01『出発編(覚醒)』


2001年4月27日。

「ハァ・・・ハァアアア・・・」
 


「コ、コイツはスゲェぜっ!
3メートル先に120インチの大画面が
あるような感じっ!
って説明書に書いてあったよっ!」


そんなこんななヘッド・マウント・ディスプレーで
ヴァーチャル空間にトリップ中の
多摩川ぷう太氏(27歳)

3メートル先に120インチの大画面が
あるような感じでいろんなビデオを楽しむぷう太氏。

「あーう! つかめそうだよ!
つまめそうだよ!

つまんでもいい?

つまんでもいいのかい?

ほんとうかい?」
 

なんのビデオを見ているのやら。

「ちょっと! ぷう太兄さんっ!
声出さないでって言ったでしょっ!
もーーっ!」

ラジカセでテレビからじかに「ザ・ベストテン」を
録音している女、多摩川ぷう子(22歳)。

マッチの『情熱熱風せれな〜で』のサビの部分に
ぷう太氏の「つまんでもいいのかい?」が重なり
なんとも言えないハーモニィー。

『ああじょおねっつぅねっえっぷぅう〜せっれっなぁ〜あでっ♪(つまんでもいいのかい)』

歌詞カードに書くとおそらくこんな感じに。

「兄さん! 聞いてるの!? 
録音してるんだから喋らないでって言ったでしょ!?」

「あああ〜〜・・・ティッシュ! ティッシュどこ!?」

3メートル先に120インチの大画面がある感じな
ヘッド・マウント・ディスプレーをつけたまま
手探りでティッシュを探すぷう太27歳。
まるでやすしだ。
「メガネメガネ・・・」とやるときのやすしだ。

「・・・・・・・・・・兄さん・・・私・・・もう・・・」
 
 
 
 

〜30分後〜


「ふぅ〜〜〜。 いや〜〜まったく。
3メートル先に120インチの大画面の迫力ってばすごいなぁ。」

実際はそんなに思ったほどすごくなかったけど
買って損したと思いたくないので
『3メートル先に120インチの大画面』
という説明書中のフレーズを連呼して
自分に言い聞かせるぷう太氏。

「さすが3メートル先に120インチの大画面だなぁ。 いやーまったく。」
「なぁぷう子。」

「・・・・・・ぷう子?」

「・・・・・・・ぷう子??」

3メートル先に120インチの大画面のヘッド・マウント・ディスプレーを
はずしたぷう太の目の前から、ぷう子は忽然と姿を消していた。
 
 
 
 
 
 
 
 

「ぷう子は『あっち側』へ行っちゃったですよ。」
 
 
 
 
 

「え? 誰?」


「僕はナゾドウブツ。 ナゾのドウブツなのですよ。」
 

「ナゾドウブツ? 『あっち側』? ・・・どうゆうことか説明してくれないか?」
 

「世の中には『こっち側』の世界と『あっち側』の世界があって、
それらはけして交わることなく並行して流れているですよ。」
 

「よくわからないな。
ぷう子はもう戻ってこないってこと?」
 

「いやー、どうだかねぇ。(ニヤリ)」
 

「やれやれ、まいったな。」
そう言ってぷう太は外に出てジョギングし、プールで軽く泳いでから
家に帰りシャワーを浴び、ブラームスを聴きながら
シャツにアイロンをかけて、
にんにくのパスタと簡単なサラダを作って
ビールを飲みながらそれらを食べた。

「やれやれ、またあそこに行かなくてはならないのか。」
 
 

今回の『多摩川ぷう太ドッペルゲンガー』は
村上春樹風だ。
 

わかりにくいなァ・・・チャオ。
 
 



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