推薦された本を読んでいない自信:企業診断ニュースを読む(2010年 6 月)

作成日: 2010-06-06
最終更新日:

本を読むのは好きだが

本を読むのは好きだが、人に本を推薦するというのはあまりしたくない。 というのは、推薦することで推薦した人、つまり私の本性がばれるような気がするからだ。 人から推薦された本を読むのも、正直言えばつらい。 推薦されたことで負担が生じ、たとえつまらない本でも「面白かった」とか、 「ためになった」など、肯定的な感想を返さなければならないと思うからだ。

それならば、なぜ読書記録を載せているのか、という問いがあるだろう。 それには、特に私は推薦などをしていない、ただ面白かったか、つまらなかったかを記しているだけだ、 と答えることにしている。

ということで、今月号の特集は<本シェルジュがすすめる─診断士に読んでほしいこの1冊>である。 中小企業診断士がすすめる本だから、おそらくは経営の本だろう。 それならば、私はどれ一つとして読んでいない自信がある。 自信というのはおかしい、という声もあろうが、経営書を読むぐらいなら昼寝をするほうがまし、 という考えを私は持っているので、診断士がすすめる本を私が読んでいたら、 自分の誇りが崩れる。

ひょっとして読んだ本があるかもしれない、と恐れながらおすすめ本の一覧を見ていったが、 結果は一冊もなかった。ここで内心にやりとしたが、似ている本は読んでいる。 それを紹介しよう。

イマイチ熱意がない

この節のような嘆きを持つ診断士へのおすすめ本が 8 冊ある。 残念なことに、どれも似た本を読んだことはない。 こういう本が売れている、と聞いたことがあるのは、「真実の瞬間」と「マネー・ボール」だ。 「スラム ダンク」も知ってはいるが、ビジネスという観点では知らない。 さて、「マネー・ボール」だが、紹介の文章がわからない。 いきなりビリー・ビーンは紛れもなく、レインメーカーだったとくる。 いったいビリー・ビーンとは誰だ。ビリー・ジーンならマイケル・ジャクソンの歌だが、 似て非なるものだろう。 なお、レインメーカーの説明はある。別の本の紹介で、 レインメーカーは会社に収益という雨を降らせる者といっているから、これはよい。 しかし、最後はこうだ。しかし,ジェレミー・ブラウン狂想曲は, ひっそりと 2006 年に終わった。これも、ジェレミー・ブラウンなる人物の紹介がどこにもない。 俺ならこんな紹介文は書かない。

インターネットで調べたら、 ビリー・ビーンはオークランド・アスレチックスのゼネラルマネージャー(GM)。 卓越した球団運営で、メジャーリーグの名GMの1人に数えられる。 とある。ならば、さきほどの紹介文で、 「アスレチックスのゼネラルマネージャー、ビリー・ビーンは...」という紹介文を付けるべきだ。

そして、ジェレミー・ブラウンとは誰か。 2002年に、アスレチックスでドラフト1位に指名された選手である。 あのGMが選んだ、ということで話題になったが鳴かず飛ばずで、 2006年メジャーデビュー、しかしその年でメジャーは終わり、2007年度以降はマイナーリーグに行くが、 メジャーに戻ることはなく、2008年に引退する。 そういう難しいことだから、最後の<しかし...>以降の文は、削るべきだ。

はじめの一歩が踏み出せない

俺なんか最初からいじけているから、自信が無い、知識・スキルがない、 行動につながらないの3拍子が備わっている。これらを解消する本が10冊紹介されているが、 やはり見事に読んだことがない。 そのなかに、「超訳ニーチェの言葉」がある。もちろんこの本は読んでいないが、 ニーチェの本はどれかを読んだ気がする。少なくともニーチェの伝記はドイツ語で読んだ。 しかし、わからなかった。わからないのが哲学だと思っていたから、そのことは何も感じなかった。 哲学書なんて、人生の目的を決めるために読むものではなく、暇つぶしに読むものだろう。

思いを伝えられない

俺のいじけ度はかなり深いから、思いを伝えられないのは当たり前、 だいたい伝えたい思いなどありはしない、と達観している。 だから、「感動がない」、「体験がない」、「行動していない」のはしょっちゅうである。 だいたい、フォーレの演奏会へ行って、いい音楽を聴いて感動したところで、 誰に思いを伝えればいいのか。非常に難しいぞ。

そんなわけで、おすすめの本が10冊あっても、俺には関係ない。 勤務時間中にサーフィンに行っていい会社、パタゴニアにはあこがれるが、 残念ながら俺はサーフィンはできない。パタゴニアのロゴを見るたび、 ああ、こいつらは俺たちの金でサーフィンをしているのかと思うと複雑だ。 だから、パタゴニアの商品を買ったことはない。

なりたい自分が決められない

なりたい自分があるのだろうか、という疑問からまず始まる。 本当の自分とか、なりたい自分があるのか、そういう疑いは考えると面倒なので、 俺は停止させるようにしている。将来にも、俺は自分に多くを望まない。 いろいろなことを疑い続けていたい、と思うだけだ。

さて、「やりたいことが絞れない」、「頭の中が整理できない」、 「アウトプットが進まない」などの問題があがっている。 これらも、現実として俺の身にもふりかかってきている問題と認識している。 しかし解決する方向では進めない。あるがままに受け入れるという方針である。 ということで、9冊の本があがっているが、どれも読んだことはない。 ただ、ニアミスをしているようだ。

一つは、フェルミ推定について書かれた本だ。「フェルミ推定」やら、「地頭」やらが流行る20年前、 私はベントレーの「プログラマのうちあけ話」という本を買った。 よいプログラムを書くための方法が満載されているが、その中で「封筒裏の計算」 という章が、まさにフェルミ推定を実践するための方法を述べていたのだ。 もっとも、早く知ったからといって役に立ったとか尊敬されたかということはまったくない。

もう一つ、かすっているのが上杉鷹山について書かれた小説が推薦されていることだ。 俺は藤沢周平の「漆の実のみのる国」を読んだことがある。 俺は時代小節や歴史小説は読まないし、嫌いなのだが、 藤沢周平の本の一つは読まないといけないと思って選んだのがこれだ。 この本は藤沢周平作品としては、名のある上杉鷹山を選んだから異色である、という人がいる。 俺は残念ながら市井の人々を描いた藤沢周平は知らないが、 この作品に関しては、上杉鷹山の営みと苦労を描きつくしており、 苦労が報われず空しさがあとに残るが、その空しさが余韻に残る美しさがあり、 さすがと思う。 ということで、全く経営には関係ないことで唐突に終わる。


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MARUYAMA Satosi