企業診断を読む(2009年7月号)

作成日:2009-07-19
最終更新日:

中小企業における知的財産の保護・活用

今月号は、中小企業白書の要約が特集である。さて、知的財産に関して、 次の要約がある。

中小企業の特許取得の状況

中小企業の特許保有件数の割合は 17.6% と低く,下請企業はさらに低い。 1社当たりでは,大企業が 209.3 件であるのに対し,中小企業は 17.7 件にとどまる。

この文だけ読んでもわからない。中小企業の特許保有件数の割合とあるが、 何の割合か。1社あたり、中小企業は 17.7 件も特許をもっているというが、多すぎるのではないか。 この疑問を解くためには、中小企業白書 2009 年版の原本に当たってみないといけないだろう。

まず、中小企業の特許保有件数の割合について、原文である中小企業白書 p.106 の記述は次の通りである。

特許保有の総件数に占める中小企業の特許保有件数の割合は 17.6 % となっている。

それならそう書けばいいではないか。全体を示さない要約は不明瞭だ。 次に、1社あたり、中小企業は 17.7 件も特許をもっているのかという疑問であるが、 これは中小企業白書の本文中にある注である。この注はさらに巻末の付注2-3-6を参照するように指示がある。 この付注のグラフの注2に次の記述がある。

「国内特許保有件数/国内特許保有企業数」にて割合を算出

つまり、17.6 % の母数の中には、特許を1件も持っていない企業は入っていない、ということである。 企業診断の執筆者には、この事実まで記してほしかった。 もっとも、どうせ要約なのだからおかしいと思ったら中小企業白書を読め、 というのが方針であれば、これ以上強いことは言わない。

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MARUYAMA Satosi