RMC 東京ニュースを読む(2004年10月)

作成日: 2004-10-03
最終更新日:

この種議論を反面教師にしよう

著者の主張を段落毎に要約すると次のようになる。

  1. 「企業は利潤を追求するだけでなく広く社会にとって有用な存在でなければならない」 「従業員のゆとりと豊かさを実現する」
  2. 以上は日本経団連の「企業行動憲章」の前文と第6原則である
  3. 日本経団連会長「サラリーマンも家計のムダを見直すべきだ」発言に、 ある教員が「企業行動憲章」を突き付けて次の通り非難した。
  4. 利益の更なる増大のために家計のリストラを促し生活水準を低下させることが 『広く社会にとって有用』なのか。 『従業員のゆとりと豊かさを実現する』ことにつながるのか。
  5. 上記非難は50年前の企業罪悪論の考え方と変わっていない。
  6. 社会保険、労働保険は企業が払っているが、毎年引き上げられ、企業は大変である。
  7. 国が果たすべき福祉を企業が負担しているのに 「従業員のゆとりと豊かさに貢献していない」というのか。
  8. 「利益の更なる増大のため」という非難は時代錯誤である。 利益を上げることで租税を負担し地域を支えている。雇用機会も創出している。 企業の利益は社会への貢献を永続化するためである。
  9. 「福祉」を掲げた元都知事は財政を破たんさせた。元都知事も、教員も≪世事に疎い≫。
  10. 「利益の更なる増大」はやっかみ。発展を目指すのは企業の健全な姿だ。
  11. 「生活水準を低下させる」ことは感情論。社会主義者は夢のような理想論を述べるが、そっくり
  12. 企業のあり方を知らない低劣さ。論理性もない感情論。「ものいえば唇寒し」の典型例
  13. 論理のわざを磨くなら、隙だらけの主張をとらえて料理をしてみるとよい。

わたしも考えてみた。以下述べる。

まず、表題の意味「この種議論」の「この種」とは何か。指し示すものが不明である。 本文を読んでみるとむしろ「隙だらけの主張を反面教師にしよう」という表題が合うだろう。

教員の言がよくわからない。 「家計のリストラを促し生活水準を低下させること」が利益の更なる増大につながるのだろうか。 ふつう、家計をリストラすれば(単純に倹約の意味にとる)、支出は少なくなる。企業の売上高は落ちる。 そうすれば利益はむしろ減少するのではないか。

著者の主張もよくわからない。利益を上げることで租税を負担し、というのはもっともである。 しかし、それが成り立たない例もある。ある企業は、外国に輸出される特定の商品だという理由で、 いったん払った消費税を税務署から全額還付してもらっている。これ自体は合法的である。 しかし、この事実を知れば、「利益を上げることで租税を負担し地域を支えている」という主張には、意味がなくなる。

また、雇用機会も創出している、という。しかし、これは順序が逆である。 雇用の機会を奪うことで利益を創出しているというのが事実である。利益を上げたある企業は、 人をどれだけまで減らすことができるかを、システム化している。

発展を目指すのは企業の健全な姿かどうか、現在では疑問がある。少なくとも、 すべての企業が量的規模の拡大を目指すのは、健全な競争社会とはいえない。

生活水準を低下させることが、やっかみだと非難するが、その論拠はわからない。

低劣、論理性もない、感情論、「ものいえば唇寒し」の典型例、と畳み掛けるこれらのことばは、 論理の不整合を指摘し、正すという方向にはなっていない。

このように書いてきて、「ものいえば唇寒し」がここの教員のことを指すのか、著者のことを指すのか、 私のことを指すのかがわからなくなってきた。賢明な読者の御判断を乞う。(2004-10-03)

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MARUYAMA Satosi