判決前記事
【毎日新聞 夕刊 2006年11月1日】
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  京大病院6年前の医療ミス
 沙織さんの死「真相知りたい」

  
賠償訴訟 午後判決「隠ぺい」疑う両親

 京都大病院(京都市左京区)で00年2月、人工呼吸器に消毒用エタノールを誤注入され中毒死した藤井沙織さん(当時17歳)の両親が、大学と医師(52)ら9人に総額約1億1400万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が1日午後、京都地裁である。沙織さんの死亡診断書には、誤注入の記載はなかった。両親は「病院ぐるみの事故隠しがあったのではないか。法廷で事実を明らかにしてほしい」と話している。

 沙織さんは脳の障害で1歳から同病院で入退院を繰り返した。00年2月28日、看護師(30)が蒸留水と取り違えて、エタノール1g超を3月1日夜まで約53時間注入。翌2日夜に死亡した。病院が経過を両親に告げたのは死亡翌日の夕。「死亡前、私たちにいつ話すかを打ち合わせ、弁護士に相談していた。隠ペいとしか思えない」と父省二さん(50)は憤る。

 看護師は業務上過失致死罪で有罪が確定したが、担当医は虚偽有印公文書作成・同行使容疑で書類送検されたものの、「発症していた敗血症のショックと考えた」と弁明し不起訴になった。

 母香さん(50)は「毎日を必死で生き、私たちに応えてくれた」と話す。死亡前日、血圧が低下したが、「ママのため頑張って」と声をかけると上昇。好きな曲を歌うと小康状態に持ち直した。「事故発覚はその数時間後。闇に葬られぬよう、生き抜いてくれた」と省二さんは話している。【太田裕之】