ゴールド

黄金

表紙

アイザック・アシモフ 著/嶋田洋一・他 訳
カバーイラスト 野中昇
カバーデザイン ハヤカワ・デザイン
ハヤカワ文庫SF
ISBN4-15-011343-2 \920(税別)

 1992年にこの世を去ったSFの巨匠、アイザック・アシモフの最後の作品集。収められているのは短編、ショートショート、アンソロジーの序文、いくつかの雑誌に発表したエッセイなどの大量の小品。長編もいいけど、ぴりっとアイデアの効いた短編こそアシモフの真骨頂だよなあなどと思ってたこともあって、こういうのはなんだかうれしいな。特に軽妙洒脱な科学、SF小説に関するエッセイがとてもいい。できれば宿命のライバル(^^;)、クラークとの愉快な中傷合戦も収録してほしかったかな。

 科学エッセイ、ミステリもこなす多才な人だけに、それぞれの読み物のバリエーションも豊かで、あらためて偉大な才人(などと簡単にレッテルを貼られるのはアシモフ博士の本意ではないでしょうけれど)を失ってしまったなあ、などと思いつつ、ショートショートのいくつかが、直前に読んだ田中さんの作品もかくやという、くっだらねえダジャレ作品だったりするあたりがなんともはや(^^;)

 おおざっぱに「最後の物語」「科学エッセイ」「SF小説作法」と3つのパートに分けられた本書の中では、やはり最後の「SF小説作法」がなかなか良いなぁと感じました。「皮肉」と題された一文にこんなフレーズが。

 風刺家の誇張は笑いを誘うが、皮肉屋の反転は憤りを誘う。風刺家には善人が多いが、皮肉屋は辛辣で残忍だ。風刺はどちらかといえば穏やかな手法で、目的もわかりやすい。皮肉屋は難しいテクニックで、しばしば目的が見失われてしまう。皮肉屋は両刃の剣を握っているようなもので、自身も深く傷ついてしまうことがある。

 ………思い当たるフシのある人も多いのではないでしょうか(^^;)。でもでもアシモフ博士、

 「サイ・ファイ」の意味を定義するなら、「無知な人々がときにSFと混同する屑作品」といったところになるだろう。だから、《宇宙大作戦(スタートレック)》はSFで、《ゴジラ対モスラ》はサイ・ファイということになる。

 は、仮にも特撮ファンとしてはちょっと………。いや、これが平成の「ゴジラVSモスラ」の話なら、文句はないのですけれども(^^;)。滑っちゃいますが、一応「モスゴジ」には物質文明に流され、人間不信に陥った現代人への警告が含まれていたと思うんですけどねえ。だめですか?

01/2/20

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