| ある晩秋の休日。東京へ帰るこいつを見送るため、新大阪へと車を走らせていたときのことだ。助手席のこいつは弱々しい声で俺に言った。困ってることがあるんやと。それは何かと問うとこいつは答えた。 「家にあれが残ってるんやけど、どうしたもんか困ってるんや。」
 嫌な話題にふれてしまった。こいつは昨晩うちで倒れて救急車で運ばれたせいで、弱気になってるのだろうか。しかし基本的にひとの悩みに親身になれない俺は、それっぽい単語を並べ話を適当に流そうとした。
 「ああ、あれね困るわな、一つだけやし。はめるわけにもいかんしなあ。家にあるのは重たいやろ。でも人にあげるわけにもいかんわな。」
 
 しばらくの沈黙のあと、どちらからともなく口を開いた。
 
 「いま映画やってるな。」
 「やってんなあ、第3部は来年やね。」
 
 再度の沈黙のあとこいつは言った。
 「やっぱ富士山は夏かな。」
 俺は答えた。
 「今はムリやろ。それまでに旅の仲間を集めとくわ。」
 
 俺は友の悩みに応えられたのだろうか。
 
 一つの指輪をご存知ですか?とても重たい指輪で、持ち主を苦しめます。しかも始末に困るそうです。
 え?フロド?
 何かと勘違いされてるようですね。それでは一つの指輪の物語を詳しくお話しいたしましょう。
 
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