雪倉岳・朝日岳 2日目

コース:
2日目:大池山荘(2380m)4:45〜6:35小蓮華山6:55〜7:35三国境7:45〜8:20蓮華温泉分岐〜9:35避難小屋9:45〜10:30雪倉岳10:50〜13:40水平道分岐(水平道)〜15:30朝日小屋


2日目のコースは長い。10年前の白馬山荘〜朝日小屋でさえ大変だったのに、今回は更に2時間も長い。無事に歩けるだろうか。
夕べの星空に好天を確信したのに、4時前に目覚めると深い霧。昨日受け取ったお弁当を何とか半分口に入れ、水は取り合えず1.5Lにして、仕度をしていると、とうとう雨。折角の花のコースだというのに・・・。
諦めてしっかり合羽を着て、ガスの中、一歩一歩登り始める。

白馬大池・大池山荘     稜線を行く

稜線に出ると風が強い。時々よろめきながら、踏みしめる足元は岩礫。だが、花も一杯で、ハクサンコザクラ、ハクサンイチゲ、オンタデ、ハクサンフウロ、シナノキンバイ、今日は何種類見られかと早速期待が高まる。
そのうちに雨は上がって空が明るくなった、と喜ぶのも束の間、さっとガスに包まれ、猫の目のような天気だ。

小蓮華山(2768m)までは400m程の標高差だが、細かいアップダウンがある。残念ながら、展望はないが、途切れなく続く花、花、花。
今日のお初は、タカネナデシコ、ミヤマアズマギク、シナノキンバイ、・・・。

ウルップソウの群落(花は枯れています)   ガスの中のお畑

強風と薄暗さで、折角レンズを向けてもブレてばかり。2枚、3枚と撮るうちに本隊はどんどん進み、撮影で立ち座りを繰り返すとザックの重みが堪える。これが後からボディーブローのように効きそうだ。
この長丁場、バテないようにお花は極力見るだけ、と決心したものの、これを見るとやはり素通りは無理だ。

冷たい風に指先が凍えそうだ。前後の登山者も増えて、順調に小蓮華山に到着。地震で崩壊した山頂には入れず、ロープが張ってある。休憩でザックを降ろす。今日は1日こんな天気なのだろうか・・・。

次のポイント、三国境(2751m、白馬岳との分岐)を目指してまた歩き出すと、何だかピヨピヨ声がする。前方が止まっているので尋ねると、ライチョウが!(但し見つけたのは親だけ。)こういう天気が幸いし、現れたライチョウを何とかアップで写す。
ライチョウ

あたりは斜面に残雪も多く、春の花と夏の花が混在して素晴らしい景色だ。何とウルップソウがわんさかあるが、全てもう終わっている。
枯れた穂先を眺めながら、満開の頃の光景を想像し、その見事さに次は是非、と心に誓う。

三国境で大休止、さあここからが本番。1/25000地形図からだけでもコースの長さが伺えるが、歩き出して3時間でもほんの玄関口でしかない。
気を引き締めて砂礫のジグザクを下ると今度は花の種類が増える。イワオオギ、ヨツバシオガマ、タカネシオガマ、エゾシオガマ、タカネマツムシソウ、いちいち写していると取り残される。この目に焼き付けて、素通り・・・。
鉱山道分岐を見送ると間もなく雪渓のトラバース(横断)。今年は残雪が非常に多く、この先何度もあるようだ。

雪渓を渡る

スプーンカットになっているので問題なく歩けるが、斜度が急だとスリップは重大事故につながる。
しかし、雪のお陰でショウジョウバカマやハクサンコザクラがとても綺麗。春の雪解けの花と夏山の高山植物が混在して、見事だがちょっと不思議な気分。

分岐から2時間で雪倉岳直下の避難小屋着。トイレもある綺麗な小屋だ。前回は、容赦なく照りつける日差しと疲労で、目の前の雪倉岳が何と高く見えたことか。
しかし今回は展望と引き換えのガスと風で、暑さに体力を消耗することもなく、意外と楽にここまで来ている。それだけで何だか嬉しい。小屋の前には珍しいタカネコウリンカ。

さあ、雪倉岳へと歩き始めるが、なるほどお花畑が続くので、沢山の花に「騙されて」案外楽に登れるものだ。その中で目を引くのは黄色いスミレ。どうやらクモマスミレのようだ。あわててカメラを取り出す。
相変わらずの悪条件に悩まされながらも、ここまで歩けた自信から、ますます増えるお花にどんどんレンズを向け始める。大丈夫、朝日小屋まで今日は無事歩けるはず!

