第1問 次の文章を読んで,下記の設問に答えよ。 景気停滞の打開策として新規事業開発や新産業創出 が注目されている。新規新産業創出は何ら かの意味でイノベーション(新結合)が基礎となる必 要がある。このイノベーションの中心的な役割を担う のが企業家である。企業家についての基礎的な考察を 行った研究者として,シュンベーター(J.A.Schumpeter)が有名である。 (設問1) シュンベーターの初期の見解における企業家の位置 付けについて,最も不適切なものはどれか。 ア 企業家は,多くの人々が看過してきた点に着目 することで5つの「新結合」の可能性を認識し, 実行に移す点にその本質がある。 イ 企業家は,必ずしも発明家である必要はない。 ウ 企業家は,競争的資本主義とトラスト化した資 本主義という高度に発展した資本主義に固有の存 在ではない。 エ 企業家は,新規事業を創出するだけでなく,当 該事業を安定的・循環的に運営していくことまで を一貫して行う点に本質がある。 (設問2) 起業に際して,企葉家は様々な活動を行う必要があ る。シュンベーターの理論において,企業家以外の者 でも分担可能な活動として,最も適切なものはどれか。 ア 権威を示すこと。 イ 資本の一部を提供し,経済的リスクを負担する こと。 ウ 先見性を示すこと。 エ 何をすべさかという決定とそれをどう実行する のかという決定において,イニシアチブをとるこ と。 第2問 次の文章を読んで,下記の設問に答えよ。 ドラッカー(P.F.Drucker)はイノベーションのた めの機会を7つの領域に分けている。7つの領域とは 「予期せざるもの」「調和せざるもの」「プロセス・ニーズ」 「産業や市場の構造変化」「人口構成の変化」 「認識の変化」「新しい知識」である。これらは明確 に分かれているわけではなく多少の重複は見られるが, この順序には意味があり,イノベーションとしての信 頼性と[ ]の大きい順番に並べられている。 (設問1) 文中の下線部の「認識の変化」の説明として,最も 不適切なものはどれか。 ア 認識の変化は具体的なもので,確かめることも, 定義することもできる。 イ 認識の変化は量的に把握できない場合の方が多 いが,量的に把握できるようになった頃にはイノ ベーションの機会としては遅すぎる。 ウ 認識の変化に基づくイノベーションには創造的 模倣が役に立つ。 エ 認識の変化に基づくイノベーションにはタイミ ングの問題がつきまとう。 (設問2) 文中の空欄に入る言葉として,最も適切なものはど れか。 ア 確実性 イ 収益性 ウ 成長性 エ 多様性 オ 認識度 (設問3) 次のaとbの事例は文中の7つの領域のうちのどれ に該当するか,組み合わせとして最も適切なものを下 記の解答群から選べ。
a x社は小規模なカメラ小売店であったが, あるとき社長が地元ラジオ局の番組に出演した。 そのとき店で月に1台ぐらいしか売れない数万円の カメラの紹介を行ったところ,電話が鳴り響き, 瞬く間に完売した。社長はラジオの宣伝効果の凄さを痛感し, ラジオを利用した販売活動を始めた。 当初はカメラ中心であったが, 電気製品も扱うようになり, 当時としては珍しい本格的なラジオショッピング会社へと変貌した。 今では,テレビショッピングの大手企業に成長している。
b Y社の社長は自動車部品を扱う大手企業の米国 駐在員だったとき,最新の三次元CADの設計装 置に偶然出合った。部品製造の基盤ともいえる日 本の金型業界はベテランの職人の腕で支えられて いるが,今後の後継者不足を考え金型業界の将来 に危惧を抱いていた社長は「これは使える」と直 感したという。 この技術を利用して,金型設計製造をシステム 化することによりベテラン職人に頼らなくても高 精度の金型が製造できると考え,Y社を設立した。 その後,金型設計製造のシステム化に成功し, 現在では従業員500人を超える企業に成長してい る。
