*006

 このギブスが...
 僕の心までもを締めつけている
 君の家は歩いては行けない所で
 自転車を飛ばして逢いに行ってた
 でも...それなのに
 このギブスが外れない限り
 ...君には逢えない

 硬い硬い腕じゃ君を抱きしめる事は出来ない
 何時までも直角な腕は
 君の涙を拭く事すら出来ない
 慣れない右手での電話は
 いつになくぎこちなくて
 利き腕がギブスの中でもどかしそうに動く
 それでも...
 ギブスは外れない

 この骨が
 僕等を比喩しているんだろうか
 このギブスが
 心を比喩しているんだろうか

 硬い硬い腕は
 君の元へ伸ばす事が出来ない
 本当は君の家まで行きたいのに
 曲がった腕はハンドルすらも拒否している
 君の事この硬い腕でも良いから
 思いっきり抱きしめてあげたいのに......




  *007

 今日は曇り空
 貴方の声も
 乾いた日差しも
 僕の元には届かない
 空は汚い白色で
 太陽の光すら感じなかった
 乾いた空気と
 貴方への想いが
 湿気と共に辺りに浮かんだ

 今日は曇り空
 きっと僕の心も
 晴れてはいないはずだ
 貴方の最後の電話から
 ため息しか聞こえなくなってしまった
 僕の口からも
 ため息しか出なくなってしまった
 今日は曇り空...
 太陽も出ず...雨も降らず......

 この天気が晴れだったら
 貴方を好きだと想えるのに...
 この天気が雨だったら
 貴方のことを諦められるのに...
 天気予報では
 曇りなんて一言も言っていなかったのに......




  *008

 僕の携帯の画面に
 緑の光で着信ありを知らせてた
 君の自宅の電話番号が
 何も言わずに佇んでいた
 震えてはいたけど...
 気付いてはいたんだ...
 でも今は喋りたくないよ
 君の声で涙が出そうだよ

 毎週同じ曜日の同じ時間には
 同じ人からの同じ長さの着信音が鳴る
 僕はそれを知っているのに
 その電話に触れる事さえ出来なかった
 昨日までは待ち遠しかったのに
 君の家の電話番号が...怖くなった
 淋しさがどうしてもつきまとって
 手を伸ばそうとしても...伸びないんだ

 今日もかかってくる日...
 本当は声が聴きたい
 本当は君に話したい事がたくさんある
 でも電話の電源は切のまま
 枕の下に押し込んだ
 きっと今ごろ電話番号押してるだろうな
 君の姿が目に浮かぶ
 いつまでも喋っていたいのに...
 本当は君の声が大好きなのに......




  *009

 夜空に星が浮かんでいました
 月は静かに笑っていました
 でも僕は笑っていませんでした
 貴方を想って泣いていました
 夜空に星が滲んでいました
 月は優しく包んでくれました
 でも貴方は哀しみを隠せてはいません
 離れた心はいつ出逢えるのでしょう

 夜空の星はいつまでも輝いています
 月はいつまでも微笑んでいます
 僕は...いつまでも泣いていました
 自ら貴方を避けていたのに...
 夜空の星はその光を消しません
 月はその美しさを保っています
 貴方は...その涙を拭いきれていません
 遠い僕のことを想っているのです

 もう逢えないのです
 もう見れないのです
 貴方の微笑みが哀しすぎるから
 貴方の優しさが辛すぎるから
 ずっとずっと離れていた心は
 重ならない星のように
 いつまでもいつまでも光っていました
 輝かしい光ではなく
 掠れた光を放っていました
 そして夜は終わらないのです
 本当は貴方を愛していたのに......




  *010

 やっと貴方に報告できるようになった
 好きな人ができましたと...
 貴方はちょっと怒って顔を紅くして
 必死に誰かを知りたがる
 でもきっと知ってるよね
 だって僕の顔には大きな文字で
 貴方への愛のコトバが書いてあるんだよ
 気付いてくれたよね

 やっと僕にも好きな人ができました
 今まで付き合っていた貴方に向かって
 僕は静かに告げた
 貴方の顔は一瞬曇り
 瞳の奥に光るモノが見えた
 でもそれは貴方なんだよ
 やっと自分の気持ちに気付いたんだよ
 いつも逢えない貴方を想うこの気持ちが
 好きだっていう事に気付いたんだよ
 それなのに...貴方は哀しい顔をする
 僕の愛する人は何度も言うようだけど
 貴方なのに......

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