控訴審判決記事
【毎日新聞 2008年2月1日】
  病院「事故隠し」高裁も認めず エタノール誤注入

 京都大病院(京都市)で00年2月、人工呼吸器に消毒用エタノールを誤注入されて中毒死した藤井沙織さん(当時17歳)の両親が、大学と担当医ら計9人に計1億1400万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が31日、大阪高裁であった。小田耕治裁判長は、誤注入の責任を認めて大学と看護師4人に総額約2813万円の支払いを命じた1審・京都地裁判決を支持し、両親の控訴を棄却した。だが、今回も大学側の事故穏しがあったとの訴えは認めなかった。

 誤注入は死亡診断書に記載されず、発覚の2日後まで両親に伝えられなかった。両親は医師の説明義務違反を争点にした。小田裁判長は「いつ事実を伝えるか検討している最中に死亡した」と述べた。 【遠藤孝康】



「病院の権威守った」
  
京大病院・エタノール誤注入訴訟
  
控訴棄却、両親落胆−−高裁判決

 京都大病院によるエタノール誤注入で死亡した藤井沙織さん(当時17歳)の両親が、大学や医師らの「事故隠し」を追及した訴訟。31日の大阪高裁判決は、8年にわたり真相解明を訴えた両親を失望させる結果となった。父省二さん(51)は「裁判所の正義とは何なのか」と落胆した。

 小田耕治裁判長が「本件控訴をいずれも棄却する」と主文を述べると、原告席の省二さんと妻香さん(51)はぼう然とした。判決後、会見した省二さんは「裁判所は、沙織の無念より大病院の権威を守った」と判決を批判。香さんも「司法はどこまでも私たちの常識からかけ離れている」と怒りをあらわにした。

 判決は「事故隠し」について「隠ぺいの意図や行動があったとは認められない。両親への事故報告までに時間がかかったのは否めないが、不法行為はなかった」と認定。香さんは「司法は真実に言及する勇気がなかった。悔しいが裁判は手段の一つ」と話し、医療過誤の遺族の心情を訴え続ける考えを示した。

 京都大病院の内山卓病院長は「現時点で具体的なことを申し上げることは差し控える」とのコメントを出した。 【川辺康広】


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