半人前ウナギ


 狂乱の(?)バーベキュウから一夜が明けた翌朝.
 7時半、眠たい目をこすりつつ、我々お泊まり隊はウナギを求めて出発した.大分から来たさんは僕らと別れて都心に向かうことになっていたため、みんなでお見送りすることにした.

 環八まで約4キロのパレード.隼5台で甲州街道上り線を疾走していく…と、対向車線からパッシングを喰らう.何だ? あ、またパッシング.前方の空気が何やら不穏…と思ったら、ネズミ取りだっ! 一斉に減速(このへんはさすがブサ乗りだなぁ…)、測定ラインを時速40キロで越え、ことなきを得た.(その後、別に話題にもならなかった.みんな慣れすぎ…)

 環八との交差点で真さんとお別れ.彼はこれからまだ2泊もツーリングが続く.お気をつけて(^^)/~~~
 4羽となった隼は環八を南下.用賀入り口ですでに待ち合わせの8分前.こりゃ完全に遅刻だわ(^^; ここからエビバーまではフリー走行.幹事があんまり遅れるのも何だから、少し急いで行こうか….アクセルを、かくん・がぁっ〜と開けてフロントリフト(最近練習中なのだ)、一気に加速して東京インターまでの6kmを駆け抜けていく.ふとミラーを見ると、やはりというか、見慣れた青ブサがぴたりと後方に付けていた….

 晴れの日の週末ともなるとエビバーも混んでいたが、あふれるバイクの中から隼の一団を見つけるのは造作ないことだった.朝駆け隊ののほほんさん、あらせさんにご挨拶(遅れてすみません(^^;).昨晩お友達のお家に泊まったTAKAさん、朝イチで自宅に寄ってから来たポン太さんにも再会.
 やがてゆずさんが到着したが、何やら様子がおかしい.「黒びーさんが、通り過ぎちゃったみたいです〜」 えぇぇっ? なんでもあおってきたBMWに熱くなって、そのままバトルしていってしまったと.…いきなり波乱含みだなぁ.
 だれも黒びーさんの携帯知らないし、まぁ仕方ないね.そのうち帰ってくるだろう、とみんな全く心配していない様子.ルートの相談などしているうち20分ほどすると、黒びーさんの黒ブサが帰ってきた.やれやれ(^^;

Entry List(敬称略)
 ■あらせ:ガンメタブサ:from 愛知
 ■霧湖:青ブサ:from 愛知
 ■黒びー:黒ブサ:from 愛知
 ■TAKA:青銀ブサ:from 川崎
 ■NabeR:BMW 1200RS:from 愛知
 ■のほほん:青銀ブサ:from 川崎
 ■ぽん太:紺ブサ:from 川崎
 ■ゆず:紺ブサ:from 福島
 ■PoN:紺ブサ:from 調布
(愛知県人4人、福島県人1人.あと帰っちゃったけど大分県人1人とは….遠方から、よくも集まってくれたものだ)

 今日のお目当ては、三島は桜屋のうなぎ.もちろん高速で行けばすぐなのだけど、それではつまらない.箱根から西伊豆にかけて峠道をたっぷり堪能し、それから遅いお昼を食べに行く計画だ.

 さぁ、では出発しよう.高速は千鳥で移動.人数が9人もいるので、5人と4人のグループに分けてみた.
 厚木から小田厚に入る.渋滞こそしていないが、車が多いのでペースが上がらない.車の流れにのり市民の速度で流す.
 料金所先の、小田原P.A.で一旦休憩.何しろ日差しが強く、まだ9時だってのにものすごく暑くなってきている.こりゃ早く山上がっちまったほうがいいな….早々にバイクに跨り、出発しようとしたところトラブル発生.黒びーさんが発進できずにいる.「オーバーヒートしちゃったぁ」 えぇぇ?でもさっきまで100キロで走ってたし、すぐエンジン切ったし、なんでオーバヒート? みなで様子を見に行く.キーを回してもセルを回るのにたしかにエンジンがかからない.…あれ? キルスイッチが入ってるじゃないか〜. なぁんだ! 沸き上がる「いぇ〜い」「あ〜あ、やっちゃった!」&拍手に、黒びーさんは頭を掻いてました.