〔解答群〕 ア a:「新しい知識」 b:「新しい知識」 イ a:「プロセス・ニーズ」 b:「新しい知識」 ウ a:「プロセス・ニ−ズ」 b:「人口構成の変化」 エ a:「予期せざるもの」 b:「プロセス・ニーズ」 オ a:「予期せざるもの」 b:「予期せざるもの」 第3問 研究開発に関する下記の設問に答えよ。 (設問1) 研究開発活動の日本における最近の傾向について, 最も適切なものはどれか。 ア ISOなどの国際機関がとりまとめるデファクト スタンダードはその確立までに時間がかかること からその重要性は一般に大きく薄れた。したがっ て,研究開発のオープン化戦略の意義も低下しつ つある。 イ 多くの産業で新製品の研究開発期間は長期化の 傾向があるが,それとは反対に利益を得られる期 間は短期化している。 ウ 自社だけで研究開発するのではなく,ベンチャ ー企業を買収することも研究開発戦略の一環とし て注目を集めている。 エ 市場の複雑性・不確実性が高まったために,研 究開発活動のチェーンリンクト(連関)モデルや ネットワークモデルなどからリニアモデルへの転 換の意義は一般に高まった。 オ 特許関連法規が世界的に整備されるに伴ってラ イバル企業の模倣阻止の効果が進み,クロスライ センスを目的とした特許取得の意義は低下した。 (設問2) 販売がうまくいかず新製品開発が失敗したといわれ るとき,マーケットインの発想で行われず,プロダク トアウトの感覚で行われていたことがその一因である とされるケースは多い。このように新製品開発がプロ ダクトアウトに陥ってしまう背景を成す記述,もしく は助長すると思われる記述として,最も不適切なもの はどれか。 ア 多くの日本人はイノベーションを「技術革新」 と誤解したため,技術中心でしかイノベーション は成り立たないと思われていること。 イ 技術革新のスピードが速い現在では,新製品に 新技術が導入されていないと時代に遅れると思い 込んでしまうこと。 ウ ドラッカー(P.F.Drucker)が「マーケティン グの理想は販売に関する活動を不要にすることで ある」と提唱したこと。 エ ペンジャミン・フランクリンが言ったとされる 「たとえねずみ取りであっても,優れたものさえ 作れば,門前市を成す」という言葉を信じている ため。 オ ラルフ・ワルド・エマーソンが言ったとされる 「良い新製品を作ることさえできれば,森の中に 家を建てようと,世界がそのドアまでしっかりと した道を作ってくれるだろう」という言葉を信じ ているため。 (設問3) 新製品開発にあたり,技術者出身のベンチャー企業 の社長が陥りやすい失敗の原因として最も不適切なも のはどれか。 ア 新製品開発に関する資金集めにだけ奔走し,新 製品の製造や販売を含めたトータルな資金計画を たてないこと。 イ 新製品開発の予算内で顧客のニーズを聞き入れ た良い製品を作ることが一番大切だと思うこと。 ウ 新製品の機能等に自信がありすぎるあまり,自 社の経営能力を超えて,製品開発から販売までを すべて自社で行うこと。 エ 次から次へと新しい技術に目が行き,新製品を 売り出す前にバージョンアップを繰り返すこと。 オ 発明やもの作りの方が販売や顧客調査よりも面 白いと感じて,販売活動等を避けて発明やもの作 りに専念すること。 第4問 20世紀後半,米国ではシリコンバレーを中心にベン チャー企業の隆盛が見られたが,それらの隆盛を解く キーワードについては現在も様々な論議がなされてい る。その中で近年注目を集めているのが「MOT (Management of Technology)」と「モジュール化」の2つの キーワードである。 「MOT」の論議は技術のみならず経営も分かる人材 の必要性を示し,「モジュール化」の論議はデジタル 技術が急速に発展する中で分業の再構築が迫られてい ることを示している。 (設問1) 「MOT」の時代背景に関する記述で,最も不適切な ものはどれか。 ア MOTは日本には1990年前後に紹介され,通常, テクノロジーマネジメントや技術経営と同義語で 使われる。 イ 日本では,大学にMOT専門職大学院が開講さ れるなど,MOT教育が本格的に導入されたのは 2003年からである。 ウ 米国では1970年代半ばよりスタンフォード大学, MIT(マサチューセッツ工科大学)などの主要大 学でMOT教育が導入され始めた。 エ 米国では1990年代に入り,大学院ビジネススク ールでMOTを学習した人材によるベンチャーの 起業によって次々に新事業が生まれた。 (設問2) 「MOT」の内容について,最も不適切なものはどれ か。 ア 主にプロセスイノベーションについての学問で ある。 イ 技術を戦略的にマネジメントし,経営戦略との 整合性を図るためにトップマネジメントの一員と して置かれるCTO(Chief Technology Officer)に とって不可欠な知識である。 ウ 大企業のみならず,持続的成長を目指す中小企 業やその支援者にとっても有用な知見である。 