まんげつ
ぽっかり浮かんだ夜の月
辺りはひんやり黒い影
優しく微笑むその顔は
愛する貴方と同じ夢
ぽっかり浮かんだ空の月
辺りは輝く星の声
広がり包んだその響き
愛する貴方と同じ音
ぽっかり浮かんだ丸い月
姿は温もる淡い雪
儚く消え行くその光
愛する貴方と同じ揺れ
ぽっかり浮かんだあの月の
心は煌く白い花
小さく囁くその瞳
愛する貴方と同じ色
ぽっかり浮かんだ満月は
貴方の姿を映し出し
仄かに光りを放つとき
貴方に気持ちが届くはず...
じかんどろぼう
流れる空に霧がかかり
漂う波にその身を委ねる
深い深い白の中
僕はそのまま盗まれた
暗いよ...この世界は
君の心も君の行く先も
みんなみんな...暗いよ
歩いても終わらない道に
もう疲れ果て
倒れそうだよ...暗さの向こう
何かがあるはずなのに...
盗まれた...光の差す方は
遥かな夢で
暗いよ...でも夢が見える
流れる空 漂う波
霧の中に沈む君を
僕はつかまえておくよ
もう二度と放さない...
この深い白で
離れたくないから......
でんわせん
大きな部屋の真ん中に
内線電話がひとつ転がっていた
長く伸びる電話線は
広い部屋の隅に淋しくつながっていた
貴方からの電話も
直接届けばいいのに...
長い長い電話線の向こうには
外の世界は存在しなかった
乱雑に撒かれた手紙の束と
広げたままの新聞紙...
窓のない部屋に吹く風が
黒い空間に音を鳴らした
貴方とつながっていたかった
ずっとずっとつながっていたかった
でもこの電話線の向こうには
いるはずの貴方が存在しなかった
木の床を薄く埃が包み込み
鳴らない電話を睨みつけ
この長い電話線を足で踏んだ...