民事裁判・証人尋問記事



          【 京都新聞 2005年9月7日記事 】

 「ミス危険性高かった」元看護師長認める
  京大病院薬物誤注入 地裁損賠訴訟


 京都大医学部付属病院に入院していた藤井沙織さん=当時(17)=が消毒用エタノールを誤って注入され、死亡した医療事故で、遺族が国や医師、看護師らを訴えた損害賠償訴訟の第7回口頭弁論が6日、京都地裁であった。当時の看護師長が「今思えば(薬を取り違える)ミスの危険性は高かった」と述べ、医薬品の管理体制の甘さを認めた。

 訴状によると、看護師が蒸留水と間違えて容器が似ていたエタノールを加湿器に注入したため、沙織さんは2000年3月2日にエタノール中毒で死亡した。

 医薬品の管理の責任者だった看護師長は、蒸留水とエタノールの容器が「似ていると思った」と述べた上で、さらにエタノール容器のふたを蒸留水の容器に流用していた理由について、「業務の合理化で使った」と振り返った。病院側が行うべき対策として、医療事故を防ぐための研修が「なかった」とし、看護師の人数と経験も「足りなかった」と話した。


          【 毎日新聞 2005年9月7日記事 】

 防止策の不備を看護師長が証言
  京大病院エタノール誤注入事件損賠訴訟

 京都大医学部付属病院で人工呼吸器の加湿器に消毒用エタノールを誤注入されて00年3月に死亡した藤井沙織さん(当時17歳)の両親が、国と担当の医師、看護婦ら計8人に1億円余りの損害賠償を求めた訴訟の第7回弁論が6日、京都地裁(中村哲裁判長)であった。前回から2年10カ月ぶりの弁論再開で、当時の看護師長(58)ら被告2人の尋問が行われた。

 誤注入は看護婦の1人が00年2月28日、加湿器の蒸留水タンクを換える際、エタノールのタンクと取り違えたことが原因となった。

 この日の弁論で看護師長は、2種類のタンクはよく似ていたが、実際に取り違えた看護婦も含めて注意を徹底していなかったことや、防止対策をとらなかったことを証言。取り違える危険性の認識については「覚えていない」としたが、刑事事件で「取り違えの危険を感じた」と供述していることを原告側弁護人に指摘されると、「そう思ったのだろう」「注意すべきだったと悔やんでいる」と述べた。

 一方で「看護師向けの医療事故防止の研修はなかったと思う」「呼吸器や加湿器の取り扱いは看護師任せだった」と病院側の対応不備も言及。「業務量に対し看護師の数や経験が足りず、自分の病棟では26人中7人が新人」「1回の勤務で2〜3時間の残業が常態化していた」とも証言した。
 また、取り違えが看護日誌などの記録に記載されなかったことについては「自分の経験でもミスを書いたことはなかったし、(ほかの看護師も)書けなかったのではないか」と述べた。【太田裕之】


          【 読売新聞 2005年9月7日記事 】

 当時の看護師長ら被告側2人に尋問
  京大病院医療訴訟

 京都大病院(左京区)で2000年2月、人工呼吸器に消毒用エタノールが誤って注入され、左京区の女性(当時17歳)が死亡した医療事故で、両親が国や医師らを相手に慰謝料など1億1200万円の損害賠償を求めた訴訟の弁論が6日あり、薬剤を管理していた当時の看護師長ら被告側2人が出廷し、尋問が行われた。

 尋問の中で、看護師長は事故後、医師から注入量などの聞き取り調査を指示されたが、医療事故の発生を伝えなかったことを明かし、理由については「過去に医療機器を壊しても届け出ない看護師がおり、まともに聞いても話さないと思った」と述べた。


          【 朝日新聞 2005年9月7日記事 】

 「記録ためらう」当時の婦長証言
  京大病院医療事故訴訟
 
 京大医学部付属病院で00年3月、看護師が人工呼吸器に過って消毒用エタノールを注入し、入院していた藤井沙織さん(当時17)を死亡させたとされる医原事故で、両親が国と同病院の医師、看護師らを相手取り、約1億1200万円の損害賠償を求めている訴訟の口頭弁論が6日、京都地裁(中村哲裁判長)であり、当時の看護婦長(58)が事故時の院内の様子を証言した。

