<ピアノを始めようと思ったら> 2004年9月18日 更新
- 趣味としてのピアノ
ピアノを始めようと思うきっかけは様々だと思います。このHPを開いてから随分ご相談を受けましたが、この頃一番考えるのは、この「ピアノという趣味」の特殊性です。
ピアノを弾きたいと思うならばピアノという楽器が必要だ・・・私にとっては自明のことですが、そうでないケースが多々あります。そこで、ここで取り上げることにしました。
以下の様々な項目で繰り返し述べているのですが、始めるにあたっての心構えというものもあるのではないでしょうか。
もしかしたら、皆さんがお考えになるよりもずっと特殊な趣味かもしれません。
・ピアノという楽器が必要。
・(構造的に)ピアノが置ける部屋(・環境)が必要。
・体格的な面と、音楽性において、ある程度の適性が必要。
・(ほぼ)毎日練習しなければならない。
・何十年続けても、半年〜1年間全くピアノに触れなかったら、誰でもゼロに戻ってしまう。 (全く弾けなくなってしまう。)
最初から否定的なことを並べてしまったかもしれません。しかし、よくペットを飼うときに「飼うにはそれなりの知識と心構えが必要です。」と言われますが、ピアノを始めるにも、最低限の”覚悟”は必要だと思うのです。根気もいります。楽器も高い買い物です。
全くの趣味でいい、という方でも、いや、そういう方こそピアノという楽器で練習していただきたいのです。キーボードではピアノは上達できません。
お子さんが始める場合には本当に続くのかどうか不安もあるでしょう。しかし、ピアノを習わせようと思われた保護者の方は、実は「自分も昔やっていたが、止めてしまった。」「小さい時に実は習ってみたかった。」という方がとても多いのではないでしょうか。
是非これを機会にお子さんと一緒に習ってはいかがでしょう。少なくともレッスンに同行して、とりあえずは自習してもいいですし。万一お子さんが止めてしまった場合でも、ご自身が続ければピアノは無駄になりません。
それに、もしも親御さんが一心にピアノに向かって練習する姿を見せれば、お子さんにも良い影響があると思います。
ピアノを始める前に、よく考えて、その上で決心して始めればきっと中古のアップライトでも本物のピアノを買おうとお考えになるのではないでしょうか。
キーボードは安価で手軽ですが、所詮電化製品であり、消耗品です。じっくりお考えになるようお奨めします。
- 楽器を用意しましょう
1.新しいピアノを購入する。
2.専門店で中古品を購入する。
3.家にある古いピアノを手入れする。
・・・この3つの方法ならまず問題ないでしょう。
4.電子ピアノ・キーボードを買う・・・次善の策です。
・・・中古ピアノとの値段の差も余りないと思います。
せめてよりピアノのタッチに近いもので、必ず88鍵のものを選びましょう。
ただし、値段以上の差が後日のテクニック・表現力の差となって、本人を苦しめることになります。よくお考え下さい。
「楽器の選択について」はこちらからどうぞ。
- 何歳から何歳まで?
始めるのはゆっくりで構いません。6歳で充分です。
かえって早過ぎると弊害もあります。
体格・手の大きさをみて、本人の意思が固ければ満5歳を
目途に始めればいいと思います。
大人の方は、何歳からでも。50歳でも60歳でも。
ピアノは死ぬまで楽しめます。指を動かすとボケません。
演奏家の中で、一番年をとっても活躍できるのがピアニストです。
80歳でも現役!?思い立ったが吉日です。
- 幼児期からのピアノについて
ピアノを余り早くから習わせることには注意が必要です。音感やリズム感を養うなど3歳くらいからでも可能なことは沢山ありますが、かといって3歳や4歳でピアノをいう楽器を弾かせるには無理があります。
体も小さいですし手も小さく細いので、鍵盤を正しく押さえるのは至難の技です。家庭内で正しい弾き方かどうか判断し、適切に直せる人がいない場合には、余り幼少期からピアノを弾かせるには弊害の方が大きくなると思います。
それに、たとえ早く始めたからといっても、6歳から始めた子供と比べても、先行−逃げ切り、とは行きません。恐らく2,3年で追いつかれるでしょう。(個人差はあります。)
ピアノはただ指が速く動けばよい、というものではありません。耳が良いことは必須の条件ですが、ただ漫然と鍵盤を叩いているだけでは表現力もテクニックも身に付きません。
自分の出す音を聞き、先生の音との違いを聞き取り、さらに自分でも工夫しながら弾く必要があります。そのためにも、ある程度の理解力と忍耐力が必要で、毎日できれば自分の意思での練習が望ましいでしょう。
これらの条件はやはり小学校に入るくらいの年齢にならないと難しいと思います。