雪倉岳山頂へクモマスミレ(雲間菫)

山頂まで1時間弱。ここで大休止(お昼)。これでザックがまた少し軽くなるはず。腰を降ろして見渡すが、展望だけは無し。

下りとなれば気分はルンルン。ガスの中のニッコウキスゲが綺麗だ。
ニッコウキスゲの群落

シロウマアサツキ、クルマユリ、イブキトラノオ、と花の名を復唱しながらお花畑を歩いていると、転んだ人(軽症)の手当で後方部隊は一休み。これ幸いとあたりを見渡すと、見慣れない個性的な花が。あ、ミヤマアケボノソウ!。図鑑で見た通りだが、実物は一段と素敵。

ミヤマアケボノソウ

このあたりのお花畑はハクサンシャジンやマツムシソウ、チシマギキョウにイワギキョウと紫の花が目立つ。何とか一部は咲き残ったウルップソウを見つけ、満足。更に、これは何かな、という花はとりあえず写しておく。

長丁場もようやく終盤にさしかかり、赤男山を巻いて標高を下げ、樹林帯に入る。燕岩というポイントがあるが、このあたり、前回の記憶が全く無い。やはり疲れ果てていたからだろうか。

燕岩    ミズバショウとリュウキンカ


沢沿いにはリュウキンカ、それにまだかわいいサイズのミズバショウも。
ようやく水平道分岐まで辿り着く。残雪のため、水平道を通れるようになったのは昨日から。アップダウンが多いため、実は山頂経由の方が楽かもしれないという名ばかりの「水平」道だが、やはりこちらを進む。

「水平道」を行く  キヌガサソウ

残雪に広く覆われ、ベンガラ印を頼りに歩く。疲れた体に登りはきついが、リーダー曰く、「まだまだ『水平に』登っていきます!」。
キヌガサソウやサンカヨウなど、群落になっているのは素晴らしい。しかし、朝5時前から歩き始めてもう15時。流石にザックが肩に食い込み、ストックを突く腕も疲れてきた。細かいアップダウンに所々もろい雪渓歩きは神経を使う。
小屋はまだ?小屋は近い?と自問しながらやっと歩いていると突然視界が開け、目の前の稜線に三角屋根が現れた。小屋だ!

朝日小屋を望む   賑わう朝日小屋

もう少し、と思うが体は正直だ。そろそろ足が上がらなくなり、最後の登りが本当にきつい。やっと辿り着いた稜線はお花畑。木道を僅かに進んでゴール。15:30、ようやく朝日小屋に到着。

先に着いた登山者たちが小屋の前で乾杯中。ベンチに腰掛たい気持ちを抑え、とにかく部屋へ。ここも「畳1枚に3人」の混雑ぶりはやむを得まい。
重い荷物を手に持って、急な階段を上り、指示された部屋に入ると予想外の広さ。
これは何かの間違いに違いない、とリーダーが確認に行くと、我々だけで使える部屋だという。「2ヶ月前に予約して貰ったので」だそうだ。布団1枚に1人(未満!)というこの広さ。歩き疲れた体には本当に有難い。

ようやくザックをゆっくり片付け、洗面所で鏡を見てびっくり。何とまぶたがぷっくり腫れている。虫さされだろうか。
そういえば、強風のせいかと思ったが、歩いている間、まぶたが重くて目が開きにくいなと感じてはいたが、まさかこんなに腫れていたとは。
多分、洗い落とせない日焼け止めが、擦ったせいで目に入り、炎症をおこしたのだろう。顔は落とせない日焼け止めを塗り重ね、ザラザラ。ひどい顔・・・。
有難いことに、ここは水も豊富。せめて水で洗って、手持ちの薬を気休めに塗ってみる。

さて、ザックの片付けも終わって一息つき、ほっとして見渡せば、ここは手入れが行き届いた綺麗な小屋だ。女性陣がテキパキと切り盛りしているのも好ましい。
受付兼売店で、色数豊富なお花のバンダナをお土産に数枚買い込み、ビール代わりの紙パックのジュース(200mlで300円也)を買って、お疲れ様〜の一気飲み。冷たいジュースが喉にしみる。

夕食はお盆に皿がぎっしり。お刺身や和菓子もついて、食べきれないほど。山奥のこの小屋の心づくし。ただし、数回続く夕食ゆえ、20分間の高山植物のビデオが終わるまでに、席を空けなければならない。

