日垣隆 著
カバー 北村広
文春文庫
ISBN4-16-765501-2 \676(税別)
'90年代のジャーナリズムを、"情報系"という言葉でくくり、さまざまなジャンルのルポルタージュを、さまざまなスタイルで組み上げたノンフィクション。テーマは湾岸戦争におけるGPSの役割から、オウム問題、過疎地域での医療、南米移民問題など多岐にわたります。
なかなかにこの、日垣さんって方、ものスゴい半生を送ってきたらしく、自身の手になる解説など読んでみると、「うわ、すげえ」とか思っちゃうわけですが、それが何か関係あるのかどうかわからないですけれども、妙に軽いノリで語られる、しかしその陰に潜む切れ味鋭い批評精神みたいなモノも併せ持った、さまざまな物事へのアプローチがなかなかいい。(その姿勢に)100%支持できない部分もあるにはあるんだけれども、でもこの人はなんだかおもしろいな。
'90年代前半のトピックがメインなので、今となっては情報の鮮度的に不利な部分はあるんだけれど、うん、それなりにおもしろかった。気象予報にまつわる「長期予報は当たらない」のなかで、退官した気象庁の元職員、根本順吉氏のこんなセリフ、やれIT革命だなんだと言ってる今の日本に、「ちょっと待った」ってな、示唆に富んだメッセージが込められていると思う。
気象庁の若い人達は、体験がないばかりでなく、失敗もなく間違えないことばっかりやっている。十万年に一回の超異常気象に遭遇しても、コンピューターを使った理論的計算では、その異常さを認識できないのです。
人間の側に、ものを使うことに対しての意識が低ければ、どんなに優れた装備があってもダメだって事なのね。うむ。
01/4/7