企業診断を読む(2005年10月号)

作成日:2005-09-28
最終更新日:

一次試験「経営情報システム」の解説へのコメント

2005年中小企業診断士第1次試験の問題について、 傾向と学習のポイントについて掲載された記事である。

適切な解説であると私は思うが、少し絡んでみよう。

第1問:電源投入後のパソコン起動

試験問題は「___に記憶されているBIOSが起動する」であり、 空欄にあてはまるのはROMが適切であると解説されている。 その通りであるが、正確には不揮発メモリ(フラッシュメモリ)であろう。現在のBIOSは、 更新できるからであり、書き換え不能なROMというのはパソコンに関してはなくなりつつある。

第2問:ハードディスク

断片化への対処方法が書いてあるが、断片化がフラグメンテーションの訳であり、 接頭辞deが逆や脱を意味することがわかれば、解答できる。 英語の問題であろう。

第3問:プログラム言語

ここでは「解説」を解説する。 「インタプリタ型言語」にはBASICやLISPが、 「コンパイラ型言語」にはFORTRANやCOBOLが該当するとしている。 しかし、実際には、BASICのコンパイラやFORTRANのインタプリタも存在する。 しかし、常識は解説の通りである。実情はわかっていても、常識で答える必要がある。

同様に、「手続き型言語」にはFORTRANやCOBOLが該当する。しかし、 オブジェクト指向プログラミングができるFORTRANやCOBOLの処理系もまた、 存在する。残念ながら、設問の常識では「手続き型言語」にこれらを押し込めておく必要がある。 しかし、現状の把握し、曇のない目でみることも同時にわかってもらいたい。

問題文へのいちゃもんもある。 「(JavaやC++は)いずれもオブジェクト指向に基づいた開発環境をもっていることが特徴である」 とあるが、開発環境とオブジェクト指向は独立である。正確には、 「(JavaやC++は)いずれもオブジェクト指向に基づいた開発が可能であることが特徴である」とすべきだろう。

もう一つ、問題文への文句がある。 「オブジェクト指向ではデータとメソッドを一体化して隠蔽することをカプセル化といい、」とあるが、 カプセル化そのものは、厳密にはオブジェクト指向の性質とはいえないという論者がいることに注意してほしい。 例えば、「Rubyアプリケーションプログラミング」(オーム社)における、 まつもとゆきひろ氏のCOLUMN(p.49)参照。

第4問:ソフトウェアの種類

フリーウェアのフリーとは、「無料」の意味より「自由」(ソース配布の自由、ソース改変の自由など)が、 より重要視されている。これを覚えてほしい。 そして、最近はオープンソースの概念が広まっている。フリーウェアとオープンソースの違いについては、 インターネットで調べてほしい。 ちなみに、第5問で出てくるDNS、FTPや第7問のWikiなどは、フリーウェアである。 また、フリーウェアを、正式にフリーソフトウェアと呼ぼうという動きもある。

第5問:インターネット

なかなか悩ましい設問である。 (設問2)では、最も適切なのはアである。これは当然だろう。しかし、イで書かれたことでも、 無理をすれば可能である。 また、ウの設問で「どのようなメーカーのパソコンでも」という表現があるが、 どうせ設問するならば、実際は「どのようなパソコンのOSでも」というのがいいだろう。 だって、DOS/Vならば、どのようなメーカーだってそんな変わりがないのだから。

第6問:LANからのインターネット接続

IPマスカレードまで出題されるとは、受験生も気の毒である。 マスカレードの意味は、to pretend to be someone or something you are not: (マクミラン英英辞典より)であるから、英語の意味が分かる人であれば、 正答を選べただろう。

第7問:Webを使ったコミュニケーション

Wikiまで出題されるとは、受験生も気の毒である。 私もWikiをやってみたいので、これからプロバイダーを探そう。 なお、Wikiは通常誰でも更新できる。インターネットのWikipedia がそのいい例である。

第14問:情報化投資

選択肢エの解説に、 <「プログラムの行数をもとにソフトウェアの規模を表し、開発工数を見積もる方法」にはココモモデル(COCOMO)などがある> とあるが、これに補足する。 COCOMOの後継である COCOMO II では、なんらかの形で与えられたソフトウェアの規模、 たとえばファンクションポイントから、開発工数を見積もる方法となっている。 つまり、開発工数yを出力とすると、ソフトウェア規模xとパラメータαを入力とするとき、 関数y=f(x、α)の形を与えるものである。

なお、このCOCOMOでは、開発工数から開発期間を算定する式もある。しかし、 その式は驚くべきことに開発技術者の数を入力としていない。つまり、 開発工数から開発期間は自動的に決定され、また開発技術者数もフェーズに応じて自動的に決定される。 COCOMO II では開発技術者数も入力となっている。 そのときは、設問アにあるBrooksの法則があてはまることがわかる。 つまり、「作業の遅れを取り戻すために開発者の人数を増やしても、効率増大は増員人数に比例しない」 ような式になっている。

最後に

すべての問いに対して注釈しようとしたが、私の知識不足もあり、途中で断念した。 解説には、点の知識ではなく、面の知識を身につけることを受験対策・学習のポイントとしてあげている。 しかし、実際には面どころではなく、線でさえ難しい。 まずは関連のある用語を押えることから始めてはどうだろうか。 私の注釈がその一助となれば幸いである。

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MARUYAMA Satosi