【 京都新聞 2004年9月18日朝刊 】
【 京都新聞 2004年9月17日夕刊 】
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          【 京都新聞 2004年9月17日記事 】

 京大病院 薬物誤注入 担当医らの不起訴不当
     
検察審議決 「隠ぺい意図」

 京都大医学部付属病院(京都市左京区)で2000年2月、入院中の藤井沙織さん=当時(17)=が人工呼吸器にエタノールを誤注入され死亡した医療事故で、京都検察審査会は17日までに、沙織さんの当時の担当医師(50)や副看護師長(46)を不起訴にした京都地検の処分を「不当」と議決した。看護師長(57)と別の医師(32)の不起訴処分は「相当」とした。

 京都府警は、最初にエタノールを誤注入した同病院看護師(28)=大阪高裁で有罪判決=や看護師長ら7人を業務上過失致死容疑で、担当医師を虚偽有印公文書作成・同行使容疑で、それぞれ書類送検した。地検は看護師1人を起訴したが、担当医師や看護師長らを不起訴処分にした。

 同審査会は「担当医師は、同病院の教授らと協議して誤注入を両親に知らせるべきという結論に達したが、独善的な判断で事実を伏せたままにした。誤注入を盛り込むべきか、と言っていたのに死亡診断書には関連性の乏しい『急性心不全』と記載した。両親に誤注入を告げておらず、隠ぺいの意図がうかがえる」と判断。「副看護師長は、看護師長が不在時に不足している薬品を調査、請求する役目なのにしなかった。看護師を指導する地位なのに、ミスはないと過信していた」と判断した。

 藤井さんの両親は02年10月、「担当医師は誤注入の報告を受けながら死亡診断書に『病死及び自然死』と記載していた。看護師のミスの背景には、看護師長や副看護師長のずさんな薬品管理があった」として、担当医師や副看護師長ら4人の不起訴処分について京都検察審査会に審査を申し立てていた。

 京都地検の高田明夫次席検事は「検察審査会の指摘を受け、調べていきたい」と話した。



          【 京都新聞 2004年9月18日記事 】

 
京大病院 薬物誤注入「事故隠し認めた」
     
検察審議決  遺族、遺影の前で

 京都大医学部付属病院のエタノール誤注入事故で、京都検察審査会が担当医師(50)と副看護師長(46)の不起訴処分を「不当」と議決したことについて、死亡した藤井沙織さんの父省二さん(48)と母香さん(47)は17日、「事故隠しを認め、先端医療で注目される京大病院で足元の安全管理が見過ごされていることを指摘した」と評価し、検察の再捜査に期待を寄せた。

 議決は「担当医師は死亡診断書に誤注入を意図的に記載しなかった」と、事故の隠ぺいを認定。診断書作成時はエタノールの影響を示すデータがなかったことなどを理由にした不起訴を「一般国民の考え方からは納得がいかない」と指弾した。

 香さんは2年前、担当医師の不起訴を説明する検事に、「死亡診断書に『病死及び自然死』と書いてある」と詰め寄った。「説明に根拠がなかった。医療事故の被害者は事故そのものより、事故後の不誠実な対応に苦しめられる。病院の裏側で何があったのか明らかにして、再発防止の一歩にするべきだ」と話す。

 議決は「高度な医療技術が要請されている京大病院で、副看護師長の安全対策の認識が希薄だった」とも指摘。省二さんは難病の沙織さんに最先端医療を受けさせるために仕事を辞め、京都に移った。「私たちは、他に頼る病院がないという思いで京都に来た。防ぐことができた事故で命が奪われた悔しさを受けとめてほしい」と唇をかむ。


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