしみじみホラーと加門七海氏の開化不思議譚もなかなか。テーマがテーマなんで、似たような展開(超絶的にうまい酒だ!どうやって作るんだ?そりゃもうアレを足すんですよ、みたいなね)が少々並んでしまう、って恨みはなきにしもあらずだけど総じて楽しめた。酒飲みだから点数甘いかな? そんなこともないと思うけど。

 最後にお気に入りの一節。吉川良太郎氏の「苦艾の繭」から。

 酒と思想は人間を役立たずの酔っぱらいに変える。そんなだからファウストもニーチェも女にふられるのだ。

 わはは、なんとすばらしい。

02/12/20

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