 さぁ気をとりなおしていくぞ〜! まず1グループ(勝手に命名、のほほんさん先導)の5人が出発.続いて2グループ(僕が先導してました)も発進.車影もまばら、よぉし行きますぞ!
 アクセルをぶぃんと開けて、ちらりとミラーを見ると…誰もついてきてない.あれ、とばしすぎたかなぁ??とか思ってたら、それどころじゃなかった.遠くから、赤色灯を回した白バイが2台、追いかけてくる! わぁ やっちまったか…(5月に捕まったばかりなのに).慌てて60km/hまでスピードダウン.首をすくめて待っていると、白バイは僕に並び(一瞬の指導)、そのあとすぃ〜っと行ってしまった(今日は見逃してやるぜ)
 ホ──────ッ. あぁ良かった.でも1グループは、大丈夫かな? 減速のせいで、もう1グループは見えないところまで行ってしまっている.僕はゆっくりのまま後続を待ち、編隊を組み直すと、また加速を開始した.(後で判明したが、1Gもちゃんと後ろを見ていて無事だったようだ)
 #交通機動隊って、夜間と高速はクルマに乗ってるんじゃなかったっけ? 小田厚は自動車道路だから、白バイも回っているのかな?

 小田原からターンパイクを一気に上り、箱根山系大観山へ.前日(7月30日)リヌーアルオープンしたばかりの大観山ドライブイン(しばらく倒産休業状態だったのだ)では、この日BMWの試乗会をやっていた.黒びーさんは、これをお目当てにしていて試乗を希望していたので、それならばと霧湖さん、ぽん太さんと一緒に僕も試乗してみることにした.


 僕が選んだのは1200Rのほう.走行前にスタッフによる説明を受けてから15分ほどグルリ.教習所出てから隼以外のビックバイクに乗ったの初めてなので、嬉しい、楽しい(^^).まぁ実際のインプレッションとしては軽いのと(ブサより、という話)、アップハンドルのせいか、入力に対する反応が機敏.あと、サスの固さが手元のボタンで操作できたり、ABSがついていたり、さすが高級車だけあって機能は豊富.でもむしろそういうとこは好きになれませんでした…(電子制御は最小限がいいのです)

 さて目的地はまだ遠い.こないだは霧で残念した伊豆スカイラインにリベンジ! 亀石峠のP.A.(パーキングエリア)までのフリー走行となった.前回同様僕は骨拾い(最後尾スタート).今日の伊豆スカは晴れて霧もなく最高に気持ちイイ…のもつかの間、なんか曇ってきたぞ、涼しくなってきたぞ….でもまぁ、車も少なくて、久々に気持ちの良いコースを堪能することができた.
 転倒者もなく、全員で亀石峠P.A.に集合.またもやワガママを云って、みんなのブサの方を並べて貰うことにした.

 パチリ、パチリ.うむ、やはり隼はスシヅメに限る(謎


 …なんて撮影をしていると、突然背後からバチ、バチ、云う音が.はて?とふりむくと、わずか30m後方の道路上にシブキを上げて雨粒が踊ってる.でもここは何ともない.え、これどういうこと〜?と理解が追いつくより早く、雨の境界線がこちらに近づいてきた!! 前線は秒速3mほどで接近してくる.みな悲鳴をあげて大事な荷物を確保、そのままP.A.施設の屋根の下へ逃げ込んだ.


