20世紀SF(2)

1950年代 初めの終わり

表紙

フィリップ・K・ディック,レイ・ブラッドベリ 他著/中村融,山岸真 編
カバー装画 ヒロ杉山
カバーデザイン 祖父江慎
フォーマット 栗津潔
河出文庫
ISBN4-309-46203-0 \950(税別)

 全六冊が予定される20世紀のSFを10年ごとに分類して編纂されるアンソロジーの第二弾。第二次大戦も終結、それなりに復興のメドも付きはじめた1950年代、一見華やかに見えるこの時代も、その裏にはマッカーシズムの嵐、朝鮮戦争が引き起こしたさらに巨大な戦争への不安と米ソ冷戦の緊張がその影には淀んでいる………ッてな訳でありまして。

 解説で中村融さんも述べておられる通り、この10年を代表するキイ・ワードは「侵略」と「破滅」。「破滅」には当然「核」も含まれる訳で、このアンソロジイには収録されていませんが、'50年代といえば「原子怪獣現わる」、「ゴジラ」の年でもあるんですよね。まともに原爆くらった日本では「破滅」サイドの恐怖が支配的だったのに対して、欧米では米ソ冷戦を背景に、「侵略」の方こそが"今そこにある危機"だってことなんでしょうか。"赤狩り"の根底にある物も、得体の知れない物から侵略を受けることへの恐怖感だもんね。

 そんな得体の知れない侵略者への恐怖と、その恐怖が産み出すパニックに対する警鐘的な作品が多く集められたのが今回のアンソロジィ。特に"赤狩り"の笑うに笑えない狂騒ぶりを皮肉る作品が多いのが特徴的かな。

 アンダースン、スタージョン、ベスターにディック、ブラッドベリ、そして「人類補完機構」のコードウェイナー・スミスと今回も超豪華メンバーの作品が楽しめる短編集。この時期のSFにはミステリの味もありますですね。今回もよろしおした。

00/12/11

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