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          【 読売新聞 2004年10月6日記事 】

 
京大病院医療ミス 地検に2万2000人の署名提出
 「今度こそ責任明確に」両親ら厳正な再捜査要望

 京都大病院(左京区)で2000年、人工呼吸器に消毒用エタノールが誤注入され、左京区の藤井沙織さん(当時17歳)が死亡した医療事故で、沙織さんの両親らが5日、京都検察審査会の不起訴不当の議決を受けて再捜査している地検に対し、2万2000人分の署名を提出、厳正な再捜査を求めた。看護師1人を起訴し、医療ミスを個人の責任と判断した地検の刑事処分から2年がたち、会見した両親は「今度こそ公正な捜査で、病院の責任を明らかにしてほしい」と訴えた。

 地検には、沙織さんの父省二さん(48)、母香さん(48)と弁護士2人の計4人が訪れ、「薬品を取り違えた看護師1人の過失というより、病院側のシステムが生み出した過失として捜査すべき」とする要請書を担当検事に提出した。

 両親は2002年10月、容器を取り違えた病院の元看護師(28)(有罪確定)のみ起訴し、死亡診断書を書いた医師ら4人を不起訴にした地検の処分を不服として、審査会に審査を申し立てた。その後、両親を支援する「さおちゃんの死と真実を知ろう会」(大坂紀子代表世話人)が今年4月まで、街頭などで署名を集めてきた。

 審査会は9月、虚偽有印公文書作成容疑の担当医師(50)を「事実を隠ぺいする意図が伺える」、業務上過失致死容疑の副看護師長(46)を「部下を指導する責務を怠った」として、2人を不起訴不当と議決した。

 省二さんは、担当医が誤注入を認識しながら、死亡診断書に意図的に書かなかったことを指摘した審査会の議決に触れ、「関係者が口を閉ざしてきた事故隠しについて、一般市民の感覚で考えてくれた」と評価。要請書を渡した担当検事から「厳正に再捜査にあたる」と言われたといい、「その言葉を信じるしかない」と力を込めた。

 香さんは「医療事故の被害者は事故以上に、その後の医療従事者の不誠実な対応で二重、三重に苦しめられている。司法の場で有罪と判断することこそが、事故隠しの一番の抑止になるのでは」と訴えた。



          【 毎日新聞 2004年10月6日記事 】

 京都大病院エタノール事件 「厳正・公正な再捜査を」
 
「医師ら不起訴不当」議決受け 2万2002人署名提出

 京都大病院(左京区)で起きた消毒用エタノール誤注入事件で、京都検察審査会が先月、当時の担当医師(50)と副看護師長(46)に対する京都地検の不起訴処分を不当と議決したことを受け、死亡した藤井沙織さん(当時17歳)の両親が5日、京都地検を訪れ、厳正・公正な再捜査を求める2万2002人分の署名を担当検事に手渡した。

 署名は支援者らが2年間かけて集めた。申し入れ後、沙織さんの父・省二さん(48)と母・香さん(48)らが中京区の司法記者室で会見。省二さんは「不起訴は恣意(しい)的な判断だと考えている。(不起訴不当の)議決は担当医師の死亡診断書虚偽記載も明確に指摘した。厳正・公正な再捜査を行い、きちんとした理由を我々に説明してほしい」などと訴えた。

 事故は00年2月28日午後5時半ごろ、担当の元看護師(有罪確定、辞職)が加温加湿器に補給する蒸留水タンクを消毒用エタノールのタンクと取り違えて注入。その後、約53時間にわたり、ほかの看護師4人も誤注入、藤井さんは急性エタノール中毒などで死亡した。

 誤注入を両親に伝えずに直接死因を「急性心不全」とする死亡診断書を作成、家族に交付したとして、京都府警は01年1月、当時の担当医を虚偽有印公文書作成・同行使容疑で、また、看護師ら7人を業務上過失致死容疑で書類送検。02年10月、同地検は元担当看護師1人だけを起訴した。

 このため沙織さんの両親は昨年10月、不起訴とされた担当医や副看護師長ら4人について、不起訴不当を申し立てた。

 同審査会は先月16日、担当医師について「誤注入が判明し、教授らと対策を検討した結果、事実を速やかに両親に知らせるべきとの結論に達したが、独善的な判断で事実を伏せた」と厳しく指摘。「死亡診断書には関連性の乏しい『急性心不全』と記載した」などと断じた。また、副看護師長に対しても「指導・監督する責務を怠った」などとして、不起訴不当と議決。早期の再捜査を求めた。

 業務上過失致死については、来年3月で公訴時効となる。【中村一成】


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【 毎日新聞 2004年10月6日朝刊 】
【 読売新聞 2004年10月6日朝刊 】