また、ピアノを始めて暫くの間(最低1年以上)は、親御さんが是非レッスンに同行してください。家で練習する時もある程度見ている必要があります。ここが違う、と指摘するほどでなくとも、練習の様子を垣間見られるような距離で見守ってください。
練習する習慣をつけさせることも含めて、どうしてもお母さん・お父さんの参加が求められます。先生の指示をお子さんがうまく理解できない場合には、それを次回のレッスンで伝えることも大切です。
余り神経質になる必要はありませんが、先生に任せっきり、というのでは上達は難しくなるでしょう。その意味で、親御さんも一緒に習うくらいのつもりでお始めになってください。
なお、リトミックなど、演奏以外の方法でリズム感を体得したり、CDなどを聞いて素敵と思う音楽に触れる機会を作ることも立派な音楽の早期教育です。
小さくても、リズム練習などをさせるととても上達します。リズムのみのソルフェージュの本も出版されていますから、お子さんと一緒に遊び感覚で始めるのはいいことだと思います。左右で違うリズムを打つことなども、5歳でも上手にできるようになり、楽しんでくれます。
大切なことは、いくら早く始めても、本当の才能(努力を継続できる能力を含む。)が無ければ、やっぱり専門の道に進むのは難しく、また、小学校に入ってから始めたとしても、才能に恵まれた子供なら、十分間に合うということです。
ただし、いくらよい音感があっても、体格的に恵まれなければ非常に厳しいですし、どこまで体や手が大きくなるかは小学校高学年くらいにならないとはっきりしないでしょう。
ですから、それまでは、過度の期待をかけすぎず、一人一人の差も大きいので、おおらかに見守ってください。
唯一親御さんがすべきことは、あらゆる努力を払って良い先生を選ぶことです。
なお、残念ながら余り適性がなさそう、とお感じのときも、できればバイエル終了程度までは続けられることをお勧めします。
バイエル終了程度まで習えば、いつか大人になって自分の意思で再開するときにも、ある程度スムーズです。自分で楽譜が読めるようになっていますし、例えば保育士さんになるための実技試験の課題が大体バイエル80番〜100番程度ですから、一応"初級"終了と言えるレベルになります。(ちょうど「エリーゼのために」が弾けるレベルですね。)
- 大人の初心者の方へ
最近沢山お問い合わせがありますので、ご参考までに。
*「20代、30代で始めると、上手にはなれませんか?」
・・・そんなことはありません。プロの演奏家になろうとすると少し大変だと思いますが、それも不可能とは思いません。
あせらずゆっくり練習すれば何歳で始めても、必ず素敵な「ピアニスト」になれますよ。ショパンだって(個人差はありますが)5年もすれば弾けるでしょう。
*「個人レッスンと、音楽教室のグループレッスンとではどちらがいいですか?」
・・・迷わず個人レッスンをお奨めします。大人の方こそ一人一人に合わせた指導が大切です。出来れば、音楽教室ではなく個人の先生をお奨めします。
音楽教室が全部だめだと言っているわけではありません。また、同じようなお友達が出来る楽しみもあると思います。
しかし、グループレッスンでは、時間の制約もあり、きめ細やかな指導が出来るとは限りません。
*「独学でも上達しますか?」
・・・是非先生に習うことをお奨めします。それには2つの理由があります。
1.体を壊してしまう危険がある。→
初心者の方は、手首や肩に力が入りすぎる傾向がありますので、正しい弾き方を最初に身に付けないと、百害あって一利なしです。
特に大人の初心者の方は、力任せに弾くと最悪の場合、腱鞘炎などの恐れもあります。無駄な力を抜くことがまず大切です。
2.独り善がりになりやすい。→
やはり、何事にも先生は必要です。私も今でも定期的にレッスンに通っています。音が出る、間違わずに弾ける、ということだけではピアノが弾けるとは言えません。どんな音をだすか、いかに曲をまとめるかが大切です。
特にまったく初めての方は是非先生を探してください。
以前習ったことのある方も、出来れば先生に師事することをお奨めします。
やはり視点が違いますので、早く無理なく上達出来ると思います。
今までにBBS/メールでご相談になった方で初めて先生に師事したり、先生を変えた方の殆どから「目からウロコが落ちた。」「習って本当によかった。」などのお礼のお便りを頂いています。
勿論例外はあると思いますが、私の私見としては是非よい先生を探して師事することを強くお勧めします。
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