プロコフィエフの部屋 08/10/17更新
*私の好きなプロコフィエフについて、大胆に独断で語ります。
(ここから先は演奏する立場から語るプロコフィエフの世界です。いわば"オタク"の世界です。
一人で勝手に盛り上がっていますが。あ、議論する気はありません。悪しからず〜。)
<私とプロコフィエフ>
私がプロコフィエフのピアノ曲に出会ったのは20歳を過ぎてからでした。初めての曲が、何とピアノソナタ第7番でした。(世間的にはこれが彼の代表作で、しかも20世紀を代表するピアノ曲の第1位と言っても過言ではありません。ちなみに第3楽章が有名です。)
音大(実は大学院も受けちゃったんですね、私。)受験のために先生が選んで下さったのです。「2番でもいいけど、やっぱり7番ね。」ということで・・・。
冒頭から躓きました。譜面をいくら読んでも、音が浮かんできません。仕方なくレコードを買ってきました。アシュケナージのでした。・・・聞いて、ガ〜ン!でした。
特に第1楽章がよく分かりませんでした。弾いてみてもやっぱり・・・。第3楽章が凄いというのはすぐに分かりましたけど。しかし、シンプルな楽譜なのに何と難しいこと!というのはすぐに分かりました。
しかし、頑張って練習を続けていくうちに、だんだん分かってきました。
プロコフィエフのソナタは形式は古典派を踏襲し、きっちりと書かれていますから、その分析が必要です。鉛筆片手に「これが第1主題、これが第1副主題、ここから展開部・・・」と書き込み、楽曲解説の本も2,3冊読んでいくと、これがまたその緻密に唸らされます。
しかし、ここまで来れば、こっちのものです。目の前の霞が一気に晴れて、その頃には、弾く方もどっぷり「プロコ色」に染まっています。もう"やみつき"状態です。嵌りました。弾いていて楽しくさえなってきました。
さて、ピアノソナタでは、私は6番がプロコフィエフの頂点だと思っています。次いで7番→8番→3番→(5?う〜ん、あとは横並び?!)でしょうか。
6番の魅力は、
第1楽章の"これぞプロコ、これぞ近現代曲の頂点!"という緊密な構造と特徴的なリズム感・不協和音の不思議な心地よさ、
第2楽章の明るく楽しい快活さ
第3楽章のロシア的でかつ、甘く陶酔するような旋律、
第4楽章は分かりやすい、疾走するようなリズム感、
と彼の魅力を余すことなく盛り込んだ小宇宙と言えるでしょう。
彼のソナタは全部で9曲あり、中でも6,7,8番はまとめて「戦争ソナタ(3部作)」と呼ばれています。(詳しくはこのHPの"私のリサイタル"の楽曲紹介をご参照ください。)
一般的には第7番が一番有名です。特に第3楽章は7拍子という珍しい拍子に乗って、終結部に向かって疾走するジェットコースターみたいです。簡単に言えば非常に男性的な曲で、技術・体力が必要です。
(これをリサイタルで弾いた時は、みなさんに「あなたの腕が千切れるかと思ったわ!それにしても細い腕でよくあんな音が出るわね!」と言われました。)
8番は地味ですが、これまた水面下に爆弾を抱えるような曲です。
6,7番に比べれば弾くのは多少容易ともいえますが、長いですし、弾く方が分かっていないと、聞く方もまるで退屈になってしまいます。(でも、これまた大好きな曲です。この良さが分かりませんか〜!?と言いたくなります。)
プロコフィエフを聞いたことがないけど、そんなにいいの?という方にはソナタ第3番をお奨めします。これは単一楽章の曲ですから8分程度です。
この短い曲のなかに、上記の6番のエッセンスが全部盛り込まれています。まさに"お試しサイズ"という感じですね。
では他のソナタもミニミニ版でご紹介します。難易度はプロコフィエフのソナタの中での比較です。(その他の作曲家と比べると、相当難しいレベルに入ります。)
1番・・・大学生時代に作った、単一楽章の曲。ラフマニノフみたいで華やかです。
弾くのは「一番易しい」でしょう。8分程度。
ベートーベンのソナタを弾けるようになったらお試し下さい。
2番・・・4楽章形式。プロコらしさがかなり現れてきます。
音大生になって、プロコやってみようかな?という人向き。
どちらかと言えば「標準的」です。20分以上かかります。
第4楽章は素敵な曲ですよ!
