「メデューサの嵐」

表紙

ジョン・J・ナンス 著/飯島宏 訳
カバー装画 岡本三紀夫
新潮文庫
ISBN4-10-204712-3 \629(税別)
ISBN4-10-204713-1 \629(税別)

 倒産寸前の零細航空会社、スコットエアが受注した学術機材の空輸の仕事。これでどうやら倒産の危機は免れたと胸をなで下ろしたのもつかの間、積み込まれた荷物に手違いがあったことが判明。必死のフォローで何とか最悪の事態を回避できたと思った彼らにさらなる危機が。間違って積み込んだ荷物こそ、かつて国家的プロジェクトに携わっていながら、そのプロジェクトを閉鎖されてしまった老物理学者が巧妙に仕組んだ、国家と、そして妻に対する復讐のための戦慄すべき武器だったのだ。それ自体破壊的な兵器である、20メガトンの核爆弾に、さらに追加された"メデューサ"と呼ばれる装置。それは核兵器が爆発したときに発生させる電磁パルスをさらに増幅さセ、広大な地域にわたるシリコンチップを無力化させる物だった。もしこの"メデューサ・ウェーヴ"が牙をむけば、アメリカの東半分のあらゆるコンピュータは試用不可能になってしまう。恐るべき爆弾を抱えたスコットエアの老朽ジェット機。しかも彼らの前には史上最大規模のハリケーンが接近していた………。

 前作「着陸拒否」が抜群に面白かったナンスの新作は、またも航空パニック小説。前作同様、空飛ぶ密室のなかで発生したパニックと、それが引き起こすさらに広範囲のパニックを描いて迫力充分。今回は序盤、少々もたつき気味で心配だったんですけれども、お話が先に進んで行くにつれて面白さもパワーアップ。いやー、この人のお話はよいです(^o^)。

 核爆発による電磁パルスがコンピュータに与える影響は知られていますが、積極的にお話の中に取りいれてきたのはこれが初めてなんじゃないかな?その他にもインターネットを使って情報を集めてみたり、大統領に対する報告がeメールの形式になってたり、新しげな小物もいろいろ用意されているんですが、なんといってもナンス作品のキモはピンチに陥った主人公(のパイロット)の戦いぶりにあるわけで、その辺の面白さはこの作品でも健在。運輸業務の航空会社ってことで、今回は飛行機に乗りこむのは3人のクルーとひょんなことで同乗する羽目になる二人、という総勢5名でしかないんですが、この5人がなかなかよく描かれています。残念ながら主人公であるスコットの個性というか背景というかがかなり弱いという恨みがあるんですが、ワキが結構いい感じなんでまあいいか。全体にその他の登場人物たちが(いいヤツもそうでもないヤツも)いい感じ。いや、これはなかなか、お薦めですよ(^o^)

00/2/2

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