槍ヶ岳   2009年9月上旬

コース:
@6:08上高地〜6:50明神6:55〜7:40徳沢8:00〜8:55横尾9:13〜10:08一ノ俣10:15〜10:49ロッジ槍沢11:19〜12:19大曲(水俣乗越分岐)12:30〜13:05休憩13:15〜13:36天狗原分岐13:46〜15:00ヒュッテ大槍分岐15:10〜16:00ヒュッテ大槍

2日目に続く*
A6:35ヒュッテ大槍〜6:55殺生ヒュッテ分岐7:08〜(ヘリ荷降ろし待ち)〜7:50槍ヶ岳山荘8:00〜8:35槍ヶ岳8:50〜9:13槍ヶ岳山荘9:45〜東鎌尾根〜10:22ヒュッテ大槍10:35〜11:10ヒュッテ大槍分岐〜11:30水場で昼食11:55〜12:14天狗池分岐〜12:55天狗池13:20〜13:50天狗池分岐14:00〜14:30大曲〜15:12槍沢ロッジ

B6:35槍沢ロッジ〜7:07一ノ俣〜7:58横尾8:20〜9:00新村橋9:05〜9:18徳沢9:40〜10:15オコジョ10:23〜10:25明神10:38〜11:16河童橋〜11:30バスターミナル


いつでも行けるし、一人でも問題ないだけに、そのアプローチの長さから何となく先延ばしにしていた槍ヶ岳。9月に是非行きたいとLilyさんから話を聞いて、急遽一緒に出かけることになる。
表銀座から行くと3泊4日になるし、新穂高・双六から回るのも魅力的だが、主に日程の都合から、結局オーソドックスに槍沢からの往復となる。

上高地から明神、徳沢を経て横尾までの11kmが、ちょうど距離の上で中間点。更に進んで「槍沢ロッジ」まで行くと今度は時間の上で中間点となって、上高地から約4時間半(休憩含まず)。
通常はここが初日のお宿。で、翌日に槍ヶ岳にアタック後、稜線上の「槍ヶ岳山荘」に泊まり、最終日に上高地まで一気に下ることになる。

我々は夜行バス。上高地到着は6:00の予定。大変なことを承知の上で、初日に「殺生ヒュッテ」ではなく、非常に評判のよい「ヒュッテ大槍」(2884m)を目指すことにする。
夜行明けで、いつもより重いザックを背負い、1400m近い標高差を登るのはキツイ。行動時間は10時間以上か。
となると順調でも到着は16時、これ以上遅く着くのはいろいろな意味で避けたい。

困るのは、地図によってコースタイムがかなり異なること。そこで「ヒュッテ大槍」に問い合わせると、「普段コースタイム通りに歩ける方なら、3時、4時には着くでしょう。」とのこと。う〜ん、果たして我々は・・・。

一抹の不安を胸に、お馴染みの「さわやか信州号」で、少し早く5:40に到着。路面が濡れており、空もどんより。予報も芳しくない。バスターミナルの静かなベンチで朝食を取り、6時過ぎに歩き出す。
横尾までに少し時間を稼ぎたいので、かなりのペースで歩き出す。若いLilyさんはハイペース。40分〜45分で明神、徳沢、と歩いていく。

このあたりは全くのハイキングコースで、道幅も広く、梓川に沿って明神岳や前穂などを眺めながら進んでいく。
ノコンギク、キツリフネ、センジュガンピ、トリカブト、サラシナショウマ、そしてミヤマモジズリも。意外と賑やかだ。

センジュガンピノコンギクコウシンヤマハッカ
<梓川に沿って>                 <白い花が印象的なセンジュガンピ(千手岩菲)>   <可憐なノコンギク(野紺菊)>   <カメバヒキオコシの変種、コウシンヤマハッカ(甲信山薄荷)>

徳沢では九州からの団体さんが、8時過ぎに蝶ヶ岳を目指して出発していく。朝もゆっくり、泊まりも蝶ヶ岳とか。これもまた贅沢な楽しみ方だ。
横尾まで来て、また9時前。上高地から11km、槍ヶ岳まで11kmの、まだまだ中間点である。


<昔泊まった、横尾山荘>                   <涸沢への入口、横尾大橋>                <ここから槍が見える 槍見河原>

横尾から先は初めてだ。次のポイント、一ノ俣に向かって歩いていくと、数人の男性グループとすれ違う。挨拶すると、「槍が見えますよ。」・・・ここが「槍見河原」とは言われるまで気づかなかった。
なるほど、対岸の重なり合った山々の襟元から、ちょこんと槍が顔を出している。地図を見ると、この絶妙の配置は奇跡的とさえ感じられる。見過ごさずに済んでよかった。

