企業診断を読む(2005年7月号)

作成日:2005-05-29
最終更新日:

2005年版【中小企業白書】攻略のポイントはここだ

多様な資金調達手法のあり方

擬似資本について、「日本の中小企業の自己資本比率が低い理由の一つとして、 メインバンクからの借り入れが資本的性格を有する資金、 すなわち擬似資本として中小企業の資本を補完してきたことが挙げられる」とある。

あるところで知ったのだが、株式会社三省堂書店の資本金は一千万円、すなわち株式会社の最小資本である。 他にも、規模や知名度のわりに、資本金が少ないところは多くあるだろう。 そうなると、資本とは何か、ということがわかりにくくなる。 資本金というからには、元手として、自分で保持すべきものである。 知り合いの人は、会社を興す必要があり、その資本金を稼ぐ目的のみで株の運用をはじめ、 資本金を得たところで株をやめた、と語っていた。あっぱれである。

擬似資本はモラルハザードを招きやすい。そのため、擬似資本を少なくするための方策がいろいろ述べられている。 そのなかに「コベナンツ」(本稿では「コベンナツ」と誤って記載されている)がある。 「コベナンツ」(covenants)は一般的には契約を表すが、財務に限れば「財務制限条項」を意味する。 財務面での特約、制限が決められ、これが守られない場合にペナルティが課される、というものである。

契約条項によって何らかの制裁が課されたり、インセンティブが与えられたりするのは、 IT分野におけるサービス水準合意(サービスレベルアグリーメント、SLA)などにも見られる。 せちがらい世の中になったともいえるが、努力の結果が報われる、という見方もできるし、 そうであってほしい。

中小企業と人材をめぐる諸課題

「中小企業に多い高齢者就業の特徴」に定年制がない、 定年の年齢が61歳以上である、などの例がある。 これを、本稿では「自社で働いている高齢者を継続して雇用する体制が整っている」 という書き方で結んでいる。しかし実際は「技能や知識の後継を引き継ぐ体制が整っていない」 ことの裏返しであろう。

とはいえ、高齢者が働けるのは中小企業である、という実例はその通りである。 私の知り合いで、60歳過ぎて働いているのはわずかな例外を除いてみな中小企業か、自営業である。 大企業で働いてきて60歳過ぎても働ける人の例外は、大企業で非常に偉くなった人か、特殊技能がある人だけである。

高齢者の強みの一つは人脈である。営業など、OBを活用して成果を上げられる可能性は大きい。 宣伝になるが、私が所属する安全・品質・環境実務研究会で、ある会員がこのOB活用の可能性を示した原稿を発表して、 読者から好評を得たことを記す。


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MARUYAMA Satosi