2004年度 中小企業診断士一次試験問題 経済学

第1問
 次の国民所得の概念および定義に関して,最も適切
なものはどれか。
ア GDP(国内総生産)は,各生産段階において作り
 出された付加価値の合計に相当し,付加価値は,各
 生産段階における産出額と中間生産物の投入額を加
 えたものに等しい。
イ GDPは,国民総生産から固定資本減耗を差し引
 いたものである。
ウ 帰属計算の考え方によれば,農家が自家消費のた
 めに生産した農作物はGDPに計上される。
エ 生産面から見たGDP,分配面から見たGDP,支
 出面から見たGDPが事前的に等しくなることを,
 「三面等価の原則」と呼ぶ。

第2問
 ここ数年,趨勢的に消費者物価指数や国内企業物価
指数が下落し,日本経済はデフレ経済の状況下にある
といえる。デフレーションに関する説明として,最も
不適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。
  1. 消費者が物価のさらなる下落を予想すれば,買い控えの傾向が強くなる。
  2. デフレ経済下では,名目GDPの成長率が実質GDPの成長率を下回ってしまう。
  3. デフレの進行は,実質利子率を低下させる効果を持つ。
  4. デフレは,実質賃金を上昇させ,企業収益を増加させる。
  5. デフレは,預貯金の実質的な価値を高める一方, 実質的な債務負担を増加させるように作用する。
 〔解答群〕
  ア aとd  イ bとc  ウ bとe
   エ cとd  オ cとe

 第3問

 雇用統計に関する下図を見ながら,その説明として
最も適切なものを選べ

出所:『経済財政白書』(平成15年版)

ア 欠員率の上昇は人手不足を意味し,求職が求人を
 上回っている状態にある。
イ ここ数年,統計的には,人手不足の傾向が見らわ
 るものの,失業率が上昇し,雇用のミスマッチが発
 生している。
ウ 通軋 景気拡大とともに,欠員率と失業率がとも
 に上昇するという関係が見られる。
エ 図中において,左下(南西)の方向に行くほど,
 人手不足が拡大し,失業率が低下することを示して
 いる。

第4問
 次の景気動向指数に関する説明に関して,最も適切
なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。
 ただし,文中,DIとあるのはディフュージョン・
インデックスの略称である。
 a 一致系列のDIには,鉱工業生産指数や有効求人
 倍率(除学卒)などが含まれる。       
 b 一般に,一致系列のDIが50%を上回れば,景気
 は拡大局面にあるといえる。
 c 先行系列のDIには,法人税収入や完全失業率な
 どが含まれる。
 d 遅行系列のDIには,新設住宅着工床面積や新規
 求人数などが含まれる。
 〔解答群〕
   ア aとb  イ aとd  ウ bとc
   エ cとd

第5問
 次の投資支出に関する説明に関して,最も適切なも
のの組み合わせを下記の解答群から選べ。
 a 加速度原理によれば,生産量の増加速度が大きい
 ほど,投資支出が小さくなる。
 b ケインズの投資理論によれば,投資の限界効率が
 利子率を上回る場合に,投資が実行される。
 c ストックとしての投資支出の増加は,フローとし
 ての資本量が増加することを意味する。
 d 投資の利子弾力性が小さいほど,貨幣供給拡大に
 伴う所得拡大効果は大きい。
 e 投資の利子弾力性が小さいほど,利子率の低下に
 伴う投資支出の拡大幅は小さい。
 〔解答群〕
   ア aとc  イ aとd  ウ bとc
   エ bとe  オ dとe

第6問
 財政の役割と機能に関する次の文章を読んで,下記
の設問に答えよ。
 政府は,政府支出や租税収入の水準を変更すること
を通じて,完全雇用や物価の安定を実現しようとする。
景気調整を目的とした財政政策は,①裁量的な財政政
策と呼ばれている。また.政府が意図的に政府支出や
租税収入の変更を行わずとも,財政は自動的に景気を
安定させる機能を持つといわれる。これを②自動安定
装置あるいはビルト・イン・スタビライダーと呼ぶ。
(設問1)
 文中の下線部①の裁量的な財政政策に関する説明と
して,最も適切なものの組み合わせを下記の解答群か
ら選べ。
 a インフレ・ギャップが発生している場合,物価
  の上昇を抑制するために,政府支出の拡大を図る
  ことが求められる。
 b 限界貯蓄性向が大きいほど,政府支出乗数と租
  税乗数はともに大きくなる。
 c 乗数理論によれば,政府支出の所得拡大効果は,
  減税の所得拡大効果よりも大きくなる。
 d デフレ・ギャップを解消するために,減税を実
  施することは,総需要刺激策の1つとして有効で
  ある。
〔解答群〕
  ア aとb  イ aとd  ウ bとc
  エ cとd
(設問2)
 文中の下線部②の自動安定装置に関する説明として,
最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選ベc
 a 好況期には,失業保険給付や生活保護費のよう
  な社会保障移転が増加する。
 b 均衡予算乗数の理論から,増税によって政府支
  出の増加を賄うと,政府支出の増加幅と同じだけ
  所得も拡大する。
 c 累進的な所得税は,不況期に可処分所得の減少
  を抑制し,消費の減退を食い止める。
 d 累進的な法人税は,不況期に法人税の徴収額を
  減少させる。
〔解答群〕
  ア aとb  イ aとd  ウ bとc
  エ cとd

