一角獣をさがせ!

表紙

マイク・レズニック 著/佐藤ひろみ 訳
カバー 横山えいじ
ハヤカワFT文庫
ISBN4-15-020145-5 \860(税別)

 妻は同僚と駆け落ちし、自分は家賃を滞納して家を追い出されたある年の大晦日。冴えない私立探偵、ジョン・ジャスティン・マロリーは緑色の妖精にであった。ミュルゲンシュトルムと名乗るその妖精は、"自分の"マンハッタンで逃げられたユニコーンの捜索をマロリーに依頼する。飲み過ぎから来る幻想だとタカをくくっていたマロリーだったが、言われるままについてきたマンハッタンは、確かに彼が知っているマンハッタンとは微妙に様子が違っていた………

 "アイヴォリー"、"キリンヤガ"と上質なSFを読ませてくれるレズニックの、こちらはファンタシイ作品。1990年?むう、完全に見落としてた。今回ハヤカワ文庫30周年記念、"もう一度読みたい本"って企画のおかげでめでたく本屋さんに並ぶことになりました。万歳。

 まあ"アイヴォリー"にしろ"キリンヤガ"にしろ、一応SFのジャンルに入っちゃいますが、ファンタシイとして読んでもそう読める味のある本だったわけですが、この二つの作品がある意味"重い"部分を持った作品だったのに対し、こっちはあくまで軽妙洒脱なコミカル・ファンタシィ。強大な力を秘めたルビーを額にいただくユニコーン、ラークスパーをめぐって、妖精界のおかしな住人たちと、自分の世界では全くうだつの上がらない人間の探偵が繰り広げるドタバタ劇。

 とにかく出てくる妖精界の住人たちがどいつもこいつも変なヤツばっかりで、そのキャラクタのおかしさを楽しんでいる間にいつしか事態は急変し、それでもって大団円へとなだれ込んでいく、ってわけで。なんつーか、オトナ向きの"不思議の国のアリス"みたいなお話っすね。大晦日、こういう本を読みながら年を越すってのもなかなかオツなもんかも知れませぬ。できれば横山えいじさんには、カバーだけじゃなく挿絵も書いて欲しかったなあ(^^;)。

00/10/20

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