一ノ俣で橋を渡り、二ノ俣を過ぎると槍沢ロッジ。10:49とは立派なタイム?!
ここで昼食。空は明るめながら、ポツポツと落ちてくるのがちょっと気がかりだが、トイレも借りて、水も汲んで、さあここからが本番!と気を引き締めてまた出発する。
休憩も20分のつもりが、やはり何となくノンビリしてしまって、30分。まあ、何とかなるだろう。

階段状の道を登り出すと、すぐに巨岩が樹木をなぎ倒し、見ればそれは遥か向こうの山腹から崩れてきたものだと分かる。河原まで累々と巨岩を押し流しているこの異様な光景には息を呑む。

さて次のポイント、大曲(おおまがり:水俣乗越分岐)は、最新の昭文社ではロッジから1:40とあるが、1時間で到着。ただし、Lilyさんの旧版では1:00である。印刷ミスか、中高年のペースに合わせたものか。この40分の誤差は大きい。

<大曲>  <ゴマナのお花畑>

地図を広げると、よくもまあこんなに歩いてきたものだと思うが、この先は勾配がきつくなり、距離の割に進めない地帯に入る。救いはお花。夏の花も秋の花も沢山咲いている。
ガスが濃くなり、展望はない。本当ならこの辺りからは目指す槍が大きく見えるのだろうが・・・。
また霧のような雨が降り始め、風は無いのでしばらく傘を片手に急坂を登り続ける。シャジンやハクサンフウロ、ゴマナにタカネ・アキノキリンソウ。


<ミヤマシャジン(深山沙参)>            <エゾシオガマ(蝦夷塩釜)>              <ハクサンフウロ(白山風露)>


急坂なので、時々立ち休みしながら歩き続ける。

本降りになってきたので、天狗原分岐で合羽を着ることにする。もう1ピッチでヒュッテ大槍への分岐だろうか・・・。
合羽を着ると雨が小止みになる。脱ぐとまた降り出す、という繰り返し。標高も上がったので暑くは無いが、消耗戦だ。

時計を見るともうすぐ3時。余りすれ違う人も無くなったが、元気なお兄ちゃんが上から跳ぶように降りてくる。
挨拶し、「え、上高地から?マジっすか!? 8時間でここまでなんて凄いっスねえ!」
・・・かなり疲れていたのが、その言葉で我々は大いに気をよくする。お世辞でも、褒められて悪い気のする人はいない。(実は『8時間』ではなく9時間かかっているのだが、まあ歩行時間なら8時間ということで・・・。)

そのせいか、雨も上がって、ガスの切れ間にようやく分岐の標識が見えてきた。やった〜。4時前に小屋に着けそうだ!

ここで最後の休憩。Lilyさんはここが大いに気に入った様子。ここからヒュッテは見えないが、多分歩き始めれば姿を現すだろう。分岐からは40分となっている。
さて、最後の頑張りで、分岐から大きく右に入って、岩の上を歩いてから、お花畑の中のジグザグを上がっていく。すぐに左手に赤い屋根の小屋が見えるが、殺生ヒュッテのようだ。(画像○印。)急斜面を見上げるが、小屋の姿は無い。


   <休憩中のLilyさん>                   <ヒュッテ大槍への分岐>                     <彼方に殺生ヒュッテを臨む>

なるほど、最後まで急登ながら、登るにつれて展望も開け、前穂の北尾根のギザギザがガスの向こうに見えてきた。
斜面ではウサギギクやトリカブト、ミヤマリンドウやクロトウヒレンなど、高山植物のお花畑が素晴らしい。

クロトウヒレン
<ウサギギク(兎菊)>                 <クロトウヒレン(黒唐飛廉)>              <急坂を上りながらの展望>

少しだけ近づいた稜線を見上げると、上から男性2人がこちらに向かって大きく手を振っている。ああ、よかった、と手を振り返し、とうとう斜面を登りきると、かわいい小屋が目に入る。16時、ヒュッテ到着。行動時間は10時間。

立地上、もともと混雑する小屋ではないが、今日は15人とか。我々の部屋は二段ベッドが左右に向かい合っているが、二人で貸切。着替えもできるし寛げる。
早速、乾燥室で濡れた傘や合羽を乾かし、荷物整理タイム。
一休みするうちに、お待ちかねの夕飯。ワインが付いて、ご飯以外は洋風だ。ワインを片手に、Lilyさんはご満悦。
小屋の人の感じもとても良く、折りしもお月見フェアでお汁粉が出るのだが、流石に疲れ、明日に備えて早く寝る。有難いことに、アミノバイタルを飲んだら、今回も全く頭痛がしない。これでとうとう私も高山病から解放されたようだ。

ヒュッテ大槍HP

2日目に続く*


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