ロサンジェルス・タイムズ
2008年3月29日
このサンプラスの画期的業績は、驚きかも知れない
文:Bill Dwyre


UCLA(カリフォルニア大学ロサンジェルス校)テニス部監督のステラ・サンプラスは今日、
200回目の勝利を得る筈だ。しかし彼女はきっと、それに気づいてもいないだろう。


もう1人のサンプラスのテニス界における画期的業績が、おそらく成し遂げられるのだ。

いいえ、これは強烈なファーストサーブ、ジャンピング・オーバーヘッド、そして記録的な14のグランドスラム大会タイトルを持つ男とは何の関係もない。

それはピート・サンプラスだ。この画期的業績に対しては、彼は単なる1人のファンで、成功を祈り、応援するだけだ。

本日正午 UCLA のロサンジェルス・テニスセンターにて、 UCLA 女子テニス部(ブルーインズ)とオレゴン大学が対戦する。ブルーインズが勝てば、200回目の勝利を監督のステラ・サンプラスへもたらす事になるのだ。

興味深い事だが、 最後の試合が終わって、国内8位のチーム・ブルーインズが下位のダックス・チームに予想どおり勝ったとしても、今日の朝刊を手にしていない限り、ステラ・サンプラスは何を達成したかも分からないだろう。

「彼女はこういう事をあまり気に掛けないんだ」と、夫のスティーブ・ウェブスターは言う。「たとえ私がそれを知らせても、彼女は『あら、それはステキね』とか何とか言うだけだろう」

弟のピートは言う。「彼女は何事についても、地に足の着いた人間だ。試合後に僕の家でパーティーを開く計画だが、誰も彼女にそれを知らせてないと思うよ。彼女はきっと、僕たちは大騒ぎしすぎだと思うだろう」

ブルーインズのナンバー2選手、トレイシー・リンは言う。「選手はみんな200勝目の事を知っているけれど、彼女には何も言ってないと思う。彼女がそれを気に掛けていたとは思わないわ」

ダニー・ハリントンは UCLA 女子テニス部のために、告知の仕事をしている。彼も、200勝のニュースは監督にとって驚きかも知れないと考えている。

彼は言う。「私はゲームのメモをつけているが、彼女の記録は199勝102敗だ。けれども彼女はとても忙しくて、遠征で不在だったから、それを読むとは思わないよ」

サンプラスは12年間ブルーインズを指導してきた。200勝を達成した監督は何人かいる。しかしこれほど早く200勝に達したのは注目に値する。

さらに、その先には多くの業績が待っているようだ。

彼女は二度ブルーインズを NCAA(全米大学体育協会)大会の決勝ラウンドまで導いた。2004年にはスタンフォード大学に敗れ、2007年には――準決勝でスタンフォードを下した後に、ジョージア工科大学に敗れた。今年の見込みはさらに良さそうだ。

UCLA はかつてブルーインズが破ったスタンフォードより3ランク下位で、カリフォルニア大学の1位下である。

伝統的にスタンフォードが支配的だったため、1987年にコンフェレンス競技会が開始されて以来、UCLA はパシフィック-10女子テニスのタイトルも、いわんや NCAA タイトルも獲得した事がない。しかしサンプラスはブルーインズを徐々にタイトルへと近づけてきている。

彼女はソフィーとサバンナという双子の娘を出産し、専業主婦になるため引退するつもりでいただけに、なおさら驚くべき事だ。それは2年半前の事だった。そして母親業と監督業を両立できると分かったので、サンプラスは留任し、プログラムは順調に進んだ。

彼女はパロスベルデスのテニスコートで成長し、非常に優秀なプレーヤーだった。

「彼女は、僕が14歳の時まで僕を負かしたと言うんだ」と、3つ年下で現在36歳のピートは語る。「僕としては、それは僕が12歳の時までだったと言っているよ」

彼女は UCLA に進学して、1988〜91年の間、当校では数少ない4年通してオール・アメリカンズに選出された1人だった。そして NCAA ダブルスタイトルを1回獲得し、もう一度は決勝戦で敗れた。

短期間プロで活動し、シングルスでは248位、ダブルスでは142位までいった。

その後アシスタント・コーチとして UCLA に戻り、12シーズン前に監督を引き継いだ。彼女の落ち着いた流儀は、チームの向上によく貢献してきた。

「彼女は怒鳴ったり叫んだりする人間じゃない」とピートは言う。「彼女は模範を示して導くタイプだ。押しつけがましくない。選手はそれに敬意を払うのだと思う」

トレイシー・リンが付け加える。「彼女は私のテニスを手助けしてくれただけでなく、人間として私が成長するのを助けてくれたわ。テニスは個人スポーツだけれど、大学ではチームの一員よ。彼女は私に、常にすべてが自分中心という訳ではないと教えてくれた」

今日の試合が終わり、UCLA の記録が13勝4敗から14勝4敗となれば、テニスはサンプラス家にもう1つの特別な瞬間をもたらしているだろう。夫のスティーブと弟のピートはパーティーの立案者で、妹のマリオンと兄のガス、父親のサムと母親のジョージアもまた、パーティーの一員となる筈だ。

「9人の孫がいて、皆がロスの近くで暮らしている。つまり、ほぼ毎月が誕生パーティーって事だよ」とピートは言う。「今や僕たちの生活は、子供を中心に回っているんだ」

同じく、今でもテニスを中心に。

ピート・サイズのトロフィーケースがサンプラス家に現れる事は二度とない。しかし家族の誰も、ピートも含めて、テニスの良き日々が過ぎゆく中で、ステラが2008年3月29日に得たものが素晴らしいトロフィーである事を否定しないだろう。


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