サンスター(フィリピン)
2008年10月16日
Samprazzz? いいや! サンプラスの本はエースを決める
文:John Pages


妻のジャスミンほど熱心な本の虫ではないが、私は本が好きだ(そして今日の子供たちは、しょっちゅうテレビを見たりビデオゲームをする一方で、読書をする事はずっと少ないと強く思う――だがそれは別の話題だ)。

私のお気に入りの本? 疑問の余地なく:自叙伝だ。我が家の2階にある書斎には、その蔵書が並んでいる。バラク・オバマの2冊のベストセラー、ジョン・マッケンローの「You Cannot Be Serious」、リチャード・ブランソンの「Losing My Virginity」、さらにペレ、リー・アイアコッカ、ジャック・ウェルチ、ボブ・クージー、アーノルド・シュワルツェネッガー、マルチナ・ナヴラチロワ、ロッド・レーバー……等々。

先週の日曜日、私は新たな1冊を読み終えた。テニスコートの親友のおかげで――ファビー・ボロメオが合衆国でその本を購入し、私に貸してくれたのだ――最も崇拝する運動選手である1人の男の物語をむさぼり読んだ。

「ピート・サンプラス:A Champion's Mind / Lessons From A Life In Tennis」は素晴らしい本だ――テニス界における史上最高の選手に期待するとおりに(ロジャー・フェデラーのファンへ:あなた方の男はまだピートの14というグランドスラムのシングルス・タイトル記録を超えてはいない。だからしばらくは、その称号は PS のところに留まっている。それはきっと RF によって破られるだろうが)。

6月に発売されたばかりの306ページにわたる本書は、1990年代および2000年代初期のテニスに熱狂した者ならば――つまり、ピストル・ピートが7つのウィンブルドン王座、5つのUSオープン・トロフィー、2つのオーストラリアン・オープンのタイトルを獲得するのを見た者なら――ファビーや私と同じく、この本に惚れ込むだろう。

テニス界最高の記者の1人、ピーター・ボドと共同で執筆された本書は、次の献辞で始まる。「妻のブリジット、息子のクリスチャンとライアンへ:君たちは幾多のグランドスラム・タイトル、あるいはテニスの栄光にもできない方法で私の人生を満たしてくれた」

ワーオ! かつて Samprazzz というレッテルを貼られた男――規律正しい、退屈と称された事もあるテニスへのアプローチをする男――が述べたのは、感動的な声明だ。そして、文章を追い、ページをめくっていくうちに、まったくもって理解するのだ。コート上では地味で精彩を欠いたサンプラスは、実は非常に感情的な人間なのだと。

テニスを追ってきた者は、2003年を覚えているだろうか? USオープンを? 同僚たちに敬意を表され、サンプラスがニューヨークに雨が降るほど泣いた時を? あるいは、「名誉の殿堂」入りを果たした祝典で、彼が同様にすすり泣いた時を? サンプラスはコート上でめったに言葉を口にしなかった(あるいは不平を言わなかった)が、すべての感情を内に秘め、この自叙伝でそれを解放させたのだ。扇情的な話? 論争? 明かされた秘密? そんなものはない。

それでもなお、19歳で果たしたUSオープン初優勝、ウィンブルドン優勝、嘔吐しながらもアレックス・コレチャに勝利した死闘、(優勝する事のなかった)フレンチ・オープンでの苦闘について読んでいくと――まるで過去が再現されるかのようだ。実際に私の場合、本を読み終えた後にした事は、1996年の ATP 世界選手権決勝(私が見た中で最高の試合!)のサンプラス対ボリス・ベッカー戦のビデオを見る事だった。

本書について私がいちばん気に入ったのは、対戦相手に関する彼の分析だった。彼は誕生から引退までの伝記を述べた後に、最後の章で、対戦したすべてのトップ選手について言及している:チャン、エドバーグ、イワニセビッチ、クライチェク、ラフター等々。しかし、その中でも特筆される名前はアンドレ・アガシである。ここに236ページからの抜粋を記す。

「キャリアの大半、我々はこれ以上ないほど異なっていた――性格も、ゲームも、身につけたウェアさえも。ライフスタイルは根本的に異なっていた。アンドレは常に、個性と自主性を主張すると決意しているようだった。一方で僕は、個性を覆い隠そうとし、そして個人的な自由をいくぶんか失う事も受け入れていた。アンドレはジョー・フレイザーで、僕はモハメド・アリだった。性格的にはその反対とも言えるが、アンドレはショーマンで、僕は職人だったからだ。どこに住まおうとも、我々は隣人だった。僕は片側に住む行儀の良い物静かな子供で、アンドレはもう片側に住む反抗的なティーンエージャーだった」

まさに言い得て妙だ。本書で、サンプラスはコート上でしたように、エースを決めるのだ。


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