*011

 君は黙って転がっていた
 泪を染める紅い夕日
 そして風は流れた

 でも優しい空気は
 紙風船の中をただ廻るだけ

 足元に寝転ぶ紙風船は
 影も夢も従えず
 僕はそれを拾って空に浮かべた
 紙風船は昇った あの空へ...
 美しい想い出のように...

 あれは静かにうつむいていた
 空に浮かぶ紙の風船
 そして空気は消えた

 でも流れる記憶は
 僕の心の中をただ廻るだけ

 目の前に広がる大きな空は
 雲も泪も従えず
 僕はそれを見つめて君を想った
 紙風船は昇った あの空へ...
 美しい想い出のように...

 あれは仄かに輝いていた
 紙風船から零れた泪
 そして想い出は終わった...




  *012

 貴方を想う
 貴方を求める
 貴方を感じる
 貴方を想う

 貴方を想う
 貴方を捜す
 貴方を包む
 貴方を想う

 貴方を想う
 貴方を愛する
 貴方を聴く
 貴方を想う




  *013

 家の掃除をしたら
 貴方からの手紙が出てきました
 半年以上前の貴方の文字は
 とても子供っぽく見えました
 貴方からの手紙には
 何が書いてあったのでしょう
 貴方からの手紙には
 何が込められていたのでしょう

 家の掃除をしたら
 貴方の温もりを見つけました
 半年以上前の貴方の声は
 今でもなお心に響いています
 貴方の瞳には
 何が映っていたのでしょう
 貴方の心には
 何が聴こえていたのでしょう

 貴方の手紙の中に
 貴方の温もりの中に
 貴方の瞳の奥に
 貴方の心の隅に
 僕はいたのでしょうか
 僕は見つけました
 貴方の響きに
 僕を想う気持ちが入っていたのを......




  *014

 白い光が貴方を包み
 空の彼方へ浮かべてしまった
 僕の周りの蒼い星が
 その後を追って飛んだ
 貴方は最期まで涙を見せなかった
 貴方は最期まで笑顔にならなかった
 動かない貴方の心が
 遂に空に盗られてしまった

 貴方は輝きながら
 黙って空を漂っていた
 星になろうとしているのですか
 僕の問いかけが虚しく消える
 蒼い星が体を揺すり
 貴方の手の上に破片を落とした

 手を伸ばしても
 心を覗いても
 貴方の所までは届かなかった
 夢を探しても
 心を望んでも
 貴方の心は静かだった

 星の破片が雨に濡れ
 僕の足元で光るのを止めた
 遠く空で光る貴方の姿が
 もう見えなくなってしまった......




  *015

 廊下の向こうに貴方はいた
 恥ずかしそうに俯いて
 友達だけがはしゃいでた
 窓に映る樹が紅く
 秋の訪れを感じる
 僕の顔までもが紅く
 貴方の訪れが...

 制服に包まれた貴方の姿は
 いつもと違う印象で
 その中で微笑む貴方の顔は
 いつもと違う印象で
 僕の顔は紅く赤く紅く赤く...

 廊下の向こうに貴方はいた
 恥ずかしそうに俯いて
 それでも嬉しそうにしていた
 窓の外の風は冷たく
 貴方の心は暖かく
 窓の外の空気はひんやりしてて
 貴方の手はふんわりしてて
 そして樹は紅く赤く紅く赤く
 そして僕は赤く紅く赤く紅く

 寒さで震えている貴方の肩に
 そっと僕の上着を乗せて
 逢いに来たよ...って呟いた




  *016

 闇を震わす蒼い光
 デジタルの数字が暗闇に浮かぶ
 この電話番号...
 貴方からの電話が真夜中を起こした
 戸惑う手を伸ばして
 貴方の声を探す
 アンテナ近くの小さな穴から
 貴方の薫りが漂った

 僕を求める貴方の声は
 ずっと忘れていた記憶を映し
 白い壁の静寂が
 貴方の温もりを際立たせた
 銀色に光る携帯電話は
 僕の手のひらに包まれ
 やがておとなしく眠りについた
 貴方の響きが何時までも
 電話機を揺らしていた

 空は暗く星も見えず
 窓の外は風の寝床となっていた
 貴方の住んでいる家は遥か彼方で
 そっと目の前の空気を吹いてみた
 この風...貴方の髪を撫でますように
 黙って潜んでいる黒の時間を
 見つからないように掴んで階段を降り
 そっとドアを開けて貴方を求めて駆け出した

 蒼い光が道路に散らばり
 そして僕の心も夜空に散らばった......

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