【春を連れてくる渡り鳥、コウノトリ】





長く厳しかったスロヴェニアの冬が終わり、野山に花々が咲き始める頃、アフリカ大陸から
はるばる空を渡って、コウノトリがやって来ます。
日本ではめったにお目にかかれないコウノトリ。絵本の中で赤ちゃんを運んでいる、
あの大きな渡り鳥が、スロヴェニアの東北部、プレックムリエ地方では、春を告げる風物詩なのです。
プレックムリエ地方というのは、ハンガリーとの国境にあたる場所。パンノニア低地と呼ばれる
平原の続くところで、スロヴェニア屈指のグルメな土地でもあります。
(ピカポロンツァの人気メニュー、りんごとけしの実のギバニッツァや、ボグラチシチューなども、この地が生まれ故郷!)

アフリカの北部で避寒したコウノトリは、ここに戻って巣を作り、産卵し、
冬が来る前にまたアフリカへと飛んで行くのです。
コウノトリは、高い木の上に巣を作る鳥ですが、プレックムリエ地方では、民家の屋根や、煙突のてっぺん、
電柱の上などに、巣を作ります。木切れや小枝でこしらえた大きな巣と、その中で卵を産み、
ヒナを育てるコウノトリを人々はとても大切にし、見守っています。

煙突のてっぺんに巣ができた家では、コウノトリ一家を守るため、決して暖炉に火をくべることはありません。
誰しもそれを、当然のことと思っていて、迷惑がったり、巣を取り払ったりはしないそうです。
同じ土地で生きるもの同士として、ごくごく、あたり前に、コウノトリに接しているんですよね。

そんなスロヴェニアの人たちの姿には、お国柄があらわれているような気がします。
自分たちの住む土地に誇りを持ち、それゆえに伝統が受け継がれ、文化が守られる。
そんな自然体の民族意識が、スロヴェニアには今も脈々と流れているようです。

 


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