楽器の選択について  <ピアノと電子ピアノの比較
2017/01/30 更新


はじめに>

ピアノを始めるにはピアノという楽器を用意しなければなりません。
私が子供の頃には電子ピアノやキーボードはありませんでしたから、高いお金を出してピアノを買うしかありませんでした。

今では、いろいろ便利な楽器も簡単に手に入ります。しかし、ピアノの代わりとしてはそれぞれに長所短所があります。
それらを比較して賢く選択するために少し調べてみました。スペックなど詳細はネットでの検索は勿論、実際に店頭に足を運んで、その違いを是非ご自分で確かめてください。

ここでは、比較のポイントを明確にするために少し書いてみました。
メーカーや機種の違い・選択については代表的なものを選び、ましたが、最新情報を各楽器HP等で再度ご確認くださるようお願いします。

しかし、機種やメーカーが違っても、選ぶためのポイントは変わりません。
そのための予備知識を得るつもりでお読みいただければ幸いです。

<普通のピアノ(アコースティックピアノ)と電子ピアノの違い

1.音とタッチ

これらは全く違います。普通のピアノは弾き手のタッチの変化に伴って、音色は無限に変わりますが、電子ピアノは誰が弾いても同じ音になります。(音色が一種類という意味ではありません。)

ピアノの演奏テクニックで基本的なことは、まず右手と左手で強弱の差をつけることです。
分かりやすく言えば、右手が「うた」で、左手が「伴奏」の場合、右手の音を強く、左手の音を弱く出さなければなりません。

 さらには、中級以上では、片手だけでも、複数の音を弾くときに、同様の強弱の差をつける必要が出てきます。(高い音が「うた」、低い音が「伴奏の一部」のように。バッハの作品などがその典型です。)

 このように、ピアノとは、打鍵するときの指先のタッチの違い(物理的には打鍵のスピード・力の違いです。)によって強弱・音色を表現する楽器なのです。
 残念ながらこのタッチの違いを全く表現できないか、殆ど表現できないのが”キーボード”なのです。

このようなタッチの違いのテクニックの習得はごく初歩の段階から絶対に必要になります。どんなに遅くとも始めて半年以内には必要になります。指先の感覚により強弱(音色)の調節が出来ない楽器ではピアノの演奏は学べない、ということになります。

・電子ピアノやキーボード類の中でも、一部の機種は普通のピアノと同じアクション(打鍵機構)を使ったものもあります。ヤマハ以外では、ローランドなども鍵盤の感触については非常に良いと思います。
キーボードと言っても音色やタッチだけに絞ればかなりの再現性を持つようになってきました。

2.耐用年数の違い・・・

普通のピアノは調律と、磨耗部品の取り替え等により、長期間(使い方次第で15〜30年)の使用が可能ですが、電子ピアノは電器製品ですから消耗品です。10年使えるかどうかという感じです。製造打ち切り後、交換部品は8年程度しか保管されません。

3.私が本物のピアノにこだわる理由・・・


ピアノは弦を打って音を出す楽器です。キーボード類はその音を電気的に再生して出す楽器です。例えて言えば「生演奏を聞く」ことと「録音を聞く」ことの違いがあります。
 録音技術が進んでLPからCD, MDの時代になりました。しかし、それでも演奏会へわざわざ足を運ぶのはなぜでしょう。

 生の音には命があります。私たちの耳はきっとその違いを聞き分けているはずです。聞き分けるためにピアノを習うと言えるかもしれませんね。
  他のページ(ピアノの機種)でも書いたのですが、実は同じピアノといってもアップライトとグランド、さらにはそのサイズ(長さ)でも大変な違いがあるのです。
 小さい子供の頃にはじめる場合は、体格の問題もあるのでアップライトでもまあいいのですが、小学校の間にグランドに買い換えられると理想的です。そのくらいグランドとは機構が違うのです。表現力に天と地ほどの違いがあるのです。

 それに、キーボードがいくら進歩したといっても、ピアノという楽器を弾くことが目的なのですから、微妙なタッチの違いなどはピアノを日頃弾くことによってからしか身につきません。
音色を聞き分ける力もつきません。
 しばらく習ってみて、適性があり、専門的に勉強を続けたいと思うようになったら、最低アップライト、できればグランドにしたいものです。
ただ、レッスン時にグランドを弾ける(先生のお宅のピアノがグランドピアノのはずですから。)ことを条件にすれば、最初の買い替え時(10〜15年以内)にグランドにすれば必要充分でしょう。
 私が学生の頃は「音大受験の前には絶対にグランドに変えることが必要だ」と言われましたが、それはバブルより遥かに昔の話です。
 音大・音高を目指すことが決まった時点で、グランドが必要になります。