 被告側の主尋問で看護婦長は「業務量に比べて看護師が足りず、疲労が蔓延していた」と証言。一方、原告側の「事故を看護日誌に記録していないのはなぜか」との質問に「ミスを記録するのはためらわれた」と答え、死亡時に両親に誤注入を説明しなかったことについては「医師らと初七日が終わったら言おうと話し合った。その時点で警察に報告するという話はなかった」と述べた。



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          【 京都新聞 2005年12月14日記事 】

 担当医、処置ミス否定 当時「エタノール死因でない」
  京大病院事故損害賠償訴訟

 京都大医学部付属病院に入院していた藤井沙織さん=当時(17)=が消毒用エタノールを誤って注入されて死亡した医療事故で、両親が国や医師らを訴えた損害賠償訴訟の第9回口頭弁論が13日、京都地裁(中村哲裁判長)であった。事故後初めて出廷した当時の担当医師(51)は「当時、死因がエタノールであるとは思わなかった」と証言し、原告側が指摘する処置のミスや「事故隠し」を否定した。

 訴状によると、看護師が蒸留水と間違えて容器が似ていたエタノールを加湿器に注入したため、沙織さんは2000年3月2日にエタノール中毒で死亡した。

 死亡診断書にエタノール誤注入についての記述がないことなどから、事故の隠ぺいを主張する原告側に対し、医師は「死因は、症状などから敗血症性ショックだと思った」と説明。原告側は、敗血症と診断した根拠になっているカルテの記述が「事後的に書き込まれたものだ」と指摘した。

 医師は死亡診断書に「病死及び自然死」と記載した虚偽有印公文書作成などの容疑で書類送検されたが、地検は不起訴にした。両親は不起訴不当を訴え、京都検察審査会に2度目の審査を申し立てている。


          【 毎日新聞 2005年12月14日記事 】

 担当医 初の尋問
  京大エタノール誤注入損賠訴訟

 京都大医学部付属病院で人工呼吸器の加湿器に消毒用エタノールを誤注入されて00年3月に死亡した藤井沙織さん(当時17歳)の両親が、国と担当の医師、看護師ら計8人に1億円余りの損害賠償を求めた訴訟の第9回弁論が13日、京都地裁(中村哲裁判長)であった。誤注入を知りながら適切な処置を取らなかったと指摘されている担当医(51)が初めて尋問され、「エタノール誤注入は死亡とあまり関係ないと考えた」などと述べた。

 担当医は法廷で、敗血症性ショックが原因との従来の主張を繰り返し、「エタノールが死期を早めた可能性は小さいと考えた。今でも考えは同じ」と述べた。一方、エタノール中毒との司法解剖結果については「びっくりした」と述べ、「結果的に間違ったことは認めるか」との問いには「そうです」と答えた。

 また、誤注入の開始時期や量は「分からなかった」とし、エタノール中毒については「詳しくない」と認めた。「知識がないなら、なぜ他の医師に質問したり調べたりしないのか」との問いには「考えつかなかった」と返答。沙織さんの容体の把握についても「問い詰められるとよくわからなくなってきた」などと述べた。

 担当医は「病死及び自然死」という虚偽の死亡診断書を作成したとする虚偽有印公文書作成・同行使容疑で書類送検されたが、不起訴となり、京都検察審査会が不起訴不当を議決。再度不起訴となったため、両親が二度目の審査を同会に申し立てている。
【太田裕之】



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          【 京都新聞 2006年3月2日記事 】

 「隠ぺい許せない」京大病院エタノール事故 両親が批判
  京都地裁口頭弁論

 京都大医学部付属病院に入院していた藤井沙織さん=当時(17)=が消毒用エタノールを誤って注入されて死亡した医療事故で、両親が国や医師らを訴えた損害賠償訴訟の第10回口頭弁論が1日、京都地裁(中村哲裁判長)であり、両親が初めて証言し、事故後の病院の対応を批判した。