第7問
 次の文章を読んで,下記の設問に答えよ。
 古典流のマクロ経済理論とケインズ派のマクロ経済
理論を対比したとき,大きな相違点は,貨幣市場と労
働市場のとらえ方に求められる。貨幣市場の分析に関
して,古典派のケースでは,貨幣数量説を前提とする。
貨幣数量説では,貨幣需要は所得に依存するという考
え方を採用している。一票全雇用を仮定すれば.皆幣の
中立性が成り立ち,名目貨幣供給が増加すると,
[A]する。他方,ケインズ派の流動性選好理論に
よれば,貨幣需要は,所得のみならず利子率の水準に
も依存する。貨幣需要は,[B]とともに増加する。
 労働市場に関して,古典派のケースでは,物価と名
目賃金の伸縮性を仮定する。このケースでは,完全雇
用が実現するように,実質賃金の水準が決まる。また,
縦軸に物価,横軸に生産量(総供給)をとると,総供
給曲線が垂直になる。他方,物価は伸縮的であるが,
名目賃金は硬直的であるというケインズ派のケースで
は,物価の上昇は実質賃金の下落と雇用量の拡大を引
き起こし,生産量を増加させる。したがって,このよ
うなケースでは,総供給曲線は右上がりに描かれる。
(設問1)
 文中の空欄Aに入る最も適切なものはどれか。
 ア 雇用量が同率で増加
 イ 実質貨幣供給が同率で増加
 り 実質投資支出が同率で増加
 エ 実質利子率が同率で上昇
 オ 物価水準が同率で上昇
(設問2)
 文中の空欄Bに入る最も適切なものはどれか。
 ア 所得の減少ならびに利子率の上昇
 イ 所得の減少ならびに利子率の低下
 り 所得の増加ならびに利子率の上昇
 エ 所得の増加ならびに利子率の低下
(設問3)
 文中の下線部に関し,総供給曲線の右方へのシフト
を引き起こす要因として,最も適切なものの組み合わ
せを下記の解答群から選べ。
 a 技術進歩
 b 資本ストックの減少
 c 中間投入される天然資源の価格上昇
 d 名目賃金の下落
〔解答群〕
  ア aとc  イ aとd  ウ bとc
  エ bとd

第8問
 次の表中の空欄A,B,Cは,文中の空欄A,B,C
とそれぞれ対応している。
 表中と文中の空欄A〜Cに入る最も適切なものの組
み合わせを下記の解各群から選べ。



 2003年現在,日本銀行はいわゆる金融の量的蔵和政
策を採用し,[A]の拡大を囲っていることがわか
る。しかし,[A]の増加にもかかわうず,[B]
の減少が見られるために,信用創造のプロセスが機能
していないといえる。それゆえ,[A]が大幅に増
加しているのに対して,[C]の増加はわずかにと
 どまっている。

 〔解答群〕
 ア A:ハイ・パワード・マネー(マネクリーベース)
   B:国内銀行貸出金  c:マネーサプライ
 イ A:ハイ・パワード・マネー(マネタリーベース)
   B:マネーサプライ  c:国内銀行貸出金
 ウ A:マネーサプライ  B:国内銀行貸出金
   C:ハイ・パワード・マネー(マネタリーベース)
 エ A:マネーサプライ  B:ハイ・パワートマネ
   ー(マネクリーベース) c:国内銀行貸出金
第9問
 下図は,ある小国の輸入競争財の市場を表したもの
であり,DD′は需要曲線,SS′は供給曲線である。い
ま,国際価格P0のもとで輸入が行われているが,政
府が単位当たりr円の輸入関税を課し.国内価格が
(P0+r)に上昇したとしよう。図の説明として,最
 も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。


