【京都新聞・朝刊 2008年11月23日】
     医療の信頼回復を 制度改善へ新組織
              京大エタノール死亡事故遺族ら



 京都大医学部付属病院のエタノール誤注入事故で2000年3月に死亡した藤井沙織さん=当時(17)=の両親や、訴訟を支えてきた弁護士、支援者たちが22日、京都市南区の京都テルサで報告集会を開いた。今年6月の最高裁の上告棄却決定を受けて支援団体の活動を終結させるとともに、患者の立場から医療制度の改善・充実を求める「安全と信頼の医療を考える会」(仮称)を新たに立ち上げることを決めた。

 考える会は、支援者や医療訴訟の当事者に加え、弁護士や医師にも参加を呼び掛け、近く正式に発足させる。事故と訴訟の経験から▽カルテは必ず時系列で記入し、医療行為以外にも患者に起きたことはすべて記載する▽事故が起きた場合、医師の説明を第三者が書面に記録する−などの提言をまとめ、厚生労働省に提出する準備を進めている。

 沙織さんの父親の省二さん(52)と母親の香さん(52)は約30人が参加した報告集会で「事故をなくすことは難しいが、病院が隠し事をせずに丁寧に説明すれば、最後は受け入れられる。信頼できる医療のために力を尽くしたい」と話した。

 訴訟は一、二審とも、看護師4人と京大に損害賠償を命じたが、両親の「死亡診断書やカルテに誤注入の記載がなく、病院は事故を隠ぺいしようとした」との主張は退け、最高裁も追認した。


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