電子ピアノの問題点

・音色について
 (キーボードを含む)電子ピアノでは、各社の最高機種のグランドピアノの音をサンプリングして使っています。それは確かに素晴らしい音色です。しかし、逆に言えば、私が弾いても幼稚園の子供が弾いても、結局のところ"最高の音"が出るわけです。(もちろん、タッチに伴って強弱などの変化は起こりますが。)
 つまり、これではタッチの違いによる弾き分けという、ピアノの基本的なテクニックは全く習得できないことになります。
これが最大の問題です。

・アクションについて

 鍵盤を押した時の感触(タッチ)は、電子ピアノでは各社各機種でまちまちで、まさにピンキリです。
勿論、限りなく普通のピアノに近づけようと努力もなされている訳で、それらには"グレードハンマー"やアップライトと同じ木の鍵盤・アクションを使用しています。
 しかし、たとえ物理的なタッチが限りなく本物のピアノに近づいたとしても、打鍵後に出る音は、結局のところ電気的に再現されたた音であり、弾き手の上手下手に全く左右されない"最高の"音色なのです。
 また、本物のアクションを使った場合は、逆にメンテナンスに注意が必要だそうです。正しい調整がなされないと意味がありません。かえって維持管理が難しい場合もありうるようです。

・結論を言えば、どう転んでも、結局電子ピアノ・キーボードは本物のピアノの代わりにはならないのです。

電子ピアノ等を選ぶヒント


・このHPを開設してから10年以上が過ぎました。この間の楽器の進歩は目を見張るものがあります。住宅事情等で、どうしても電子機器のついた楽器を選ばなければならない方も多くなり、 それに合わせて楽器も進化しました。
私自身の限られた経験上からしかお話しできませんが、今回なかなかの機種に出会うことができました。それはヤマハのハイブリッド・ピアノです。

この楽器の位置づけは、最もグランドに近いタッチ(アクション機構)です。ピアノを習っていて、あるいはピアノを弾きたいが、ヘッドホンでの練習が必須の方ならば、これが目下第一の選択肢になると感じました。
これを弾いた上での意見としては、アップライトは置けないが、予算はある、という方には迷うことなくこのハイブリッド・ピアノをお勧めします。
次に、予算の制約がある方は、クラビノーバで良いと思います。

ハイブリッドにはグランドそっくりのアクションを使っているN1〜N3のアバングランド・シリーズと、アップライトのアクション機構を使っているNU1があります。 NU1が悪いとは言いませんが、アクション機構の分だけ重く(109kg)、それでいてNシリーズとはタッチが違うので、たとえ実勢価格が40万円弱でもクラビノーバあたりと比べて、値段ほどの差は出ないように思います。
勿論、クラビノーバよりも実際のアクションを動かしている分だけ、再現性と言う点では優れていますが、総合的に考えればやや半端な製品と言う感じもします。

むしろ、同じ価格なので、もし私が買うとしても、消音機能を必要としないなら、アップライト・ピアノとさえ選択に迷うかもしれません。(アップライトとグランドのタッチの差は大きいです。タッチだけでいえば、アバングランドの方がグランドに近いと感じました。ただし、耐用年数等を考えればまた違う結論にもなりえます。)

下の表でも判りますが、こうなると、サイレント・ピアノと言う選択肢は消えると言えます。すべての点で、ハイブリッドに負けてしまいます。

ヤマハの製品の比較(注:最新の情報は各自でご確認下さい。)2017/1/30更新(価格と型番を更新しました。)
                 
クラビノーバ アップライト・ピアノ ハイブリッド・ピアノサイレント・ピアノ
型式 CLP-430 YU11 NU1YC1SH
希望小売価格(税抜き) \165,000 \660,000 オープン価格(実勢で¥370,000前後)¥788,000
高さ×間口×奥行(cm) 90×142×51 121×153×61 99×146×62 112×149×53
重量 60.5 kg 228 kg 124 kg 204 kg
特徴 ・グランドピアノ同様の表現力をもつ「グレードハンマー鍵盤」を採用。
・鍵盤を弾く力の強弱に合わせ、無段階に音色が変化。グランドピアノ同様に、ハンマーを採用し、バネを使わない鍵盤アクション。等
・最もコンパクトなアップライト・ピアノ。消音装置はありません。・グランドピアノのアクション機構をそのまま採用。グランドを弾いている感覚に最も近い。 ・アップライト・ピアノに消音機能を加えたタイプ。夜でも気兼ねなく練習できます。