エ 複合的な知識体系であり,環境,マーケティン グ,投資効率などの視点から戦術の選択とマネジ メントを行うことを主眼としている。 (設問3) 「モジュール化」に関する記述で,最も不適切なも のはどれか。 ア 日本におけるモジュール化の動きはTVゲーム 関連産業等で見受けられる。 イ モジュール化によって同一部品メーカー間の競 争を可能にしたことが,コンピュータ産業のイノ ベーションを速める一因となった。 ウIT等の進歩とともに,複雑なシステムを構成 するモジュール自身がさらに複雑なシステムにな るが,モジュール化はそれ以上進まない。 エ 一つの複雑なシステムを一定の連結ルールに基 づいて,独立に設計されうるサブシステムに分解 することである。 第5問 次の文章を読んで,下記の設問に答えよ。 ハイテク製品と呼ばれる革新的な新製品を受け入れ る顧客層は,下図のように,受入所要時間ごとにある 程度グループ分けすることができるといわれている。 (下図は,ロジャースとムーアの図を参考に作成。)

ジェフリー・ムーア(G.A.Moore)は,各グルー プの間にはタラック(隙間)が存在し,特に,「アー リー・アドプター」と「アーリー・マジョリティー」 との間にある大きなクラックを「キャズム(深い 溝)」と呼び,越えるのに多大なエネルギーを要し, キャズムを越えたものがハイテク分野で財をなし,失 敗すれば水泡に帰すと指摘している。 (設問1) 文中の各グループの中心となる顧客層の特徴につい て,最も不適切なものはどれか。 ア イノベーター:新製品のアーキテクチャーを理 解せずに,また既存の製品に比べてどのような点 が優れているかを考慮せずに,新製品だというこ とだけで購買行動を起こす人たちである。 イ アーリー・アドプター:ハイテク製品を早く採 用する人たちで,ベンダーの実績よりも製品の性 能がもたらすビジネスの飛濯の方に関心がある。 ウ アーリー・マジョリティー:新製品を導入する 際には,先行事例とベンダーの実績を重視する人 たちで実利主義者とも呼ばれている。 エ レイト・マジョリティー:ハイテク製品には少 しおよび腰で,製品の完成度が高まり,ベンダー 間の競争の結果,価格も下がり,日用品のように 扱われる頃に購入する人たちで保守派とも呼ばれ る。 (設問2) 文中の下線部のキャズムを越えようとするときの記 述で,最も不適切なものはどれか。 ア キャズムを越えるとさには,既に獲得している アーリー・アドプターである顧客を徹底的に分析 することは重要で,その分析結果をもとに,アー リー・マジョリティーの顧客の確保を目指す。 イ キャズムを越えるときには,判断材料となるデ ータが少ない環境で行われるため,数値的な分析 よりも情報に基づく直観の方が重視される。 ウ キャズムを越えるときにはマーケットセグメン テーションを行うが,そのとき漠然とマーケット 全体を見るのではなく,マーケットを構成する顧 客に焦点を当てることが大切である。 エ キャズムを越えるときには,特定のニッチ市場 を攻略地点として設定し,経営資源を総動員して そのニッチ市場のシェアの拡大を図ることが重要 である。 第6問 新鋭に事業を立ち上げるときのキーワードとして 「事業機会」「ビジネスモデル」「ビジネスプラン」が あるが,それぞれについて下記の設問に答えよ。 (設問1) 「事葉機会」の認識に関する記述で,最も適切なも のはどれか。 ア アイデアが事業化され,予想利益を超えること が確実になったとき認識される。 イ アイデアが潜在的顧客の不満を満たす新しい製 品やサービスの提供の可能性を伴ったとさ認識さ れる。 ウ アイデアが特許として認められたときに認識さ れる。 エ 顧客に付加価値を提供する過程で競合他社の標 的市場に対するポジショニングが判明したとき認 識される。 オ 顧客のニーズを感じた瞬間に認識される。 (設問2) 「ビジネスモデル」に関する記述で,最も適切なも のはどれか。 ア 成功するベンチャー企業には,必ず共通のビジ ネスモデルが存在する。 イ ビジネスモデルとは,顧客に対して独自の価値 を創造し提供するための事業の仕組みである。 ウ ビジネスモデルとビジネスプランとはパラレル の関係であり,ビジネスプランには必ずしもビジ ネスモデルは必要ではない。 エ ビジネスモデルは,企業の経営資源を活用し顧 客のニーズと企業のコア・コンビタンスの間にギ ャップを生み出す仕組みのことである。 オ ビジネスモデルは,金融機関から融資を円滑に 受けるための仕組みである。 (設問3) 「ビジネスプラン」に関する記述で,最も適切なも のはどれか。 ア 社内コンセンサスを得るためにもビジネスプラ ンは利用される。 イ ビジネスプランとは事業の計画を表したもので, その事業の目標ややり方と定性化された財務デー タとで構成される。 ウ ビジネスプランの縮小版ともいえるサマリーは ビジネスプランの中で最も重要な部分で,具体的 には投資家に対する返済計画の要約が記載されて いる。 エ ビジネスプランは航海の海図に例えられるよう に新規事業には欠かせないもので,海図のように, その様式や記述内容は厳格に定型化されている。 オ ビジネスプランは通常一度作成したら変更はし ないものであるから,できる限り時間をかけ5W 1Hのキーワードで整理して簡潔に表現する。 (設問4) 「ビジネスプラン」の構成要素の中で,不可欠な要 素として,財務計画がある。次の記述で最も適切なも のはどれか。 ア 発生主義会計の限界がしばしば指摘されており, 投資家もキャッシュフロー計算書を重視すること が多い。したがって,揖益計算書や貸借対照表は 形式的に作成されるのみであり,最近はビジネス プランにおいて不必要であると一般にいわれてい る。 イ ビジネスプラン策定プロセスにおいて,事業の 初期段階でのキャッシュのアウトフローが相当の 長期間にわたってインフローを上回ることが明ら かになることが多い。売上数量・単価,売掛金の 回収期間などの前提条件を可能な限り,最良の条 件の下で算定されたデータを作成することで,投 資家の安心を得るべきである。 ウ ビジネスプランの主な目的には,出資者を募る ということがある。出資者のための財務情報を提 供するフレームワークとしては財務会計がある。 したがって,ビジネスプランにおいては基本的に 財務会計のデータを示すべきであり,予算管理や 揖益分岐点分析など管理会計のデータは不必要で ある。 エ ビジネスプランの主な目的は経営上必要な諸資 源を調達することである。したがって,資金調達 の種類や方法を述べることは大切であるが,それ とともに調達した資金の使途も示す必要がある。 第7問 ベンチャーキャピタル(vc)は米国のみならず, 日本においても,ベンチャー企業などの新規開業を増 加させるためには重要な社会基盤であるという見解が 定着しつつある。下記の設問に答えよ。 (設問1) 米国のVCの初期段階に関する記述について,最も 適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。 a 初めてのVCといわれるARD(American Research and Development)は,設立後の数年間は, 投資先企業への追加投資やファンド内での人件費 を賄う必要性からネガティブなキャッシュフロー が続いた。そのため,役員等は投資先企業の技術 と経営に積極的に関与せざるを得なかった。 b 初めて設立されたVCといわれるARD(American Research and Development)の最初の投資は 物理学者とエンジニアが設立した「大学発ベンチ ャー」に対して行われたが,当該企業は株式公開 に至らなかったために,投下した資本は回収でき なかった。 c VCが広く認識されるようになるには,初めて のVCといわれるARD(American Research and Development)の設立から四半世紀近くが必要で あった。このきっかけとなったのが,ある投資先 企業が株式公開し約5,000倍のリターンを得たこ とであった。 d 米国において,第二次世界大戦以前から商業銀 行や投資銀行はハイリスク・ハイリターンと考え られていたベンチャービジネスに対して積極的に 投資を行ってきた。それを補完し,さらにリスキ ーマネーの供給を急増させるためにVCというコ ンセプトが産み出された。 〔解答群〕 ア aとc イ aとd ウ bとc エ bとd (設問2) 日本のVC(投資事業組合を含む)の特徴について 最も適切なものはどれか。 ア 2003年にVCから投資を受けて新規店頭公開し た企業のうちで,リードVC(当該企業の株式保 有比率が最大となっているVC)からの出資比率 の平均は約19%であった。この大口の株式保有を 背景として,経営面への積極的な関与が可能とな っている。 イ 2003年に新規店頭公開した企業のうち,5社以 上のVCからの投資を受けた企業の割合は10%に 満たない。 