あいしてる...

 はじめて逢った日...
 覚えているかい?
 あれは雨が止まなかった...
 そんな放課後のこと

 雨に溶けそうなその瞳は
 太陽の輝きを失いかけていた
 君はいつも晴れでいてほしかった
 だから無理に僕は「僕」を造り
 君の雲を吹き飛ばしたんだよ
 でもそれって...無意味だったのかな

 ...あいしてる ...あいしてる
 何度言っても君の涙は
 拭えないこと知ってるけど
 ...あいしてる ...あいしてる
 でももうこの雨の中
 君を待って佇むのはいやなんだよ

 だから晴れるまで...
 てるてる坊主の代わりに言ってていいかい?
 君の心の中の雲
 無くなってほしいんだ
 だから晴れるまで...

 ...あいしてる




  りかいふのう

 針のない時計が壁にかかっている
 水のない噴水が中央に置いてある
 脚のない机と椅子が
 対になって整然と並んでいる

 弦のないヴァイオリンを弾いている
 鍵盤のないピアノを叩いている
 マウスピースのないトランペットが
 明かりの下で光っている

 理解できない...この世界
 迷い込んだ...一週間の8日目に

 刃のない包丁が野菜を刻む
 底のないなべで湯を沸かす
 数字が記されていないキッチンタイマーで
 料理片手に手作りに挑戦

 画面のないTVの前で父が笑う
 文字のない新聞の前で母が唸る
 いるはずのない弟と
 兄弟喧嘩で説教される

 理解できない...この世界
 抜け出せない...一週間の8日目から




  がくぶちのねこ

 道の色何処までも白く
 足跡が一日のうちに凍りつく
 室は太陽で明るく彩り
 逃げない空気を暖かく包む

 犬の足跡が床に点を打ち
 木の上の雪が地面にずり落ちる
 こたつの猫は美術のモデルとなって
 蜜柑の脇に丸まり眠る

 壁に掲げてあるあの絵の中
 背景は白い雪の原
 丸い猫が身体を震わせ
 蜜柑は転がり地に落ちる

 道の色何時までも白く
 吐息が一瞬のうちに凍りつく
 室は太陽で明るく彩り
 転がる床に光を落とす

 壁に掲げてあるあの絵の中
 色はやはり白い絵の具
 丸い猫が一声鳴いて
 蜜柑は食われ皮となる




  とおく...そらのはて

 泡を浮かべて空を見れば
 高く光に反射して
 雲の手前で弾けて消えた
 遠く...空の果て
 白い光の中に
 誰が覗いているんだろうか

 泪を浮かべて空を見れば
 淡い光が滲み出て
 雲が映って零れて落ちた
 遠く...空の果て
 濡れた瞳の向こうに
 何が輝いていたんだろうか

 命を浮かべて空を見れば
 儚い光に包まれて
 雲が優しく染まって溶けた
 遠く...空の果て
 暗い心の底に
 何が潜んでいるんだろうか

 ...星が煌くあの空に
  夢を浮かべて月を見た
  優しい温もり広がって
  雲と混ざって光を止めた
  遠く...空の果て
  あの輝きを手に入れたくて
  そっと手を伸ばし空気を掴んだ




  うしろのしょうめん

 結局今も道の上だった
 この決められた道を
 一歩踏み出す勇気がなくて
 長い長い道の上に僕はいた

 それでいいのか...
 泥でよごれた靴の跡が
 白くまっすぐな道に
 規則正しくついている

 過去がいつまでも
 僕の中から消えてくれなかった
 希望がいつまでも
 僕の前に現れてくれなかった
 いけない事とは知っていても
 何度も振り返ってしまう自分が情けない
 いつまで過去に苦しむのか...
 後ろの正面は
 いつまで経っても黒いままだった

 結局僕は道から出られない
 この決められた道を
 踏み外して新たな道を造る...
 そんな勇気なんてないから...
 だからずっと長い長い道の上
 泥だらけの足跡が残ってしまう

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