2日目の日程何とかこなし、食事もたっぷり取って、ここまで歩けた満足感に浸っていると、山が見えるよと言われて外に出る。
ガスが晴れて、白馬連峰がやっと顔を出した。

明日はまたまた長い。前回散々な目にあった兵馬の平、今回は無事に辿り着けるだろうか・・・。それに、夏道が残雪に埋もれているという朝日岳の下りも心配だ。
不安はあるが、綺麗な布団と寝返りも打てるスペースに、珍しく熟睡。

白馬連峰

◆今日出会った花◆   [注:前日分と重複します]
白系統
タカネヤハズハハコ(高嶺矢筈母子)、ミネズオウ(峰蘇芳、ミネウスユキソウ(峰薄雪草)、イワオオギ(岩黄耆)、クモマミミナグサ(雲間耳菜草)、イワツメクサ(岩爪草)、クモマナズナ(雲間薺)、イブキトラノオ(伊吹虎の尾)、サンカヨウ(山荷草)、キヌガサソウ(衣笠草)、チングルマ(稚児車)、ハクサンイチゲ(白山一華)、ミヤマカラマツ(深山唐松)、モミジカラマツ(紅葉唐松)、アオノツガザクラ(青の栂桜)、ツマトリソウ(端取草)、ミツバオウレン(三葉黄蓮)、ミヤマコゴメグサ(深山小米草)、イワイチョウ(岩銀杏)、ゴゼンタチバナ(御前橘)、マイヅルソウ(舞鶴草)、ミヤマツボスミレ(深山壷菫)、ハクサンシャクナゲ(白山石楠花)、ミズバショウ(水芭蕉)、カニコウモリ(蟹蝙蝠)、コバイケイソウ(小梅尅吹j、ヒメイチゲ(姫一華)、エゾシオガマ(蝦夷塩竈)、ユキザサ(雪笹)、ミヤマダイモンジソウ(深山大文字草)、コウメバチソウ(小梅鉢草)、オンタデ(御蓼)、オヤマソバ(御山蕎麦)、ミヤマハハコ(深山母子)、ミヤマゼンコ(深山前胡)、タカネイブキボウフウ(高嶺伊吹防風)、ウメハタザオ(梅旗竿)、クモマミミナグサ(雲間耳菜草) ピンク系統〜紫系統
シラネアオイ(白根葵)、ハクサンコザクラ(白山小桜)、ノビネチドリ(延根千鳥)、ハクサンチドリ(白山千鳥)、タカネナデシコ(高嶺撫子)、タカネシオガマ(高嶺塩竈)、シロウマアサツキ(白馬浅葱)、ショウジョウバカマ(猩猩袴)、コマクサ(駒草)、ミヤマアズマギク(深山東菊)、シモツケソウ(下野草)、イブキジャコウソウ(息吹麝香草)、リンネソウ(リンネ草)、ハクサンフウロ(白山風露)、ヨツバシオガマ(四葉塩釜)、ハクサンシャジン(白山沙蔘)、ミヤマアケボノソウ(深山曙草)、ミヤマクワガタ(深山鍬形)、イワギキョウ(岩桔梗)、チシマギキョウ(千島桔梗)、ミヤマムラサキ(深山紫)、タカネシュロソウ(高嶺棕櫚草)、ウルップソウ(ウルップ草)、オヤマノエンドウ(御山竜胆)、ムシトリスミレ(虫取菫)、タテヤマウツボグサ(立山靱草)、タカネマツムシソウ(高嶺松虫草)、コイワカガミ(小岩鏡)、コバノギボウシ(小葉の擬宝珠)、ミヤマハンショウヅル(深山半鐘蔓)
黄色〜オレンジ系統
クルマユリ(車百合)、メタカラコウ(雌宝香)、ミヤマダイコンソウ(深山大根草)、ミヤマキンバイ(深山金杯)、シナノキンバイ(信濃金杯)、ミヤマキンポウゲ深山金鳳花)、リュウキンカ(立金花)、オオバキスミレ(大葉黄菫)、クモマスミレ(雲間菫)、ニッコウキスゲ(日光黄菅)、タカネコウリンカ(高嶺紅輪花)、イワベンケイ(岩弁慶)、ウサギギク(兎菊)、ミヤマアキノキリンソウ(深山秋の麒麟草)、カンチコウゾリナ(寒地髪剃菜)
緑色
タカネアオヤギソウ(高嶺青柳草)、オオバタケシマラン(大葉竹島蘭)、シロウマチドリ(白馬千鳥)
茶色:
エンレイソウ(延齢草)

<<3日目に続く>>


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