Sheryl Crow @ Hammersmith Carling Apollo (London, England) (Nov.3 & 4, '05)
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Wildflowerの発売に伴うミニツアーの最後を飾るロンドンでの2公演を見てきました。ロンドン公演は今回のツアーで最初に発表され、当初この公演はDVD化されると発表されていたのだけど、どうやらDVD化するのはNYでの2公演になったそうで、、、でも収録のプレッシャーがないぶんSherylはいきいきと演奏していたと思います。またTVで放送された武道館公演の時のように音響がボーカルヘビーになりすぎてバランスが崩れることもなく各楽器の音がとてもよく聞こえたので、かえってよかったです。2日間ともいい演奏でしたが、特に2日目はこれまで見たSherylのコンサートの中でも屈指の出来となりました(個人的には席がもう少し良ければ、、でも内容的にはベスト)。観客の反応も、1日目も悪くなかったと思うのだけど、2日目は金曜ということもあってか最初から最後まで極めて良好な反応で、特に場内大合唱となったIf It Makes You Happy以降は会場が一丸となって、(前回の来日公演での福岡の時のように)熱狂的と言えるくらいの記憶に残る盛り上がり方でした。またツアー最終日の解放感からかSherylの表情は明るく、バンドメンバー達も終始とても楽しそうに演奏していました。
ロンドン公演は二日間とも前座がいて、1日目はNerina Pallotという女性アーティスト、2日目はDaniel Powterというカナダの男性アーティストでした。二人ともソロでキーボード主体の演奏でしたが、Nerina Pallotは曲によってギターとキーボードを使い分け、Daniel Powterはすべての曲でキーボードを演奏してました。Nerina Pallotは一見Vanessa Carlton似のルックスですが歌はずっとまともで、キーボードを弾いているときの印象はTori Amosに近いのですが、歌はToriほどの迫力はないけど芯があるしっかりした歌声を聴かせてくれました。ギター基調の歌よりはやはりキーボード基調の歌が良かったと思いますが、キーボードで演奏した2曲目以降は緊張がほぐれたのかギターを抱えての演奏もぐっと良くなりました。7曲で35分ほどの演奏は注目に値する出来でした。Daniel Powterのほうはタイムリーにデビューシングル"Bad Day"がイギリスでヒットしたばかりだったため意外なほど大きな歓声と観客のコーラスがついてました。こちらは帽子を深めに被ってちょっと病的な感じもするルックスなのですが、歌の方は「カナダのJames Blunt」(※ちょうど同じ時期に曲がヒットしたこともあってこう呼ばれることがあるらしい)という言葉もわりとしっくりくる、やや歌い上げ系(でも誇張しすぎない)の歌声でした。なんか控えめで4曲演奏後にいったん引っ込んで、まだ時間があるとスタッフにいわれたのかもう1回出てきて1曲演奏して終わりとわりと短めでしたが、こちらも曲の良さが印象に残る演奏でした。前座の演奏が終わって30分ほどしてからSherylのステージです。
C'mon, C'mon以降のツアーではAC/DCの曲がSheryl達が登場する合図になってましたが、今回はアルバム制作において大いに意識したとインタビューで繰り返し語っているGeorge HarrisonのAll Things Must Passに収録されているWhat is Lifeがその役割を担っていました。この曲が終わるとSherylを先頭にバンドメンバーが入場してきて舞台後方の幕が上がり、Run, Baby, Runでコンサートが始まりました。今回のバンドはSherylのほかはTim Smith, Peter Stroud, Mike RoweのいつものメンバーにJeremy Stacey(イギリスツアーのみ、アメリカではShawn Pelton)、そしてDavid Campbell(Beck Hansenの父)率いるストリングスセクション(16人編成)という構成でした。久しぶりに見た(以前ここで見ました)Jeremy Staceyのドラミングは正確な上に気持ちがよく乗っていることがわかって、とても良かったです。Sherylはほとんどの曲ではベースまたはギターを演奏していましたが、Always on Your Side, Where Has All the Love Gone, Safe & Soundではステージ後方、ストリングスセクションの横に置かれたピアノを弾きながらの演奏でした。曲によってはステージ後方のスクリーンにイメージビデオ(Where Has All the Love Goneでは少年が主人公のPV風でした)が流れたり、Sherylの顔が大写しになったりしてました。
Sherylの衣装は二日とも同じで、本編では白のドレスにハイヒール(結構高い、なんでときどきなんかにつまづいてた、、)、アンコールではハイヒールはそのままで柄入りの黒地のノースリーブに紺のジーンズ、そして黒のジャケット?(これは途中で脱いだ)に着替えて登場してました(その分再登場まで待たされました、、)。私は1日目は2階席で右側の前から3列め、2日目はやはり2階席で前から3列目だけど真ん中で、位置的な理由もあって2日目の方が音響的な条件は良かったです。
