2004年7月17日 人生最大の悪夢・・・。
17日の朝、残るメンバーが西表に入った。ダイバー11人は早速海へ。本日のダイビングポイントは中ノ御神島(通称オガン)。西表から船で1時間ばかりの小さな無人島の近くの海の中に大きな根(岩)があって、その根につかまってイソマグロなどの回遊魚を眺めるというダイナミックなポイントだ。潮が速いのでそこそこ経験がないと潜るのは危険なポイントだけれど、メンバーみんなダイビング歴10年近く、潜っている本数も200本〜300本というそこそこ経験豊かな仲間たちで心配はない。とはいえ経験あるだけに勝手気ままに行動するクセがある人たちなので、一応バディ(ダイビング中にお互いの安全確認をする仲間)だけは決めておく。
オガンで最も人気の高い東の根に到着。塩をみるが流れが速い・・・ということで、島の南側の天馬崎という水がきれいで塩の流れのないポイントに変更した。いやぁ〜、海の中は明るくて、透明度はいいし、白い砂地はきれいだし、笑ってしまうくらいに気持ちいい。まるで天国のよう。途中でフィンとブーツを脱ぎ捨てて、砂の上を歩く。まるで宇宙遊泳しているみたい。ダイビングで透明度がよくて地形のおもしろいところに潜ると、まるで空を飛んでいるような気持ちになる。あの独特の浮遊感がなんともいえず楽しい。
おっとりと午前中のダイビングを終えたあと船上でのんびりランチタイム。カツオ鳥が島の回りをゆらゆらと飛んでいて空も海も青く、最高に気持ちいい。風景を眺めつつ、しっかり日焼け止めは塗って、なぜか誰よりも日焼け(?)している肌を守る。
午後のダイビングポイントは相変わらず潮の流れが今イチの東の根はあきらめて、島から2kmくらい離れた一の根というところで潜ることにする。潮の流れが速いときは海の中は大当たりする(大物が見られる)か、全くのハズレかのどちらか。今日はどうだろう。。。一の根付近もやはり潮の流れが速いので、アンカーを降ろして潜行ロープを使って潜ることにする。潜行ロープの他に万が一流されてしまったときに備えて船の後ろにはロープが流されている。
ガイドのブリーフィング後、船の下の根に集合!ということで船尾から順番に潜降していく。思ったよりも流れが速い。顔の向きを変えるとマスクやレギュレータのマウスピースを持っていかれそうになるので、ひたすら流れに負けないように潜行ロープに体を絡めるようにして降りていく。根にたどり着いたら、今度は根に貼り付いて体を流れに持っていかれないようにするのに必死。下手に上下左右を見ようものなら流れに逆らうことになるので、ひたすら潮が流れてくる方向に体を向けておくしかない。こうなってくると移動するにもひたすら匍匐前進。ガイドと仲間の姿を目のはじにとめながら根の周りを移動していく。30分ほど潜っていたけれど、特に大きなあたりもなさそう。ガイドから浮上の合図。再び潜降ロープのところへ戻って順番にロープをつかみながら浮上していく。
とりあえずなんとなく、メンバーの人数を確認してみた。いち、に、さん・・・あれ???何度数えても1人足りない。流れが強かったので、潜降してすぐは人数を数える余裕がなかった。誰か潜るのやめて船に残っているのかなあ・・・。メンバーをざっと見るといないのはM夫妻の夫のようだ。妻の方を何度も見ていると彼女も夫がいないことに気づいているようだ。ちょっといや〜な予感がしたけれど、とりあえず船にあがってみないことには分からない。
浮上してみると、やはりM夫の姿がない。全員血の気が引く。メンバーに確認してみたが、みんな自分のことに必死で私も含めて周りのことを見ていない。船に一人残っていた人は、M夫が潜降したのは確かだという。誰か海中で彼を見たか・・・という話になった。自分たちのすぐ前に潜降したので、潜降してすぐ彼はいたはずだと誰かが言う。M妻は海中で彼の姿は見ていないという。私も見た記憶がない。とはいえ、殆ど周りを見渡せなかったからいたかどうかが分からない。
ガイドが再び海中に潜る。コースをひととおり探したが姿はない。普通、ダイビングをしていると水面に泡が浮かんでくるのでどの辺りにいたか分かるのだけれど、船の周りにはそれらしき泡も見られない。ダイビングを開始して既に30分以上たっている。万が一海中でなんらかのトラブルに巻き込まれてしまった場合、状況はかなり厳しい。彼のことだからどこかに浮上しているよ・・・と皆で船の回りを目をこらすが、それらしき影は全く見えない。緊急用のフロート(2mくらいの空気を入れて立てるオレンジの棒)は持っているということだから、海面にいたらオレンジのフロートが見えるはずだけれどそれも見えない。
と思ったら、先の方でざっと海面がなった。彼に違いない!皆であっち、あっちとガイドに方向を指示して船を回してもらう。「も〜、驚かせないでよ・・・」と力が抜けた。が、近寄ってみると人ではなく海面に表れたのはカツオ鳥であった。再び全員が凍りつく。今起こっていることがあまりにも現実とは思えない。何も言わずに必死に海面に目をこらすM妻に誰も声をかけられない。
(つづく)
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