 ぜぃぜぃ、はぁはぁ.1分もしないウチに、このザマ.
 ブラザー走る! でも携帯水没…


 まぁあせっても仕方がない.小一時間ほどまったりと休憩.あーだこーだと悩む時間はいっぱいあったので、この先のルートを相談(ゴールしか、決まっていないのです)朝駆けの時とは違う道を走り、冷川ICから県道59号を通って仁科峠に出ることにした.雨は降ったり、やんだり、また降ったり.キリがないので、一瞬雨があがった隙に出発.途中カッパをきたりするも、山を下りはじめたら、なんかピーカン(晴れのこと)で、結局降っていたのは山の上だけのようだった.
 さて県道59号は町(というかせいぜい集落だけど)の中を抜けたり、川沿いを上っていったり、変化に富んでいて面白い.林道めいたところがあったり、わさび沢があったり、と、これぞ伊豆!というべき楽しい道であった.切り返しの多い、リズムの良いワインディングがまたステキ.(この辺は評価の分かれるところみたいだけど…)

 先導が道を知らないため(もちろん僕が、です)、何度か止まって道を確認しながらなんとか仁科峠に到着.そしてここでまたトラブル発生.もちろん…黒びーさんだ(笑

 なんとタイヤに極太の針金が貫通してる.しかもヨコ向きに.いったい、どうやったらこんな刺さり方するんだ?.どうもこの人にはネタの神様が憑いているとしか思えなくなってきた…(いや、彼自身が神なのかも知れぬ…)
 抜くか抜かないか合議の末、大丈夫だろうと結論.えいやっ!とばかりに鉄棒を抜いてみると….果たしてエア漏れもなく、大丈夫であった(^^).無事トラブル解決したし、お茶にしよう.
 ここの名物は、しぼりたての牛乳をたっぷり使ったソフトクリーム.…なのはいいが、いい年をした男だらけの集団が、おそろいでソフトクリームをなめ回している姿は、傍目ちょっと不気味だったのかも知れない.

 さてこの時点で既に13時半.ウナギ予定時刻は14時であったが到底間に合うわけがない.でも甘いものを食べたから、少し元気が出てきた.
 ここから西伊豆スカイラインを北上! 西伊豆スカイラインは中高速の峠道だけど、車はいないし、見晴らしは良いし、ここも最高のコース.みんな県道59の小半径のカーブでたまっていた鬱憤を晴らすように、のびのびと走っていた.
 達磨山山頂で、小休止.休んでばかりじゃないか、と思う無かれ.バイクを乗るときにはやっぱり休憩が大事.特に峠道のように集中力が必要な道では、少し走ったら休む、くらいのペースのほうがいい.
 木陰のベンチの上でも1人のブサライダーがおヒルネ中だった.もし起きてたら一緒に行こうよって誘ったんだけどなぁ….

 達磨山から下りると、あとは国道136号で三島まで.一般車も多い.山を下りてぐっと暑くなるなか、試練の三島行が始まった.どんどんすり抜けていけばラクなんだろうけど、隼でのすり抜けに不慣れな人もいるし、道もよく分からない.じりじりしながら北を目指す.少し走っては止まり、ノロノロ進んでは止まる.水温計を横目でにらみながら、少しでも走っている時間を長めにとりラジエーターに風を当てるようにした.でも人間もオーバーヒート寸前.下を流れるかの川(この道は川沿いというか、何度もかの川を渡ることになる.非効率的.)が目に入る.泳いだら気持ちよさそうだなぁ、暑いよぉ(-_-;;;
 国道が川と分かれると、ようやく三島市内に入った.しかしここも混んでいる.激しく渋滞している.朝から7時間も走りっぱなしで、もういいかげんイヤ〜!と辞めたくなったが、昼飯も食べずにここで手を引くわけには行かない.店の場所がうろ覚えだったせいで(三島駅と三島広小路駅を間違えてたんだよね…すまん)みなを余計に引っ張り回し、ようやく桜屋を見つけたときには3時半を廻っていた.
 しかし、桜屋の前に乗り付けた隼集団の前に、衝撃の文字が!!!
お昼のウナギは売り切れました
 なっ、なんだとぅ…!?
 ここまで、ウナギのために、ただそれだけの為に何百キロも走ってきたのに、そりゃないよ〜.
 あきらめきれず、店の中へ.店員さんに掛け合うも「すいませ〜ん、お昼のぶん無くなっちゃったんですぅ」 で、でもこないだ電話で問い合わせた時は、昼のウナギはだいたい4時まではあるって… 「週末が土用だったせいで、今日は昼混みましてぇ、すみませ〜ん」 そ、そんな.東京から、何時間もかけてやってきたのに….がっくりと肩を落とし店をでる.ぬぅぅ、なんたるダメ幹事.ここまですきっ腹かかえてついて来てくれたブサ乗り達になんと云えばいいんだ.
 正直にみなに状況を告げる.さすがに、みなヘコんだ.