今回のツアーではアルバムでも大きくフィーチャーされているストリングスセクションの存在がやはり大きく、Wildflowerの曲はもちろん、これまでストリングスつきの演奏は聞いたことがなかったMaybe AngelsやSafe & Soundなどでも意外なほどマッチしていました。特にMaybe AngelsはThe Globe Sessions発表後はほとんど演奏されたことがない曲だし、個人的にもともと好きなこともあってひさしぶりにライブで聞けて嬉しかったです。この曲でのSherylの動きや歌からは気合いが入っていることがよくわかったし、間違いなく今回のベストトラックの一つでしょう。またIt Don't HurtやMississippiなどはC'mon, C'mon以前のツアーではLorenza Ponce(日本では別の人だったけど) & Matt Brubeckによる演奏つきで見ていたこともあってストリングスとの相性がいいのは知っていましたが、これだけの人数のストリングスセクションによる演奏は迫力たっぷりで、まるでオーケストラとの演奏が前提で作られた歌であるようにすら聞こえました。It Don't Hurtは、今回最も盛り上がったIf It Makes You Happyでヒートアップした観客の大歓声(特に2日目は凄かった)を受けて演奏され、バンドの熱い演奏に加え錯綜するライティングも効果的で、いっそう場内の興奮を高めていました。また個人的にライブでは初めて聞いたThe First Cut is the Deepestもストリングスとの相性は抜群で、CDよりもぐっとロック寄りのSherylのボーカルもあってとても聞き応えがあり、今回のコンサートでも屈指の出来でした。
Wildflowerからはこの2日で8曲が演奏されましたが、ライブということもあってSherylの歌はCDで聞くよりも表現の幅がずっと広く、またバンドの演奏も短いツアーにも関わらず完成度が高かったため、全体的にCDで聞くよりずっと良かったです。演奏された中ではLetter to God, I Know Why, Always on Your Sideと言ったところが特に良かったです。Letter to GodはCDではメロディと歌がやや単調だと思っていたのだけど、ライブでは全然そんなことはなくて、言葉が入った青いスポットライトの中でSherylがもがいているかのように両手を泳がせながら歌うという演出も印象的で、予想外に良かったです。Always on Your SideはSherylの語りかけるような歌&ピアノとストリングスとのマッチングが良く、It Don't Hurtの後という順番もあって聞き入ってしまう演奏でした。
そして、今回のコンサートでの最大の驚きは、なんといってもアンコール最後にTomorrow Never Diesが演奏されたことです。この曲は'97に1度だけライブで演奏されたことがあるらしいですが、それ以降はまったく演奏されたことのない「レア」な曲で、個人的にもここ数年とても聴きたいと思い続けていた曲なので、Sherylが演奏すると言ったときには信じられない思いでした。この曲ではストリングスが大きな役割を担っているためにこれまで演奏されてこなかったのだと思いますが、今回は立派なストリングスセクションがいるし、「ロンドンにいるし、007シリーズの主題歌」だったから(と演奏前にSherylが言ってた)、演奏してくれたようです。この曲は今回のアメリカツアーでも演奏されていなかったことを考えると、やはりとても貴重な体験だったと思います。
今回のように大人数のストリングスセクションを擁したツアーは今回限りとなる可能性が高いことを考えると、見ることができてよかったとあらためて思いますが、なんといってもまた音楽にフォーカスしたSherylの姿を見ることが出来たのが一番の収穫でした。ひさびさにハードにロックするSherylの姿にはしびれました。
なお、会場で販売されていたグッズ類は、WildflowerをテーマにしたTシャツ類が4種類、Sheryl Crowとロゴの入ったTシャツ類が3種類とキーチェーンとCDでした。
11/3@Hammersmith Carling Apollo(ロンドン) セットリスト
Run, Baby, Run
Hard to Make A Stand
Maybe Angels
Good is Good
Letter to God
Perfect Lie
My Favorite Mistake
The First Cut is the Deepest
I Know Why
Mississippi
Strong Enough
Wildflower
If It Makes You Happy
It Don't Hurt
Always on Your Side
Where Has All the Love Gone
All I Wanna Do
A Change
(Encore)
Soak up the Sun
Everyday is A Winding Road
Safe & Sound
Tomorrow Never Dies
(演奏時間:1時間55分)
11/4@Hammersmith Carling Apollo(ロンドン) セットリスト
Run, Baby, Run
Hard to Make A Stand
Maybe Angels
Good is Good
Letter to God
Perfect Lie
My Favorite Mistake
The First Cut is the Deepest
I Know Why
Mississippi
Strong Enough
Chances Are
If It Makes You Happy
It Don't Hurt
Always on Your Side
Where Has All the Love Gone
All I Wanna Do
A Change
(Encore)
Soak up the Sun
Everyday is A Winding Road
Safe & Sound
Tomorrow Never Dies
(演奏時間:1時間57分)