「飛べヒコーキ」

モラーヌ・ソルニエ機からミグ25まで

表紙

佐貫亦男 著
カバー/イラスト おおば比呂志
光人社NF文庫
ISBN4-7698-2265-0 \648(税別)

 私はヒコーキのことを調べているときが一番幸福である。そして、古いヒコーキになればなるほど、古いブドー酒のようにかぐわしい匂いがこもっていることを知る。ただし、いつまでも古いブドー酒の味に酔いしれていてはなるまい。ヒコーキはそれからたえず進歩している。今のヒコーキを知っているからこそ、いわゆる古典機が懐かしまれる。それをただ昔はよかったという回顧だけでは、発展がない。

 独特の文体と視点でユニークな文章を書いてこられた、佐貫亦男さんの、これは1977年の本の文庫化。今から約20年前の本ということで、まだイーグルもトムキャットも本格的な配備までは至らず、ミグ25は例の亡命騒ぎでようやく神秘のベールがはがされた頃の本ということになりますが、佐貫さんの筆は常にデザインから入るため、いつ読んでもあまり古さを感じさせないですね。

 以前に紹介した「発想の航空史」と感想的にはダブるので、お好きな人にはたまらない本です、というにとどめておきますが、この本も前出の本でコメントしたのと同じく、図版の少ない恨みがあります。佐貫さんの文章がまずデザインから入るのに、そのデザインを直接確認しにくい活字だけの本、というのはやはり少々ツラい。本書ではおおば比呂志さんの洒脱なイラストが楽しめるのですが、文章とイラストが全く連動していないのではせっかくのおおばさんのイラストも宝の持ち腐れのような気がしますねえ。

00/3/7

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