嵐山 (あらしやま)
嵐山の花の頃、その様子を見に来た勅使が、花を眺めていると
、老人夫婦が来て、花の木蔭を掃き清め、花に向かって礼拝する
ので、勅使がその訳を尋ねると、我等はこの山の花守であるが、
この山の櫻は、元来吉野山の櫻であって、子守・勝手の二神が影向
される神木であるから、禮拝するのである、と答え、自分たち夫婦が
実はその二神である由を告げた後、夜まで是で待ち給へと言って、
吉野山の方へ飛び去った。
(中入り) 果してその夜、子守・勝手の二神が現れて、神楽を奏
し、更に吉野山の鎮守である蔵王権現も来現して、花に戯れ、梢に
翔って、栄ゆく春の長閑さを見せてから帰った。