選択肢

まず、問題なく置ける方はグランド、あるいはアップライトを。次はハイブリッド(アバングランド)、その次がクラビノーバか、中古のアップライト・ピアノでしょうか。

大体、中古アップライトの価格は定価の半額程度と考えればいいでしょう。
となると、大体20〜30万円代から買えることになります。(ちなみに、電子ピアノも本物のピアノも、実際には楽器店で15%〜20%の割引で買えます。)

(注:中古のキーボード/電子ピアノはお勧めできません。理由はそれらが消耗品であり、本物のピアノに比べて耐用年数が相当短くなるからです。10年に満たない耐用年数のものを更に中古で買っても、いい状態で何年使えるか、また交換部品があるかどうか、分かりません。) 中古アップライトは結構出回っています。また、状態のいいものも沢山あります。外側に目立つ傷などがあると安くなりますし、家具として綺麗な木目調のものなどは高くなります。
 問題は外見ではなく、中身です。
中身(アクション・ハンマーの状態など)がしっかりしていれば、また手入れされていれば、中古でもお買い得となります。
信用の置ける専門店で選べるならば、中古のアップライト・ピアノがなかなかよい選択肢であるのは間違いありませんが、重いのも事実です。 一般的な家屋なら2階にも置けると思います。(実は本棚も非常に重くて、ピアノと同じくらい重量があることもあります。)
とはいえ、床が抜けると大変ですから、2階に置く場合は位置を工務店などの専門家と確認してください。
アップライトにもグランドにも、後からさまざまな消音ユニットを付けるができます。(+10〜15万円位でできるようです。)

中古ピアノ選びで注意する点

・ヤマハの「リニューアル・ピアノ」

 ヤマハにおいては、「中古ピアノ」と「リニューアルピアノ」を区別しているようです。
中古・・・原則的に部品交換等は一切行わず、買い受けたそのままの状態で売っているもの。
リニューアル品・・・一旦ヤマハの工場へ運び、必要な部品の交換・整備後に売るもの。

という訳で、この区別が表示されている場合は、良品の選別が難しい「中古」よりも「リニューアル」の方がお奨めです。

(ただし、この基準も絶対ではないようです。信頼できるお店を探し、よく話を聞くことで、質の良い中古ピアノを根気よく探して下さい。  また、きちんと手入れされていれば、新品と遜色ないピアノも少なくないようです。)

・中古ピアノの品質のチェック
 
 中古ピアノは玉石混交です。特に初めてピアノを買う方に、良いピアノを見分けることは(実際問題として)不可能です。
信頼できる調律師さんがいればほぼ間違いなく、中古でも状態の良いものを選んでくれるでしょう。しかし、調律師さんにも腕・技術のバラツキがあります。
ということで、実際にはある程度ブランドを信用して買うしかなさそうです。
ある程度値段と品質は比例すると考えた方がよさそうです。また"安売りセンター"的なところでは買わない方がいいでしょう。

まずは信用のある大手楽器店へ行って、新品を触ってみて、メーカーによる違いや、中古ピアノについての知識・在庫を聞いてから、具体的に中古ピアノを探すのが良さそうです。

最後に

現在、ピアノを習おうという家庭が買うのは殆どが電子ピアノ等だそうです。やはり置き場所、音、重さ、そういう点から止むを得ない結果だと思います。 ピアノを置いて気兼ねなく練習出来る環境にある人は本当に恵まれていると言わなければなりませんね。

それでもハイブリッド・ピアノのように新しい製品も現れ、選択の幅は広がってきました。いずれの場合にも、レッスンでグランドを弾ける環境が一番望ましいですね。
個人的な意見ですが、グランドにサイレント機構をつけるのはどうかな、と感じています。結局、そうなればハイブリッドで十分、と言う感じがします。
  
★ヤマハ・ピアノシティ★ ヤマハのサイトはピアノに関するあらゆる疑問に応えてくれます。ピアノを置いたイメージも分かり、大変よくできたサイトです。 
ピアノ全般について→こちら 
アコースティックピアノと電子ピアノの違いについては→こちら
★ヤマハのハイブリッドピアノについて★全部で4機種あります。HPを参考にして下さい。
★クラビノーバについて★ HPはこちらです。


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