Eddi Reader @ ビルボードライブ東京 (Mar. 29, '13)


Eddiの2年3ヶ月振りとなる来日公演の初日の東京公演を見ました。今回の来日は、ニューアルバムのリリースがあったわけでもなく、前回のような時期的な要因も特にないと思われるので、発表されたときにはとても驚きましたが、今回は奇しくも東京、大阪でつぎつぎと桜が満開になる時期の来日となりました。今年の東京の桜の開花は'02年以来の早さだそうですが、その年のEddiの来日公演も桜がまさに満開になった時期だったので、Eddiは桜に縁があるのかもしれませんね('11年のお花見フェスティバルが中止になったのはつくづく残念です。。。)。

今回のバンドは、Boo Hewerdine, John Douglas, Alan Kelly, Kevin McGuireと前回と同じメンバーにIan Carr('07のツアー以来!)を加えた5人編成です。登場直後にメンバー紹介をしたときにはJohn Douglasのことを"My new husband"と紹介したのに対して、Alan Kellyのことを"My old husband"と紹介して笑いを取る場面もありました。この日のEddiの衣装は、黒のドレスに薄手の薄緑のコート?を羽織って、赤い帽子(97歳になるおばあさんのものをもらったそう)を被っていました。会場の入りはファーストがやや少なくて6、7割といったところ、セカンドは事前の良好な予約状況を反映して9割程度は入っていたと思います。私はファーストは中央3列目の指定席(Eddiの正面で視線が思いっきり合う位置、、)、セカンドは2列目でやや右のテーブル(Ian Carrの前)で見ました。

ファーストステージの最初の2曲は声の調子を確認するためか、Eddiはやや抑えて歌っているように思われました。そのためThe Moon Is Mineもいつものような明るい歌唱というよりは力の抜けた歌唱でしたが、これはこれで「小品」といった感じで良かったです。ここまででEddiは自分の声の状態に確信を得たのか、次のPatience of Angelsからはエンジンがかかったようで、声量も大きくなったし、高音部も積極的に使うようになりました。でも、だからといって一気に演奏のテンションがあがるということもなく、このセットではこの後も一部の曲を除いてEddiの歌声の醸し出す雰囲気は全体的にメロウで、感情をたっぷりと織り込みながらもしっとりと歌い込むような歌唱になってました。こうした雰囲気を象徴するのがLeezie LindsayとWinter It Is Pastです。Leezie Lindsayでは、演奏前にEddiが観客にコーラスを歌ってと言ってコーラス練習が2回行われましたが、Eddiが期待するレベルの反応があったのか、Eddiは"lovely"と言って、そのまま歌い始めました。前々回のツアーでのLove Is the Wayでも同様のことがありましたが、こういう始まり方をした場合のEddiの歌はいつだっていいのです(Eddiがすんなりと歌に入り込める状態を観客が作り出したためと理解しています)。またこの曲の終盤ではEddiはAlanの演奏に合わせるかのようにハミングをしていて、1分ほど続いたと思いますが(※ほかのセットではこんなことはなかった)、これがまた表現力にあふれていて、すっかり聞き惚れてしまいました。このセットが特別なものとなる予感を感じた瞬間です。次のWinter It Is Pastは、これまで聞き慣れた、突き抜けるような朗々とした歌唱ではなく、やはりそれまでの流れを受けたような、弾き語り調の歌声となってました。これまではそのような歌唱を聞いたことがなかったので、とても新鮮に感じました。その後もWild Mountainside(これ以上ないほどロマンチックな歌声を聞かせてくれた)やVagabond(コーラス部の声量を意図的に抑えて、沁みてくる歌声だった)、Whispers(歌詞を慈しむように丁寧に、たっぷりの声量で歌ってくれた)など出色の出来の曲が多かったのですが、一番心に残ったのは、やはり日本では今回初めて演奏された不朽の名曲、Moon on the Rainです。The First of A Million Kissesの中で個人的に最も好きな曲だけにずっと聞きたいと思ってきた曲ですが、日本ではこれまで演奏されたことがありませんでした。イギリスやアイルランドでも散発的に披露されるレベルだったようですが、昨年秋のイギリスツアーでついにレギュラーのセットリストに入ったようで、その流れで今回演奏してもらえたようです。Eddiは、Fairground Attraction時代から使い続けているというコンセルティーナを演奏しながら、この曲のイメージを体現したようなセンチメンタル感溢れる歌唱を聞かせてくれました。この順番で演奏されたというのもポイントで、それまでの雰囲気に完璧にマッチしていただけでなく、コンサートのレベルをさらに昇華させる演奏になっていました。