ウ 2003年に新規店頭公開した企業のうちVCから の投資を受けた企業は70%を超える。 エ 大手金融系VCの多くはITやバイオなど特定 産業・業種に特化して投資している。 オ 大手金融系VCの多くはアーリーステージへの 投資に特化する傾向が一般に見られる。そのため ハイリスク投資となっている。 第8問 次の文章を読んで,下記の設問に答えよ。 創業支援の領域においては,新しいアイ デアや技術をもつ新規事業者を支援するビジネス・イ ンキュベーションに注目が集まっている。先行する米 国においては衰退産業から成長産業へと人材,資金な どを展開していくに当たって,ビジネス・インキュベ ーションは大きな役割を果たしてきたといわれる。 日本においては,平成11年に「新事業創出促進法」 が施行されて以来,インキュベータ(インキュベーシ ョンを目的とした施設,起業家育成施設)の設置は急 増している。 (設問1) 米国のNBIA(National Busiess Incubation Association) によるビジネス・インキュベーションについて の記述で,最も不適切なものはどれか。 ア 2000年の時点では,米国のインキュベーション マネージャーの約4割が博士号を有する専門家で ある。 イ 2000年の時点では,米国のインキュベータの約 8割が民間の設置した営利目的の施設であり,投 資などの資金提供を伴った支援を行っている。 ウ 2000年の時点では,米国のインキュベータは特 定分野に特化したものが全体の約3割を占めてい る。 エ 米国においてインキュベータは2000年には800 か所を超えているが,1996年以降に設置されたも のが全体の6割以上を占めている。 (設問2) 日本のビジネス・インキュベナションの現状につい ての記述で,最も適切なものはどれか。 ア 2000年11月の時点で,日本におけるインキュベ ータは200以上あるといわれる。そのうち非常利 型のインキュベータで専任のインキュベーション マネージャーを配置しているのは2割程度である。 イ インキュベータとは,地域プラットフォームに おける中核的支援機関のことである。 ウ 営利型,非常利型を問わず,第三次産業に参入 しようとしている新規事業者のみを支援対象とし ている。 エ 新規事業者と公設試験研究機関とのリエゾン機 能を果たすことで創業・起業支後を行うことを主 な目的としている。新鋭事業者と大学のリエゾン 機能を果たすTLOとは競合関係にある。 第9問 産業支援や起業支援はマクロレベルの財政政策,金 融政策,それと同時にミクロレベルの個別企業を対象 にしたものが代表的であった。それらに加えてその中 間レベルである産業クラスター(もしくは産業集積) という階層を強調し,それを支援することで,国家レ ベルや個別企業レベルへの波及を目指す産業政策がと られるようになった。言い換えれば,特定地域の産業 競争力を高めようという政策が注目されるようになっ たのである。 上記クラスターの基本的な分析フレームワークの一 つとして,ポーター(M.Porter)のダイヤモンドフ レームワークをあげることができる。そのモデルにお いては,要素条件(投入資源),戦略・競争の状況, 需要条件,関連産業・支援産業という4つの側面から, 企業立地の競争優位性についての分析を行っている。 それぞれの側面の記述について最も適切なものはどれ か。 ア 要素条件(投入資源):天然資源などのインプッ トに関連する条件のことである。地域に最初から備 わっている要素であり,事後的に創出することはで きない性格をもっている。したがって,地域の競争 優位の基礎的な要素である。しかしながら,情報技 術やロジスティクスが発展したことから,経営資源 の世界最適調達が可能となったために,この面から の競争優位は薄れつつある。 イ 戦略・競争の状況:投資環境を整えることによっ て地域の競争を活発にすることは可能である。この クラスター内の競争によってイノベーションは促進 される。 ウ 需要条件:その地域における需要の曳模のことで ある。経済のグローバル化の進展によって,顧客の 囲い込みが重要になっているために,まず,当該地 域の顧客を確保することが重要である。 エ 関連産業・支援産業:サプライヤーなどの関連・ 支援産業が立地することによる部品・サービスの入 手可能性のことである。しかしながら,情報技術や ロジスティクスが発展したことから,経営資源の世 界最適調達が可能となったために,この面からの競 争優位は薄れつつある。 