「映像の中のウォーホル」
アカデミー賞でマーシア・ゲイ・ハーデンが助演女優賞を受賞した「ポロック」など、画家についての映画は多いが、没後14年、アンディ・ウォーホルの人気は抜きん出ている。
68年の狙撃事件を加害者側から描いた「アイ・ショット・アンディ・ウォーホル」では緩慢なる悪役、80年代の美術界の内幕もの「バスキア」では若手作家との友情に厚い巨匠、オリバー・ストーン監督の「ドアーズ」ではアングラ文化の象徴と、活人画とはいえ毀誉褒貶は激しい。
どの映画でも共通した描写は、彼の絶妙な社会との距離の取り方についてだ。実際、生前のインタビューでも、どんな質問にも「さあ?」としか応えなずけむに巻く態度は一流で、神秘性もたっぷり。「役作り」に際しての想像や解釈がふくらむのだろう。
その彼の実像を丹念に追った、チャック・ワークスマン監督のドキュメンタリー評伝映画「スーパースター」もDVD化された。ロシア系移民出身の同性愛の青年が、大都市ニューヨークでデザイナーとして成功し、60年代には前衛芸術家へと華麗に転身、上流階級へ接近し国民的アイドルになるというサクセス・ストーリ−と、その磁場に発生する虚栄や殺伐。
それはまた、他民族、異文化社会であるアメリカ社会の横断図そのものであり、一見軽い「ポップアート」の表現が、その背景に持つ重い社会意識を浮き上がらせる。
ビデオ「ライフ・オブ・ウォ−ホル」は、友人で映像詩人のジョナス・メカスの映像を集めた作品。日常的な視点の中で動きまわる彼のかもし出す「人間」としてのリアリティが興味深く、作家理解にも役立つ。
(コラム「魚眼図」/北海道新聞夕刊01年4月3日)