ファーストステージの内容だけでも、これまでで一番印象に残っている'02年の東京初日を思い起こさせてくれるレベルだと思ったのですが、セカンドステージも、ファーストとはセットリスト、演奏の両面でまったく違いながらも、やはり素晴らしい内容となりました。

セカンドステージは、1曲目のSilent Bellsからファーストステージとは違うと感じていたのですが、ファーストとは対照的に声量豊かで、明るくソウルフルな歌唱を聴かせてくれました。スキャットやシャウトなどもこのセットではよく使われていて、「はじけた」Eddiを見ることができました。全般的に声は本当にとてもよく出ていて、Silent BellsやMuddy Waterの高音部、My Love Is Like A Red Red Roseでのコーラスなどでも一分の乱れもなく、Find My LoveではFairground Attraction時代を思い出させてくれるくらい可憐な歌声(キーは高め)を聞かせてくれました。ファーストでも演奏された曲でもEddiの歌唱はだいぶ異なっていて、特にWild Mountainside, Vagabond(コーラス部はたっぷりの声量でとてもソウルフル), The Moon Is Mine(はじけまくり)といったところはまったく違った印象を与えてくれました。ファーストと全く異なる内容となった理由はいくつか考えられます。まず、Eddiが自身の声の調子に自信を持ったこと、ファーストでこの日の観客に信頼感を持つことができたこと、そしてセカンドステージの観客がちゃんと反応を返したこと、などで、こうしたことから気分が高揚し、ファーストのメローな雰囲気から一転して陽気でエネルギー全開の演奏となったのだと思います。3曲目のPatience of Angelsの演奏中にはJohnのウクレレにつながっている配線?の調子が悪くなって、Johnがスタッフに文句を言う場面があったのですが、ここでEddiが自身のコンセルティーナ用の低くセットされたマイクをJohnに寄せて"Here's a mic for you"と言って(歌うように)Johnをなだめていました。このことからもEddiがとても気分良くステージに立っていることがわかりました。そんな中でも一番印象的だったのが、The Wind Knows My Nameです。この曲でのEddiの歌唱はこのセットの中でも最もソウルフルで、感情をたっぷり込めた歌声には圧倒されました(CDでの歌唱はここまで感情表現豊かだったかな、とも思ってしまいますが、あらためてCDでの歌声を確認すると、もともとそのような歌であることがわかります)。セットの中でのそれまでの流れがあって、その中でこの曲が選ばれ、このような表現になったのは当然と納得できる演奏で、ファーストでのMoon on the Rainと同じような順番で演奏されたというのも、偶然とは思えません。Moon on the Rainとともにこの日の演奏を象徴する曲と言えます。

ファーストステージとセカンドステージ、全く違う内容でしたがどちらも素晴らしく、セット全体における曲のつながりや雰囲気なども含めて考えると、どちらのセットも甲乙つけがたい出来となりました。ツアー初日としてこれまでで最も良かったのはもちろん、すべての公演を振り返っても特に印象的な、いろんな意味で感慨深いコンサートとなりました。ライブならではの空気感の重要さをこれほど感じる機会もめったにありません。やはり、Eddiはライブを見てこそ、です。

セカンドステージの後には、CD(※来日公演では初めてLive in Japanが販売されていた)を購入した人を対象にサイン会が行われたようです(Eddiは何でも、といっていたけど会場側が修正していた、、)。私は参加しませんでしたが、サインだけにとどまらず話したり、一緒に写真を撮ってもらった人もいるようです。

3/29@ビルボードライブ東京 ファーストステージ

 1. Dragonflies
 2. The Moon is Mine
 3. Patience of Angels
 4. Leezie Lindsay
 5. Winter It Is Past
 6. Charlie Is My Darling
 7. Wild Mountainside
 8. April Blues *新曲
 9. Moon on the Rain
 10. Vagabond *新曲
 11. As Time Goes by / うさぎ
 12. Perfect
 13. Whispers
 14. Mona Lisa
 15. Willie Stewart / Molly Rankin
演奏時間:1時間19分

3/29@ビルボードライブ東京 セカンドステージ

 1. Silent Bells
 2. Dragonflies
 3. Patience of Angels
 4. New York City
 5. Muddy Water
 6. My Love Is Like A Red Red Rose / La Vie En Rose
 7. As time Goes by
 8. Find My Love
 9. Vagabond *新曲
 10. The Wind Knows My Name
 11. The Moon is Mine
 12. April Blues *新曲
 13. Mona Lisa
 14. Perfect
 15. Wild Mountainside / ?
 16. Willie Stewart / Molly Rankin
演奏時間:1時間21分



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