 a 関税が課せられた結果,全体としての総余剰の減
 少分は三角形FHJと三角形GKLを加えたものに
 等しい。
 b 関税の賦課によって,消費者余剰と生産者余剰は
 ともに増加している。
 c 関税の賦課により,輸入量は(Q0−Q1)から
(Q3−Q2)に減少するが,国内生産者の保護という目的
 は達成されない。
 d 自由貿易下における総余剰は,三角形DLP00と三
 角形SSHP0を加えたものになる。
 e 政府は,四角形JXQ3Q2に相当する関税収入を獲
 得する。
 〔解答群〕
   ア aとd  イ aとe  ウ bとc
   エ bとd  オ cとe
第10問
 次の文章を読んで,下記の設問に答えよ。
 下図は,外国為替(ここではドル)の需要と供給を
示している。一般に,外国為替の需要と供給は,国際
間における貿易取引や資本取引によって発生するが,
ここでは単純化して,貿易取引のみが行われていると
考える。縦軸は為替レートを表し,上に進むほど円
安・ドル高を意味する。横軸は外国為替の需要量・供
給量を表す。いま,外国為替の需要曲線がβ,供給
曲線がβとして描かれている。
 この場合,外国為替の需要と供給を均衡させる為替
レートはβ0に決まり,貿易収支の均衡が実現する。
しかし,耳為替レートがガ1の水準に位置しているとき,
貿易収支は黒字になる。したがって,為替レートは円
 高・ドル安の方向へと進み,β0まで為替レートが調整
 されると,外国為替市場が均衡する。
  ここでは,外国為替市場における需要と供給の関係
 に着目して為替レートの変動・決定を見たが,為替レ
 ートの決定理論には,.各購買力平価説や金利平価説な
 どがある。


 (設問1)
  文中の下線部①に関して,貿易収支が黒字の場合,
 外国為替市場はどのような状況にあると考えられるか
 最も適切なものを選べ。
  ア 円の超過供給とドルの超過供給
  イ 円の超過供給とドルの超過需要
  り 円の超過需要とドルの超過供給
  エ 円の超過需要とドルの超過需要
 (設問2)
  文中の下線部②に関して,購買力平価説に基づく為
 替レートの変動を説明したものとして,最も適切なも
 のはどれか。
  ア 他の条件を一定として,アメリカの所得水準が
   増加すると,為替レートは円安・ドル高になる。
  イ 他の条件を一定として,アメリカの物価水準が
   上昇すると,為替レートは円安・ドル高になる。
  り 他の条件を一定として,日本の所得水準が増加
   すると,為替レートは円安・ドル高になる。
  エ 他の条件を一定として,日本の物価水準が上昇
   すると,為替レートは円安・ドル高になる。
 第11問
  寡占企業(企業Aと企業B)の生産戦略について
 次のようなペイ・オフ表が想定されるものとする。こ
 の表におけるナッシュ均衡を下記の解答群から選べ。

〔解答群〕
 ア 企業A:生産量を抑制しない。
   企業B:生産量を抑制しない。
 イ 企業A:生産量を抑制しない。
   企業B:生産量を抑制する。
 ウ 企業A:生産量を抑制する。
   企業B:生産量を抑制しない。
 エ 企業A:生産量を抑制する。
   企業B:生産量を抑制する。

第12問
 所得の不平等度に関し,下記の設問に答えよ。
(設問1)
 下図の曲線Aと曲線Bは,それぞれA国とB国の
人口の累積百分比と所得の累積百分比の関係を示した
ローレンツ曲線である。その説明として最も適切なも
のの組み合わせを下記の解答群から選べ。
 a A国は,B国より所得の不平等度が大きい。
 b A国は,B国より所得の不平等度が小さい。
 c 各国における税あるいは社会保障による所得再
  分配は,それぞれの国の曲線を上方にシフトさせ
  る働きがある。
 d 各国における税あるいは社会保障による所得再
  分配は,それぞれの国の曲線を下方にシフトさせ
  る働きがある。


〔解答群〕
  ア aとc  イ aとd  ウ bとc
  エ bとd
(設問2)
 所得の不平等度を表す指標として,ジニ係数がある。
この係数が高ければ高いほど,所得の不平等が大きい。
日本におけるジニ係数について,最も適切なものの組
み合わせを下記の解答群から選べ。
 a 人口構成の高齢化に伴い,国全体のジニ係数は
  高くなる。
 b 人口構成の高齢化に伴い,国全体のジニ係数は
  低くなる。
 c 年齢層が高くなればなるほど,年齢別のジニ係
  数は高くなる傾向がある。
 d 年齢層が高くなればなるほど,年齢別のジニ係
  数は低くなる傾向がある。
 〔解答群〕
  ア aとc  イ aとd  ウ bとc
  エ bとd