 沙織さんは、看護師が蒸留水と間違えてエタノールを加湿器に注入したため、2000年3月2日、エタノール中毒で死亡した。両親は、死亡診断書にエタノール誤注入についての記述がなかったことなどから、病院が事故を隠ぺいしたと主張。「隠したことが1番許せない。事故があった段階できちんと説明があれば、こんなに苦しむことはなかったと思います」と述べた。

 病院側は「当時、死因がエタノールであるとは思わなかった」と事故の隠ぺいを否定している。



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  検察審査会・再審査議決記事


          【 京都新聞 2006年4月8日記事 】

 2度目不起訴は「相当」
  京大病院医療事故 検察審査会が議決

 京都大医学部付属病院で2000年2月、藤井沙織さん=当時(17)=が人工呼吸器にエタノールを誤注入されて死亡した医療事故で、京都検察審査会は7日までに、虚偽有印公文書作成容疑で調べていた担当医師(52)を不起訴にした京都地検の処分について、「不起訴は相当」と議決した。

 医師の処分をめぐって地検は02年に不起訴としたが、同審査会が「不起訴不当」を議決。再捜査でも再び不起訴になったため、沙織さんの両親が昨年3月に再審査を申し立てた。検察審査会法では、同一事件の審査は1度としているが、同審査会は、2度目の不起訴は新たな証拠に基づいているとして、異例の再審査をしていた。

 議決によると、「医師は死亡診断書の作成時点でエタノール誤注入を知っていたものの、沙織さんは持病による敗血症の発症で死亡した、と認識していた」と判断。「家族に対し(誤注入を)一時的に隠ぺいしていたことは認められるが、虚偽の死因を記載したとは考えられない」とした。

 エタノールを最初に誤注入した看護師は業務上過失致死罪で大阪高裁で有罪判決を受けている。

 両親は、医師や国を相手に民事裁判で損害賠償を求めており、「今回の議決は医師の当時の認識だけを重視しており、非常に残念。民事裁判で責任の所在をはっきりさせたい」と話している。


          【 毎日新聞 2006年4月12日記事 】

 医師、2度目は「不起訴相当」 京都検審
  京大病院・エタノール誤注入

 ◇「虚偽記載考えられない」

 左京区の京都大病院で00年2月、入院中の藤井沙織さん(当時17歳)が人工呼吸器の加温加湿器にエタノールを誤注入され中毒死した事件で、京都検察審査会は11日までに、虚偽の死亡診断書を作成した容疑などで書類送検された担当医師(52)に対する京都地検の不起訴(嫌疑不十分)処分を「相当」と議決した。

 担当医師は虚偽有印公文書作成・同行使容疑で書類送検されたが、地検が02年に不起訴処分に。同審査会は04年9月に「不起訴不当」と議決したが、再捜査した地検が05年2月に改めて不起訴処分とし、藤井さんの両親が同年3月に2度目の審査を申し立てていた。

 今回の議決は先月22日付で、死因を「急性心不全」とした記載について、「医師は誤注入の事実は知っていたものの、(持病による)敗血症により急性心不全を起こして死亡したと認識していた」と推定。「死亡診断書の交付時に家族に誤注入を告知せず、一時的に隠ぺいしたと認められるが、根拠のない虚偽の死因を記載したとは考えられない」とした。

 同審査会は前回の議決では、医師について「誤注入が判明し、速やかに両親に知らせるべきとの結論に達したが、独善的な判断で事実を伏せた」「関連性の乏しい急性心不全と記載した」などとしていた。

 両親は医師のほか、看護師や国を相手に1億円余りの損害賠償を求めて京都地裁で係争中。今回の議決について、両親は「隠ぺいのための虚偽記載だと訴えてきたのに、非常に残念。民事訴訟で真相を究明したい」と話している。【太田裕之】



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