The First of A Million Kisses
アルバム解説
このアルバムは穏やかなギターとビブラフォンの音色の心地よいA Smile in A Whisperで始まる。静かに歌いはじめたEddiが、徐々に感情を高ぶらせていくさまが素晴らしい。”言葉では愛を語ることが出来ない〜”というコーラスの一節にMarkの恋愛観を感じ取ることができる。最も愛するこのアルバムで個人的に一番好きな歌。
続くPerfectはFairground Attractionのデビュー曲にして全英No.1になった、'88年のイギリスを代表する大ヒット曲('88年の年間チャートで13位、翌年のBrit Awardsで最優秀シングル賞受賞)。Eddiの歌声から始まる、ロカビリー風の軽快なポップチューンEddiのコンサートでは必ず観客からリクエストされ、会場中が大合唱となる定番曲だが、Eddiがソロでこの曲を歌えるようになったのはソロ第3作、Candyfloss and Medicineのツアーからである。
次のMoon on the Rainは一転してゆったりとした歌。Markの歌詞では多いことだが情景が容易に想像できる叙述的な歌詞がなんといっても素晴らしい。その歌詞にロマンティックなメロディ、抑えた歌い方ながら感傷的な気分にさせてくれるEddiの歌がマッチしている。Fairground Attractionの唯一の来日公演ではラストナンバーとして、アコーディオンも交えて演奏された。
Find My Loveはアルバムから第二弾シングルとしてカットされ、イギリスでは最高7位をマークしたポップチューン。ファンの間でも人気の高い曲。Eddi自身も気に入っているとみえ、ソロでの初来日公演ではEddiが一人でギターを抱えアンコールで披露された、FA時代の唯一の曲である。
Fairground Attractionはグループ名と同名だが、そのちょっと呪術的にも聞こえる曲調(歌詞も)がアルバム中でも異彩を放つ。続くThe Wind Knows My Nameは丁寧に奏でられていく曲とEddiの表現力溢れる歌唱で時の流れをしばし忘れさせてくれる。
Clareではジャズ的要素が色濃く顕われており、歌詞にもニューオリンズに関する記述が見られる。またビデオクリップは実際にニューオリンズで撮影されてちょっと楽し気。Eddiは嫉妬にかられる思いを早いテンポで、感情を前面に押し出した歌い方で表現している。アルバムからの第4弾シングルとしてリリースされたMarkの自信作である。Eddiの2回目のソロ来日公演以降では毎回演奏されるようになった。
Comedy Waltzは地味な印象があるが、静かに入ったあと徐々に高まっていく演奏とEddiの歌が切ない歌詞(個人的にはチャップリンのサイレント映画を連想する)とマッチして印象深い。来日公演では残念ながら歌われなかったが、当時私が一番聞きたいと思っていた曲で、その後ライブバージョンがWalking After Midnightシングルに収録された時は嬉しかった。
一転してアルバム中で最もハッピーな曲、The Moon is Mineは実は”私には恋人も一夜を過ごす宿もないけど、月は私のものよ”という強がりを歌った歌詞が微笑ましい。来日公演では曲の最後にミラーボールを指差して絶唱していた(笑)。
Station Streetでは一人の少女の姿を描写することで戦争について触れている。メロディもそれほどつけられておらず、Eddiがしみじみと歌っていく。
Whispersはアルバム中唯一、Eddiのペンによる曲。自作の曲ということもあってか、ここでのEddiは実にのびのびと、気持ち良さそうに歌っている。歌詞カードでの歌詞表記もそれを表現してか、変則表記となっている。
AllelujahはEddiの朗々とした歌が印象的な、FAの代表曲。アルバム名はこの曲の歌詞から採られた。オリジナルリリースではアルバムの最後に当たる曲であり、まさにそれにふさわしい余韻を残してくれる名曲。日本公演では最初に歌われてEddiの声の確かさを一瞬で確信させてくれた歌で、日本のファンには思い出深い特別な歌でしょう。'98の来日公演では毎日歌っていました。
Falling Backwards、Mythologyの2曲は本国イギリスではCDのみに収録されたボーナストラック(当時)であった。しかしFalling Backwardsはボーナストラックと呼ぶには余りに惜しい、スローなテンポで始まって徐々にアップビートになっていくという、Eddiお得意のナンバー。思わず微笑んでしまうオチが可愛い。Mythologyはちょっとワルツ的な曲調が他の曲とは一線を画している。アルバムを締めくくる曲としてはちょっと雰囲気が重い気もする。
その他に特筆すべきこと。。。
○ライナーノート
このアルバムのオリジナルリリースの国内盤にはピーター・バラカン氏による有益なライナーノートがついていました('03年の再発からは別の人に変更)。
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