3番・・・単一楽章の曲ですが、1番と違ってもうプロコらしさ90%?です。
レベルは「標準的」でしょう。音大の卒試で弾いた人もいます。
華やかで、演奏会向き。8分程度。
4番・・・(自分で弾いていないのですが)1,2楽章はあんまりピンと来ません。
3楽章は分かりやすいかな。18分位。
5番・・・(これも弾いていませんが)1楽章はとても素敵で、大好きです。
2楽章がなんかイマイチで。3楽章は・・・普通?。15分位。
6番・・・頂点でしょう。彼の中でも、20世紀のピアノ音楽の中でも。
30分近くかかります。超絶技巧を要します?!
気力・体力の充実した年齢でのトライをお奨めします。
7番・・・一番有名な近現代曲の1つです。全3楽章。20分ほど。
体力・技術の要求水準非常に高し!です。
7拍子を体で理解するには、バルトークでリズム感を養っておくといいでしょう。
8番・・・内省的で、祈りに満ちた曲です。私はとても好きです。30分以上。
全3楽章。レベルは「やや難しい」でしょうか。
9番・・・(これもまだトライしていませんが、次に弾きたい曲です。)25分ほど。完成した最後のソナタです。
全4楽章。静かに始まります。なかなか味わい深い曲です。
<CDタイトル一覧> (表の下に詳しいコメント有り。)
★★★★ ブラボ〜!!
★★★ お奨め。
★★☆
買う価値有り! <<タイトルをクリックすると私の感想に飛びます。>>
★★ Average
☆ がっかり・・・。
タイトル | 奏者 | 収録曲 | 評価 |
Prokofiev Piano Sonatas | Yefim Bronfman | Sonata No.1,4,6 | ★★★☆ |
Prokofiev Piano Sonatas | Yefim Bronfman | Sonata No.2,3,5,9 | ★★★☆ |
Sviatoslav Richter 1 (Great Pianists) |
Sviatoslav Richter | Sonata No.6,7,8 他 | ★★★☆ |
Prokofiev: Piano Sotanas nos.2・7・8![]() |
Mkhail Pletonev | Sonata No.2,7,8 | ★★★☆ |
Prokofiev: Piano Sotanas 3,7&8![]() |
Andei Gavrilov | Sonata No.3,7,8 | ★★★☆ |
Prokofiev; Barber & More | Horowiz | Sonata No.7 Toccata Op.11 他 |
★★★ |
Stravinsky:Petorouchka/ Prokofiev:SonataNo.7etc, |
Pollini | Sonata No.7 他 | ★★☆ |
Prokofiev Piano Music VOL.5 | Boris Berman | Sonata No.1, Sonatinas Op.54 Four Pieces Op.4 Three Pieces Op.96 Gavotte (No.4) from Hamlet Op.77bis Organ Prelude & Fugue (Buxtehude, arr. Prokofiev) |
★★☆ |
Prokofiev Piano Sonatas VOL.2 | Murray McLachlan | Sonata No.2,7,8 | ★★☆ |
Prokofiev Piano Sonatas VOL.1 | Murray McLachlan | Sonata No.1,4,9 | ★★☆ |
Prokofiev Piano Sonatas VOL.3 | Murray McLachlan | Sonata No.3,5,6, Sonatine Op.54-1, Four Pieces, Op.4 |
★★☆ |
Bach,
Bartok, Chopin,Ginastera,Prokofiev,Scarlatti (Live from the Concertgebow 1978&1979) |
Argerich | Sonata No.7 他 | ★★☆ |
Gyorgy Sander Plays Prokofiev | Gyorgy Sander | Sonata No.1〜9, Sonatine Op.54-1,2 Four Pieces Op.3, 4 |
☆ |
タイトル | 演奏者 | 収録曲 | 評価 |