第13問
 いわゆる外部性により,社会的費用が発生している
場合について,最も適切なものの組み合わせを下記の
解答群から選べ。
a 市場需要曲線と私的限界費用によって決定される
 供給量は,社会全体にとっての限界費用と限界便益
 が等しくなる水準を上回る。
b 市場需要曲線と私的限界費用によって決定される
 供給量は,社会全体にとっての限界費用と限界便益
 が等しくなる水準を下回る。
c 負の外部性が存在する場合,所有権を適切に定義
 することで解決可能なことを示したのが,コースの
 定理である。
d 負の外部性が存在する場合,政府による直接的な
 排出量への統制により解決可能なことを示したのが,
 コースの定理である。
e 負の外部性が存在する場合,政府による補助金活
 用により解決可能なことを示したのが,コースの定
 理である。
〔解答群〕
  ア aとc  イ aとd  ウ bとc
  エ bとd  オ bとe

第14問
 屈折需要曲線の理論に関して,最も適切なものの組
み合わせを下記の解答群から選べ。
a この理論は,自社製品の価格引下げに対して,ラ
 イバル企業が値下げを行うことを想定している。
b この理論は,自社製品の価格引上げに対して,ラ
 イバル企業も値上げを行うことを想定している。
c この理論では,わずかな平均費用の上昇に対して
 も,企業は価格を変更する。
d この理論では,わずかな限界費用の上昇に対して,
 企業は価格を変更しない場合がある。
〔解答群〕
  ア aとc  イ aとd  ウ bとc
  エ bとd

第15問
 需要と供給の価格弾力性について,下記の解答群か
 ら最も適切なものの組み合わせを選べ。
 a 需要の価格弾力性が高いほど,価格の限界費用か
  らの乖離度は大きい。
 b 需要の価格弾力性が低いほど,価格の限界費用か
  らの乖離度は大きい。
 c 短期的な供給の価格弾力性より,長期的な供給の
 価格弾力性の方が大きい。
 d 短期的な供給の価格弾力性より,長期的な供給の
  価格弾力性の方が小さい。
 〔解答群〕
   ア aとc  イ aとd  ウ bとc
   エ bとd

 第16問
 ある企業は,x 財を生産し,その費用関数(C)が
 以下の式で表されるとする。また,この企業はプライ
 ス・テイカーであり,x 財の価格が5であるとすると
 その最適な供給量(x*)はいくらか。x*が取りうる
 範囲として,最も適切なものを選べ。
   C=x2+x+2
 ア 0<x*≦1
 イ 1<x*≦2
 ウ 2<x*≦3
 エ 3<x*≦4
 オ 4<x*

 第17問
 公正報酬率規制下にある企業が,過剰な設備を持つ
 傾向にあることを表す概念はどれか。最も適切なもの
 を選べ。
 ア アバーチ・ジョンソン効果
 イ インセンティブ強度原理
 ウ ジプラの法則
 エ ハービッツの基準
 オ ラチェット効果

 第18間
 市場に多数の企業が存在していなくとも,替在的な
 参入の脅威によって競争原理が働く市場のことを表す
 言葉として最も適切なものはどれか。
 ア 過剰供給市楊
 イ 完全競争市場
 ウ 公共財市場
 エ コンテスタブル市場
 オ レモン市場

 第19問
 潜在的参入者に対し,市場に参入しても得られる利
潤が少ないことを理解させるため,既存企業が限界収
 入と限界費用が等しくなる生産量よりも多く生産する
 戦略を示す概念として,最も適切なものはどれか。
 ア 価格差別化戦略
 イ 制限価格付け(limit pricing)
 ウ トリガー価格戦略
 エ ベルトラン=ナッシュ戦略
 オ 略奪的価格付け(predatory pricing)

 第20問
 消費者は,貯蓄を通じて,現在の消費水準と将来の
 消費水準の最適な配分を模索する。下図では,現在の
 消費水準と将来の消費水準の間の予算制約線が,AB
 で表されている。利子率が上昇した場合,所得効果と
 代替効果を最も適切に表すものはどれか。


ア 所得効果E0→E1 代替効果E1→E2
イ 所得効果E0→E2 代替効果E2→E1
ウ 代替効果E0→E1 所得効果E1→E2
エ 代替効果E0→E2 所得効果E2→E1
オ 代替効果E0→E2 所得効果E2→E1

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MARUYAMA Satosi