控訴記事
【朝日新聞 2006年11月14日】
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「病院の隠蔽、認めて」
  
京大医療過誤 両親が控訴

 左京区の京都大医学部付属病院で00年3月、人工呼吸器に消毒用エタノールが誤注入され、入院中の藤井沙織さん(当時17)が死亡した医療事故で、京都大と看護師に計約2800万円の支払いを命じた1日の京都地裁の判決を不服として、両親の省二さん(50)、香さん(50)=左京区=が13日、大阪高裁に控訴した。判決は争点だった医師らの「事故隠し」は認めず、両親は「病院の隠蔽(いんぺい)、管理責任を高裁で認めてほしい」と訴える。

 判決直後、会見した省二さんは「京大病院の権威に対してはとことん甘く、一般市民には非常に厳しい判決だ」と唇をふるわせた。香さんは「裁判所に裏切られ、司法に失望した」と話した。

 その日の夜。両親は沙織さんの骨箱や写真を置いている居間の祭壇に向かって、手を合わせた。「医療事故はなくならなくても、事故隠しだけはなくしてほしい」。沙織さんの強いメッセージを感じたという。

 「最高の医療を受けさせてあげたい」。84年6月、一家が岡山県倉敷市から京都に移ったのは、脳神経系の難病、「リー脳症」で苦しむ沙織さんの治療を最優先にしたからだ。しかし、16年間通い、信頼を寄せていた病院で事故は起きた。「事故を隠されて二重、三重に傷ついた」。裏切られた思いばかりが募った。

 判決によると、沙織さんは00年2月28日、人工呼吸器の加湿器に水の代わりにエタノールを注入され、3日後に急性エタノール中毒で死亡した。

 判決は、誤注入した看護師4人の注意義務違反と大学の使用者責任は認めた。しかし、誤注入の事実が死亡診断書や看護記録に書かれていないなど、両親が公判で強く主張してきた病院ぐるみの「事故隠し」については「隠蔽したとまでは認められない」と退けた。

 香さんは「事故隠しにお墨付きを与えるのではなく、命の大切さを感じられるような判決を願っている」と話している。



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            【京都新聞 2006年11月14日】

 
京大エタノール訴訟 両親が控訴

 京都大医学部付属病院で2000年3月、入院中の藤井沙織さん=当時(17)=が人工呼吸器に誤ってエタノールを注入されて死亡した事故の民事訴訟で、両親は13日、京都地裁判決を不服として大阪高裁に控訴した。

 11月1日の地裁判決は、誤注入をした看護師4人の責任を認めて約2800万円の支払いを命じたが、事故隠しと看護師長の管理責任は認定しなかった。

 両親は「カルテなどに事故の事実を記さず、発覚後2日間も公表しなかったことを『社会通念上許される』とした判決は、事故隠しにお墨付きを与えるようなもの。看護師だけの責任にとどめた点も含め、高裁で争いたい」としている。




            【毎日新聞 2006年11月14日】

 
京大医療ミス 両親が控訴

 京都大病院(左京区)で00年、人工呼吸器に消毒用エタノールを誤注入され中毒死した藤井沙織さん(当時17歳)の両親が、大学と担当医(52)や看護師ら計9人に損害賠償を求めた訴訟で、両親が13日、一審判決(1日)を不服として大阪高裁に控訴した。

 一審の京都地裁判決は大学と誤注入に直接かかわった看護師4人に総額2813万円の損害賠償を命じる一方、「事故隠し」などを認めなかった。

 両親はこの判断に対し▽事実誤認がある▽末端の看護師に過剰な負担を強いる▽事故隠しにお墨付きを与える−−などと指摘。「事故隠しと看護師長らの管理責任を高裁で明らかにしたい」とした。【太田裕之】




            【読売新聞 2006年11月14日】

「隠ぺい明らかに」沙織さん両親控訴
 
京大病院医療過誤

 京都大病院(左京区)で2000年2月、人工呼吸器の加温加湿器に消毒用エタノールが誤注入され、難病で入院中だった同区の藤井沙織さん(当時17歳)が死亡した医療過誤訴訟で、沙織さんの両親が13日、誤注入にかかわった看護師4人の過失のみを認定、焦点となった大学側の事故隠しを否定した京都地裁判決を不服とし、大阪高裁に控訴した。

 両親は「高裁で大学側の隠ぺいと看護師長らの管理責任を明らかにしたい」としている。




            【NHK京都 2006年11月13日】

 
京大医療過誤で両親が控訴

 京都大学附属病院で17歳の女性患者が人工呼吸器に誤って消毒用のアルコールを入れられ死亡した事故をめぐって女性の両親が損害賠償を求めた裁判で、両親は、医師に対する訴えを認めなかった1審の判決を不服として、13日、大阪高等裁判所に控訴しました。

 この裁判は、6年前、京都大学附属病院に入院していた藤井沙織さん(当時17)が人工呼吸器に誤って消毒用のアルコールを入れられ死亡した事故をめぐり、沙織さんの両親が、京都大学などに対して損害賠償を求めていたものです。この事故では、担当の医師が病気で死亡したとするウソの診断書を書いたとして書類送検されましたが証拠が十分でないとして不起訴処分となり、両親は、意図的に事故を隠したとして医師にも損害賠償を求めていました。

 1審の京都地裁は、今月1日、京都大学と看護師に対する訴えを認めて、およそ2800万円の支払いを命じましたが、医師への訴えについては「事故を隠ぺいする意図があったとは言えない」として認めませんでした。

 沙織さんの両親は、これを不服として、大阪高等裁判所に控訴したもので母親の藤井香さんは、「このままでは事故があっても何も言わなくていいという風潮になってしまう。病院による事故隠しを認めてもらうために控訴した」と話しています。

(NHK京都 - 2006年11月13日 19時33分更新)