ピニェルの振り子

銀河博物誌 1

表紙

野尻抱介 著
カバーイラスト 草薙琢仁
カバーデザイン 溝端ひろみ
ソノラマ文庫
ISBN4-257-76887-8 \495(税別)

 その大部分が海洋の惑星ピニェル。親方と二人、希少種の蝶、ベラム蝶の捕獲で生計を立てる少年スタンは、異星の博物商の一行と出会う。そのうちの一人、画工のモニカに一目惚れしたスタンは、彼女がむりやり画工として働かされてると思い込み、なんとか彼女を救い出そうと行動を開始する。だが、突然ピニェルにやってきた博物商一行の行動の裏には、彼らの雇い主で希代の蒐集道楽貴族、レグラス卿が博物商ラスコーに告げた一言があった。「ピニェルは無くなってしまうのだから、そこの標本は高値で売れるぞ」と………。

 野尻抱介さんの作品を読むのははじめてのような気がします。もしかしたら「異形博覧会」あたりで短編は読んでいるかもしれませんけど。で、この作品、極めて良質な、ボーイ・ミーツ・ガールモノのジュブナイル。文明社会の美少女と自然児のはつ恋アドベンチャー、ってことだと、たとえば「未来少年コナン」なんてえ傑作があったりするワケですが、さすがにあと半年もしたら21世紀になろうかという平成の御代、優しく芯の強い美少女と素直で強靭な自然児の組み合わせって黄金パターンとは少々趣向を変え、この作品のカップルは綾波に振り回されるゴン(『ハンター×ハンター』の)ってえ趣でありまして(笑)、これもまあ今風ってことなんでしょうかね。悪くない趣向とは思いますが、今いちばんウケるヒロインってのは能面系(^^;)なんですかねえ。ちょっとこの手の美少女も食傷気味ではあるんですが(^^;)

 シリーズモノってことで、当然ヒキになる伏線も用意されております。この世界は、いくつかの惑星に人類が移住している世界なんですが、そのきっかけの裏に謎の存在があったり、宇宙旅行の原動力になるシステムなどに著者独自の味があったりして、この先それらの存在がなんのためにそんなことをしたのか、って部分にも説明がなされるんでしょう。そのへんも楽しみではあるんですが、やっぱこのシリーズ、基本はこれから綾波系無表情美少女と、世間知らずの純朴少年(しかも年下)の、ふしぎな生物たちとの出会いを軸に、どんな風に気持ちを通わせていくかが一番の興味ってことになるんでしょうね。予備知識ゼロで買った本ですがなかなか楽しめました。続きにも期待っす(^o^)

00/8/4

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