 落胆に加え、空腹と乾きで立ち上がる気力もない.

 桜屋の脇を流れる小川のほとりでがっくりしていると、そのうち誰かがポツリと云った.「…ファミレス行こうか」
 確かに、何かお腹にいれなければしょうがないし、バイク9台の御一行様がこんどこそ食事にありつけるところとしては、現実的な考えだ.しかし、こんなとこまで来て、ファミレスか.悔しいなぁ….

 仕方ないね、と諦めかけたその時、桜屋から和装のお姉さんが出てきた.先ほど直談判した店員だ.こちらを認め、近寄ってくる.ひょっとして、入れてくれるのか…!?
 「あのう、ウナギ、5人前ならあるんですけどぉ」
 くぅ、5人前じゃ、しょうがねぇなぁ.希望者だけ食べてもいいが、それじゃ残された4人がワビしすぎる.  「せっかくの心遣いだけど、僕ら9人もいるんだ」(さっきは人数まで伝えてなかった)
 お姉さんは少し考えたあと、お店に戻っていった.

 よし、じゃぁファミレス行くか.重たい腰をあげたとき、店員がまた戻ってきた.
 「あの、もし良ければウナギ5人前ですけど、これで9人前のお食事ご用意しましょうか?」

 そ、そんなことできるのか! いや、してくれるのか!
 どうする? と相談するも、一瞬で結論は出た.もちろん、これを喰わずして、ドウスルカ〜!

 バイクを市営駐輪場に移動し、桜屋に戻ると、我々の特別食(?)はすでに準備されていた.



 わはははは、何だこりゃ! ほんと、ウナギがちょこんと載っている.我々が野郎どもだからだろう、ご飯の盛りはむしろ大盛りだ.ウナギが半分なのは残念だけど、でもちゃんと肝吸いも付けてくれて気分は上々.さて、ではいただきま〜す!
 おぉ、鰻、ふわっふわだ.ウマイウマイと掻っ込んでたら、なんとご飯のなかからもう1枚、鰻が登場! びっくりウナギ方式だった.(…2枚あるなら上に並べてくれ(苦笑)).まぁそこは老舗なりのこだわりなんだろう.「桜屋のウナギは2段、半人前でも2段だぁっ」ってね.

 おそらく、このウナギは夕食用に仕込みを始めていたものを、ご厚意で出してくれたんだと思う.桜屋さん、お陰で素敵な思い出になりました(いや、ほんと癒されましたよ).どうもありがとうございました(^^)

 うなぎ1枚分、未練は残ったけど、お腹いっぱいになってとりあえず幸せ.
 でも、まだ終わりじゃない.家に帰るというミッションが残っている.一番近い川崎組ですら100キロ.愛知勢が250キロ.一番遠いゆずさんなんて、なんと450kmだ.
 バイクに戻った我々は再び隊列を組み国道へ.清水インター前で再会を誓い解散した.

■          ■          ■

 いや、本当に楽しいツーリング、楽しい週末でした.東日本の各地からブサ乗りが集まってくれて、こんなに嬉しいことはなかったです.サイト開いて、よかったナァ…、としみじみ思いました.この度ご参加下さった9人のみなさんに、心から感謝します.みんな、どうもありがとうございました!!

後刻談
 黒びーさんは、さる事情により三島から愛知まで下道で帰られました.あのクタクタのコンディションでよくやるなぁ、とそのタフネスに肝を抜かれました.(解散後6時間かかったそうです)


Aug.12th.2005