本日演奏する3曲の作曲家は、生没年を見ていただければ分かるように、ほぼ同時代の人です。いずれも、クラッシックの主流とされるドイツ以外の人で、しかも、この3人は何らかの形で交流があったようです。お国柄と作曲家の個性がどのように作品に現れるか、お楽しみ下さい。 ロッシーニ/歌劇「どろぼうかささぎ」序曲 ロッシーニ(1792〜1868)は、イタリア中部のペーザロに生まれました。 彼は、代表作である39曲の歌劇を前半生約40年の間に作曲し、どの作品も大成功を収め、手に入れたお金で後半生約40年は料理の研究等に情熱を傾けました。トゥールヌド・ロッシーニという牛ヒレステーキの上にフォアグラを載せた料理(テレビ「料理の鉄人」によく出ますね。私は、食べたことありません。)は、実際、彼が創作したものだそうです。 歌劇「どろぼうかささぎ」は、作曲家25才の時の作品ですが、彼の歌劇は、内容の単純さから今日滅多に上演されません。しかし、序曲はいずれも軽快な明るさと豊かなメロディーを持っており、演奏会になくてはならないものとなっています。ただし、いずれもアマチュアには難曲で、細かなミスには目をつぶって下さい。 チャイコフスキー/ピアノ協奏曲第1番 チャイコフスキー(1840〜1893)は、音楽愛好家の鉱山技師の次男として、ロシアのヴォトキンスクで生まれました。幼い頃から音楽に親しみましたが、当時のロシアでは一般的に音楽家は職業として認められていなかったようで、法律を学び、法務省に入省しました。 しかし、23才で法務省を辞し、音楽の道を歩み、交響曲、協奏曲、歌劇、バレエ、室内楽曲等、音楽すべての分野で傑作を残しました。生前から作品が認められ経済的には恵まれていましたが、暖かな家庭を築くことはできず、コレラにより没しました。 彼は3曲のピアノ協奏曲を作曲しましたが、第3番は、未完の交響曲を書き改めたものです。第2番は、大変美しい作品なのですが、第1番が有名すぎる、やや長大すぎる等からか滅多に演奏されないのは残念です。 「ピアノ協奏曲第1番」は、作曲家35才の時の作品で、皆さんどこかで聞いたことがあるかと思う、有名な曲です。第1楽章にはロシア民謡から、第2楽章にはフランス民謡からとられたメロディーが現れます。木管楽器が活躍する曲ですが、本日の演奏はどうなるでしょうか。 サン=サーンス(1835〜1921)は、パリで生まれ、生後2ヶ月で父を失いました。 ピアニストの大叔母のもとで育てられ、5才でサロンでピアノを演奏するという神童でした。その後も15才でパリ音楽院を卒業、22才で要職であるパリ・マドレーヌ教会のオルガン奏者に就任と、音楽のエリートコースを邁進します。 長い生涯にわたって作曲を続け、社会的にも経済的にも恵まれた彼は、フランス作曲界の隆盛にも尽力し、彼の後、フランスから大作曲家が輩出する礎を築きました。しかし、彼も家庭的な幸福を手にすることはできませんでした。 交響曲第3番「オルガン」は、作曲家53才の円熟期の作品で、この曲が傑作すぎるために、これ以前に作曲された彼の5つの交響曲(彼は、番号が付いていない交響曲を3曲作曲しており、この曲は6番目の交響曲です。)は滅多に演奏されません。曲は、2楽章形式になっていますが、それぞれの楽章が2部に分けられ、実質的には古典的な4楽章形式になっています。内容も、基本的にはドイツ古典派の流儀に則っていますが、フランス風のちょっとひねったメロディーが随所に現れ、これがアマチュアには難物なんです。また、循環主題といわれる手法が用いられ、同じ様なメロディーが何回も現れます。 まあ、あまり細かいことは気にせず、オルガンを交えた壮大な響きをお楽しみ下さい。 最後に、本日演奏する予定のアンコールのヒントです。 サン=サーンスの先輩にあたる、天才作曲家の有名な行進曲です。これは難曲ですよ。彼の代表作を演奏するのは、我がオーケストラの長年の夢であったりもします。 |