「宇宙生物ゾーン」

異形コレクション(15)

表紙

井上雅彦 監修
カバーイラスト 寺田克也
廣済堂文庫
ISBN4-331-60814-X \800(税別)

 先日A・E・ヴォークトが亡くなったときに、Sぱら本室のほうに常連のTUXさんから、ヴォークトの代表作「宇宙船ビーグル号の冒険」のジュブナイル版が少年時代のSFの扉の一つだった、という書き込みがありました。そのジュブナイル版のタイトルこそ「宇宙生物ゾーン」。監修の井上さんも同じ年代ですね。このタイトルはきっと井上さんなりのヴォークトへの追悼なのだろうと思います。で、題材が宇宙生物ということで、久々にホラー色よりもSF色の強いものに仕上りました。ワタクシ的にはシリーズ屈指の完成度を誇るアンソロジーになったのではないかと思います。

 まあこれは僕がホラーよりはSFの方が好き、ってところがあるからかもしれないですし、年齢的にかなり近い人がお話を書いてるところもあり、共有している記憶の中の鮮やかな部分が揺り返された、という幸運もあってのことだと思うんですけれども、なかなか楽しく読めました。やっぱSFはいいね(^o^)。

 山田正紀さんのスペキュレイティヴな作品、おなじみヨコジュンの押川春浪もの、かんべむさしさんのトリッキーな作品、第一期「ウルトラ」世代にはこたえられない五代ゆうさんの作品、久々の堀晃さんのハードSFショートショート(本アンソロジー中屈指の作品ではないかと)、意外にも初登場のみっきーさんのコミックと、今回は読み応えのある作品がたくさん集まりました。お買い得です(^o^)。

 全体に漂う懐かしげな雰囲気もマル。最近こういう、ちょっと昔の雰囲気を漂わせる作品にはどうも点数が甘い傾向がありますですね。なんか個人の嗜好がちょっと懐かしSFに向いちゃってるかなあ、と思えて、それはそれで気をつけないといけないな、などと感じたりもするんですが(^^;)。

00/2/25

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