Precious Burden
(アルバム, '98)
Epic Sony, ESCA 6943 (日本盤)
Columbia, COL489733 2(スウェーデン盤)


曲目Cover of Precious Burden
1. Leaving
2. Black Day
3. Precious Burden
4. So Long
5. Excuse Me
6. Got to Stop
7. Before the Day's Gone
8. Goodbye
9. Foolish
10. Curtain Fall
11. Who I Am
12. Life
13. Vacation

*12, 13 は日本盤のみのボーナストラック
(写真は日本盤。クリックするとスウェーデン盤になります。)

クレジット
(ソングライティング)
 Sophie Zelmani
(プロデュース)
 Lars Halapi

解説
'98の2月にリリースされた第2作。海外ではちょっと怖めなSophieの写真が使われたが、日本ではもっと見栄えのいい写真がジャケットに使われた。ブックレットの写真には、ロック系のアーティストの写真やビデオクリップを手掛けて有名なAnton Corbijnの撮影したものが使われている。なお輸入盤ではジュエルケースに直接アーティスト名とアルバムタイトルが印刷されている。

彼女の音楽的ルーツを感じさせ、アップビートな曲も多かったデビュー作と較べると随分と地味な作品である。前作にあったI'd Be BrokenやSo Goodのような、ほろ苦い、しかし心地よい感傷を誘うような曲はここにはない。歌詞は”死”や”別れ”をテーマにしたものが多く、悲しいトーンに満ちている。音数は少なく、装飾もあまりされてないように聞こえる。それだけに前作が好きだった人ほど、一聴しただけではこのアルバムはひどく暗く、陰気で聞くのが辛く思えるだろう。しかし、細部に耳を傾けるとアコースティック色の更に強くなったこの作品が丁寧に作り込まれていることが判る。

このアルバムの雰囲気はやはり1曲目のLeavingが象徴的に表している。音の響き方を大切にした、ゆったりとしたメロディ展開、ゆっくりと言葉を慈しむように歌うSophieの歌声、そしてそれを支える優しいコーラス、このアルバムを特徴付ける要素の多くをこの曲に聞くことができる。Leavingの他にもBlack DayやSo Long, Excuse Meなどで聞かれるコーラスは前作よりも目立ちにくいが、しかし的確で効果的に使われ、Sophieの歌声を優しく包み込むように響く。

そしてこのアルバムはなんといっても歌詞が魅力的だ。前作にも別れをテーマにした曲はあったが、ここで歌われる内容はもっと深く、内省的なものになっており、聞き手に共感と感動を与えてくれる。表現自体は前作でそうだったように簡潔なままだが、しかしその言葉の選び方が素晴らしい。Black Day, Precious Burdenはどちらも”死”にインスパイアされた曲だが、深い思慮と思いやりを感じさせる。Before the Day's GoneやGoodbyeは反復や韻を踏みながら、恋人へのメッセージをうまく表現している。問いかけるようにして進んでいくWho I Amもあくまで簡潔な表現を使っているが、その言葉の持つ意味は鋭い。このように歌詞の奥行きが増したことで、Sophieのソングライターとしての魅力は前作よりも大きく増している。

ムチの音も効果音として使われる、7分に及ぶ長尺のGot to Stop, Sophie自身が”アルバムの要約のような”と語るCurtain Fall、輸入盤では最後の曲に当たるWho I AmといったあたりもLeaving同様、ゆったりとしたテンポで間をとった音づくりがされており、アルバムのカラーをよく表現している。

前作のような勢いや派手さは感じさせないが、Black Dayの後半での感情の高まりを示すかのような展開や、アルバム中珍しくアップテンポになるExcuse Meの展開などはアルバムに緩急を与えており、少し一本調子ぎみな曲も聞かれた前作との違いを感じさせ、成長が見られる。様々な楽器をあやつるプロデューサーのLars Halapiが中心となった演奏とSophieの声がダイレクトに響いてくるミキシングもこのアルバムの雰囲気を優しく、暖かなものにすることに大きく貢献している。

日本盤にしか入っていない最後の2曲は付加的なものには留まらず、本編の曲とごく自然に繋がる。Lars Halapiによるギターだけをバックに歌われるLifeも印象的だが、Vacationでのそれまでの張り詰めた思いを一気に解放するかのような、リラックスした歌声が嬉しい。この曲が入っているかいないかで、このアルバムの後味は全く異なるものになるだろう。中川五郎氏による解説もよいし、Sophie自身による曲紹介もライナーにのっている国内盤はお買得と言える。

最後に、このアルバムはヘッドフォンで聞くことをお薦めする。

 

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