Ashkenazy Plays "War Sonatas" | Vladimir Ashkenazy | Sonata No.7,8 他 | ★★★ |
Ravel: Gaspard de la Nuit Prokofiev: Piano Sonata No.6 |
Ivo Pogorelich | Sonata No.6 他 | ★★★☆ |
Prokofiev Piano Sonatas No.1/2/3 | Nikolai Petrov | Sonata No.1,2,3 | ★★ |
Prokofiev Piano Sonatas No.4/5 | Nikolai Petrov | Sonata No.4,5 | ★★ |
Prokofiev Piano Sonatas No.6/9 | Nikolai Petrov | Sonata No.6,9 | ★★ |
<私の感想> *あくまで私の好みによる独断です。悪しからず。
<< CD編 >>
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20世紀の偉大なるピアニストたち〜スヴャトスラフ・リヒテル
Mikhail Pletnev(ミハイル・プレトニョフ)、1997年録音
(Detsche Grammophon, Amazon.comにて$16.98)
この人の名前も有名ながら、彼のプロコ演奏を聞くのは初めてです。聞いていて、おお、と思いました。
客観的?感想を述べると、彼の演奏の特徴は「ノンレガートの多用(すなわち最小限のペダル)、遅めのテンポと長めの間、丁寧な演奏」でしょう。
主観的感想としては、「端正な演奏、ひけらかさないけれど、非常に確かなテクニック、作品への深い愛情」でしょうか。非常に感銘を受けました。
他の奏者に比べると、地味な印象を持たれるかもしれませんが、もし自分で演奏しようと思う人には必聴版としてお勧めします。
きらびやかな演奏ではありませんし、またノンレガートの多用はむしろ難易度を更に高めており、彼のように弾こうとするのはよほどの腕前でない限り難しいでしょう。その意味では、ブロンフマンの演奏同様、真似したくても出来ない高みにあります。
弾く側としては、非常に勉強になる演奏です。聞いてよかった!と思いました。このCDを聞いて、ブロンフマンの★もちょっと減らしました。(笑)
まず、3番はかなりアグレッシブな演奏。展開部はやや落ち着いたテンポながら、その他は力任せにグイグイと突っ走ります。ちょっと待った!という感じですね。私のストライクゾーンからは少し外れるかな・・・。
この調子で7,8番を弾くのだろうかと非常に不安に思ったのですが、さすがに7番・8番は全く違うアプローチです。
7番はオーセンティックな演奏ですね。やはりこの曲を録音するからには、という意気込みが感じられます。非常に素晴らしい演奏です。第3楽章も非常に丁寧に弾いています。弾く人にも聞くだけの人にも自信をもってお勧めできる演奏です。
8番も素晴らしい演奏ですね。この曲の魅力をよく伝えています。ライナーノートも自ら記していますが、その中で、「私(ガブリーロフ)は、きっとプロコフィエフ自身が8番こそ自分の最高の作品だと思っているに違いない。」と書いています。
その位、ガブリーロフ自身の8番に対する強い思い入れを十分に感じさせる演奏内容となっています。私自身が8番はとても好きなので、嬉しいですね。
第1楽章はこれまたオーセンティック。文句なしの演奏です。第2楽章はややノンレガートで始まりますが、終始穏やかな表情を見せる、好感の持てる演奏ですね。
さて、第3楽章です。ここで彼は華麗なテクニックを披露しています。テンポはやや速め、中間部はややアグレッシブ。
急速部は全般的にseccoでしょうか。硬質且つ華麗な音で終結部までもの凄い速さで有無を言わせず弾き切ります。
7番、8番共にロシア(?)の王道を行く演奏と申し上げておきましょう。この3曲の組み合わせといい、戦争ソナタを聴いてみたい方には必聴のCDです。
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ストラヴィンスキー:「ペトルーシュカ」からの3楽章
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アルゲリッチ・コンセルトヘボウ・ライブ
<<LP編>>
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CD化されていました。ラヴェル:夜のガスパール