第10問 平成15年には経済産業省の「スピンオフ研究会」な どで検討され,新規事業・新産業創出の新しいスタイ ルとして注目を集めている,スピンオフ型の起業に関 する記述で,最も適切なものはどれか。 ア 事業の再構築のためには特定の事業から撤退する ことが多い。その場合には新しい事業体制の下では 充分に活用されず埋没してしまう技術やノウハウが 生じる。それらを活用するために,独立した組織を 立ち上げることを言う。このとき母体企業との間で 資本関係や取引関係を維持する点で,まったくの一 から始める起業ではないために,急成長を遂げる可 能性をもつ起業スタイルである。 イ 事業の再構築のためには特定の事業から撤退する ことが多い。その楊合には将来有望であるのにも関 わらず,中止しなければならないプロジェクトもあ る。当該事業に関わっていた研究者などがやむを得 ず退職し,独立することをいう。このとき基本的に は出身企業とは取引がないことが多いが,まったく の一から始める起業ではないために,急成長を遂げ る可能性をもつ起業スタイルである。 ウ 大学などの研究機関においては,未活用の知的資 産が眠っていることが多い。しかしながら,それら の知的資産を事業に結び付けることは経営ノウハウ などを持たない研究者だけでは難しいことがある。 そのためにTLOが中心となって,事業化のための ノウハウを持つ人材を企業から出向もしくは転籍し てもらうことで,事業化を進める手法をいう。企業 側からすると,余剰人員を活用することと,新技術 を獲得できるメリットを持つ起業スタイルである。 エ 大企業においては既存事業との関係や見込まれる 市場の大きさから判断して,未活用の技術的な資源 を抱えていることが多い。それらの特許権などを中 小企業など第三者が購入して,新規事業として展開 することを言う。このとき技術的サポートを受けた り,大企業で開発した技術であるという信用がある ことから,急成長を遂げる可能性をもつ起業スタイ ルである。 第11問 次の文章を読んで,下記の設問に答えよ。 近年,(1) 開業率の長期的な低下傾向が問題となって いる。「中小企業白書2003年版」によれば,その主な 要因の一つは事業者対被雇用者収入比率の低下である。 これは,被雇用者の年収(現金給与総額)に対する自 営業者の年収(個人企業の営業利益)の比率として計 算されている。その比率は,「製造業」,「卸売・小売 業,飲食店」,「サービス業」の平均で見て,1970年代 前半までは1.00を上回っていたが,それ以降は低下傾 向にあり,2001年には約0.5まで低下した。このよう に,自営業者の収入が被雇用者の収入を下回り,長期 的には低下傾向にあるため,被雇用者にとって独立開 業が経済的魅力を失ってきているのである。もっとも, (2) 事業者対被雇用者収入比率とその推移には業種によ る違いが大きく,これが業種別の開業率の違いに影響 していると考えられる。 (設問1) 文中の下線部(1)に関して,高度成長期後半(1966〜 1972年平均)から最近(1999〜2001年平均)までに, 開業率が非一次産業の平均よりも大きく低下した業種 の組み合わせはどれか。 なお,開業率は総務省「事業所・企業統計調査」に 基づき,事業所を単位として算出されたものとする。 ア 卸売業と小売業 イ 卸売業とサービス業 ウ 製造業と卸売業 エ 製造業と小売業 オ 製造業とサービス業 (設問2) 文中の下線部(2)に関する記述の中で最も適切なもの はどれか。 ア 業種別に事業者対被雇用者収入比率を見た場 合,1985年以降「卸売・小売業,飲食店」の比率 は「サービス業」の比率より概ね高く,下回った 年度は2回しかない。 イ 業種別に事業者対被雇用者収入比率を見た場合, 1985年以降「製造業」では1.00を超えた年度が複 数回あるが,「サービス業」では1度もない。 ウ 業種別に事業者対被雇用者収入比率を見た場合, 1990年代に他の業種より大きく低下したのは「サ ービス業」である。 エ 業種別に事業者対被雇用者収入比率を見た場合, 「卸売・小売業,飲食店」の1985年の比率と2001 年の比率は,ともに0.54である。 オ 業種別に事業者対被雇用者収入比率を見た場合, 「サービス業」の低下が「製造業」に比べて顕著 である。
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