講師業の難しさ:企業診断ニュースを読む(2009年 9 月)

作成日: 2009-12-26
最終更新日:

講師というものをやってみて

今回の特集は「講師という仕事」である。 私は、中小企業診断士であることを生かした講師は行なったことがない。 しかし、学生のときはアルバイトとして塾の講師を務めたことはある。 また、就職した後のSE時代には、営業の一環として商品の展示説明の講師を行なったことがある。 どちらも、難しい。以下は、雑誌の内容とは関係なく、ただの失敗体験である。

塾の講師時代

私が塾の講師として受け持ったのは、数学であった。 まず最初に難しいコースを受け持たされた。その結果、壇上で立ち往生した。その後、塾長命令で易しいコースに格下げとなった。 易しいコースになってからは、10人から20人ぐらいの生徒を相手に、 易しい問題でも念を押した。たとえば、三角関数を解く例題、たとえば cos θ = 1/2 を満たすθを求めよ、 という問題でも、いちいち座標と円を書いて説明していた。

一度だけ、この易しいコースで最後の授業ということで、サービス実験をしたことがある。 トイレットペーパーの芯をトイレから持ってきて、わざと斜めに輪切りにしてカッターで切った。 そして、二つになった芯の片方を今度は長手方向に切って割り、丸まっている芯を伸ばした。 そして「この形がサインカーブになっています。証明は考えてください」と言って授業を終わった。

このあとアンケートを無記名で取った。レベルが低くて損した、という恨みのこもったものもあれば、 トイレットペーパーの実験が面白かった、私もやってみます、といううれしいものもあった。 ただ、やはり教えることは疲れるものであった。

大学生相手のお話

卒業後は画像処理のSEとしてプログラム開発やプロジェクト管理にかかわってきた。 商品は主にアカデミックな組織が中心であり、中にはある大学の研究室もあった。 その後、営業から命令された。 商品を買った先生が、自分の大学の学生たちに講義してくれ、講師は君の会社のエンジニアから出してくれ、 ということで、おまえが引き受けろ、ということだった。 何をどうしゃべってよいのやら分からなかったが、 CT画像から3次元画像のできるまでを、射影幾何を交えながら数十分講義した。

最初はやはり関心がなさそうで、困ったなあと思った。しかし1回で済ませられればよい、 と思いそのまま放置したところ、翌年2回目のお呼びがかかった。 もう少し学生の興味を引くことはできないか、と考えた。 まず、マンガに出てくる、頭髪の周辺が光る「天使の輪」は、コンピュータグラフィックスで再現できることを伝えた。 また、3次元CTから再構成した肺の形を、光造形技術で実際に模型としてできることをアピールし、 その模型も持ってきて回覧してもらった。 それでも、興味を持たない学生はいるようだった。

技師相手の販売促進

先にあげた商品はある種の技師が使う。そこで技師の勉強会で商品の宣伝をした。 これは1995年ころだったと思う。プレゼンテーションはOHPかスライドが主流の時代だった。 私もそのような心積もりで資料を準備していたが、営業がプロジェクターを使おうという。 私も慌てて、OHPの資料をパワーポイントで作り直した。もともとパワーポイントも主流になったのはこのころからだ。 さて、勉強会の成果はというと、商品の宣伝には全くならず、 むしろプロジェクタとパワーポイントというプレゼンテーション方法に質問と話題が集中した。 こういうものだろうか。 ちなみに、当時のプロジェクターは、今のタワー型のPCより一回り大きかった。 当然自分では持ち運べず、運送会社に頼んで持っていったもらったものだ。

別の場所でも、同じようにやはり技師の勉強会があり、資料を持って出かけた。 わたしがプロジェクタでコンピュータグラフィックス(CG)の基礎を説明した。 私の後が大学の先生で、実際にCGが使われている例を、 ビデオを使って示したのである。企業の私が基礎を、大学先生の教授が実例を紹介した、 妙な勉強会であった。 さて、当初先生はその部屋にあった大画面テレビでビデオ画像を映そうとしたが、 当時の大画面テレビが故障をしていて映らない。そこで営業が機転を利かして、 ビデオ信号をプロジェクタにつないでみたら、これが見事に映った。 結果として、当時の大画面テレビより大きく鮮明な映像で、 勉強会出席者がCGを堪能できたのである。

講師は準備に時間をかけなければならない

記事に戻る。教える仕事についても事前準備の出来が講義内容を左右することになるという。 一説には,5倍から10倍の時間がかかるという。これは大変なことだ。 哲学の土屋賢二先生も、講義の準備で徹夜したことがあるという。私はそこまでできるだろうか。


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MARUYAMA Satosi