【 京都新聞 2002年10月5日朝刊 】
          【 毎日新聞 2002年10月5日記事 】

  京大付属病院誤注入死亡事故
 「医師の責任は…」と両親  「病院の体質に問題ある」

 京都大医学部付属病院に難病で入院中の藤井沙織さん(当時17歳)がエタノールを誤注入され中毒死した事件で、京都地検が看護師1人のみ起訴し、死亡診断書にエタノール中毒を記載しなかった担当医(48)=虚偽公文書作成・同行使容疑で送検=らを不起訴としたことを受け、藤井さんの両親が4日、記者会見。「病院ぐるみのミス隠しこそ問題なのに。世の中に社会正義はないのか」と無念さをあらわにした。

 担当医はエタノールを50時間以上誤注入した事実を把握しながら、死因を「急性心不全」「病死及び自然死」などと記入し、病院側はミス発覚後も「既に難病で重篤だった」などと説明。地検は「(医師の)故意は認定できない」とした。

 父省二さん(46)は「なぜ医師の責任が問われないのか理由が全く分からない。ミスを病院が隠すことにお墨付きを与えてしまう」と肩を落とし、「今後も声を挙げ続ける」と語った。母香さん(46)は「起訴された看護師には社会的責任を取ってほしい。ただ、本質は個人の過失より病院の体質。これでは沙織に報告できない」と話した。

 監督責任を問われた看護師長らも不起訴で、代理人の坂田均弁護士は「日本有数の病院で起き、患者らの信頼を失墜させた事件。情報開示など病院の姿勢が厳しく問われる時代に逆行する処分だ」と述べ、検察審査会への不服申し立てを検討、係争中の民事訴訟で医師らの責任を追及する考えを示した。
                           【野上哲、田村晃一】
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