コロンブスの呪縛を解け

(NUMAファイル)

表紙

クライブ・カッスラー&ポール・ケンプレコス 著/中山善之 訳
カバー装画 岡本三紀夫
新潮文庫
ISBN4-10-217024-3 \667(税別)
ISBN4-10-217025-1 \629(税別)

 世界各国で頻発する、考古学発掘チームの殺害事件。世界史の定説を覆すかもしれない発掘現場が次々と襲撃され、貴重な遺跡が跡形もなく破壊される不可思議な事件の裏にいったいどんな秘密が隠されているというのか。偶然難を逃れた考古学者、ニーナと出会って事件の渦中に飛び込むことになった、NUMAの特別出動班のメンバー、カート・オースチンとホセ・ザバーラはただちに調査を開始する。やがて彼らの前に、300年間その存在を巧妙に隠して歴史的事実の修正を拒もうとする秘密結社の姿が浮き彫りになってくる………。

 カッスラーの人気シリーズ、ダーク・ピットものでもおなじみ、ピットらが所属する国立海中海洋機関(NUMA)のもう一人のヒーロー、カート・オースチンが主役の新シリーズが、この"NUMAファイル"なんだそうでありまして、ピットものを読んでる人ならおなじみの、カミナリ親父、サンデッカー提督やコンピュータの天才、イェーガー、巨体の美食家にして希代の史料蒐集家、パールマターといった面々が続々出演。当然ピットとジョルディーノもちらっと顔を出します。主人公、カートにはピットに対するアル・ジョルディーノよろしくホセ・ザバーラという相棒も配置され、言ってしまえばこれ、主人公がダーク・ピットでも全然おかしくない作品だったりするんだなぁ。

 ピットがクラシックカーを集めることに情熱を燃やすように、オースチンは決闘用のピストルの収集が趣味、上院議員の息子のピットに対して海運界の大物の息子のオースチン。当然のごとくタフで女にはモテモテ、ってあなた、ここまでピットのそっくりさんを用意して新シリーズをはじめる意味がいったいどこにあると言うのか(^^;)。ピットものと違うのは、作品中にカッスラー本人が出演してないことだけなんじゃないのか(笑)?

 ポール・ケンプレコスさんという共著者の方は、どうもミステリ畑の人らしいんですが、これによってミステリ性が高まったかというとそうでもないような気もするし、なんかなーこれは。ピットものとおんなじノリなんで、当然そこそこ楽しめはする(苦笑)んですけどねぇ。訳者の中山善之さんご自身、"解説"で、

 クライブ・カッスラーとポール・ケンプレコスの組み合わせは、このNUMAファイルの第一作を見る限り大変うまくいったようで、アメリカの批評家たちも、新しい要素がいくつか付け加えられた、とおおむね好感をもって迎えているようである。私の感じではカッスラーが得意とする雄大な規模の冒険小説に、ミステリーの要素が色濃く織りこまれたことで、新味を加えたミステリアスな冒険小説が誕生しており、この調子が持続されると面白いシリーズになりそうで期待がもてる。

 と、なにやら奥歯にものの挟まったような(笑)褒め方をなさっておられますですな。つまり本作だけで褒めるのはちょっと………って遠まわしに言ってるような気もするんですが、深読みしすぎっすか(^^;)。

00/6/2

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